ハートフルコメディからバイオレンスアクションまで一気見可能な神アニメ

 毎日を忙しく過ごしていると、傑作や話題のアニメを見逃すことも少なくありません。そして、観ようと思っていても、3か月ごとに現れる多くのアニメ作品のなかに埋もれてしまい、観るタイミングを失ってしまうのです。今回は、そんな時間のないアニメ好きの方のために、まとまった休みなどに一気に観られる1クールできれいに終わっている作品を振り返ります。

●アニメを作るアニメ『映像研には手を出すな!』

『映像研には手を出すな!』は、2020年にNHKで放映された同名マンガが原作のアニメで、全12話で終わっています。多くの作品で賞を受賞している湯浅政明監督が監督を務め、また、アニメ放送終了後は、実写ドラマや映画でも展開されるなど、人気作となりました。

 同作の主人公は、人並み外れた空想力を持つ浅草みどり、金儲けが好きな長身の金森さやか、カリスマ読者モデルでアニメーター志望の水崎ツバメの女子高生3人です。「映像研」を立ち上げた彼女らが、アニメで「最強の世界」を作るため、切磋琢磨しながらアニメ制作に取り組んでいきます。

 いまや、日本を代表する文化となったアニメ制作の歴史を辿るように、手描きからデジタルへと制作環境が進化し、3人が制作するアニメの規模もどんどん大きくなっていきます。また、プロデューサー志望の金森がメインキャラにいるため、高校生でありながら、クオリティと締め切り、やりがいと報酬など、プロとして創作活動をするうえで、避けては通れない現実的な問題と向き合っているのも見どころです。

 さらに、アニメ制作がテーマの本作はアニメーションのクオリティがとても高く、随所にこのアニメならではの表現も見つかるスケールの大きな作品です。そんなスケールの大きな作品でありながらも、作中でのアニメの完成ごとに話に区切りがついており、「今日はここまで観よう」と決めて鑑賞しやすい構成でした。そのほかジブリ作品へのオマージュも豊富で、時間のないアニメ好きにぴったりハマる作品です。

●アニメ・オブ・ザ・イヤー『サイバーパンク エッジランナーズ』

『サイバーパンク エッジランナーズ』は、10話構成のオリジナルアニメーションシリーズで、テクノロジーと人体改造が一般化した巨大都市を舞台にアウトローの傭兵「サイバーパンク」としての道を歩んだ少年の物語が描かれます。

 配信はNetflix、制作は老舗のアニメ制作会社「TRIGGER」、監督は『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』などで有名な今石洋之さんが務めており、アメリカのアニメ配信事業大手クランチロールが主催する「クランチロール・アニメアワード2023」で、アニメ・オブ・ザ・イヤーを獲得しました。

『鬼滅の刃 遊郭編』『進撃の巨人 The Final Season Part 2』『リコリス・リコイル』など、2022年に放映された有名作を抑えて受賞している点を考えれば、同作が視聴者にどれほどの衝撃を与えたのか分かるでしょう。

 これほどの高評価を受けていながら、配信がNetflix限定のため、日本国内での知名度はそれほど高くありません。また、薬物や性描写など過激な表現が多く、レイティングも15才未満非推奨となっており、万人向けとは言いがたい作風です。

 しかし、しっかりとしたSFの世界観のなかで、ボーイミーツガールのラブストーリーも展開されるため、ハードな内容でありながらも多くの視聴者の共感を呼び、前述の高評価につながりました。また、SF作品としての評価もとても高く、『AKIRA』や『攻殻機動隊』などが好きな方なら、間違いなく楽しめる傑作です。

●美しすぎる終わり方『かくしごと』

 久米田康治先生の同名マンガをアニメ化した『かくしごと』(全12話)は、娘に漫画家であることを隠そうとする父と、その娘の日常を描いたハートフルコメディで、タイトルは「隠し事」と「描く仕事」のダブルミーニングになっています。2021年には、『劇場編集版 かくしごと -ひめごとはなんですか-』も公開されました。

 物語は18歳になった娘の姫が父の隠し事を知る場面から始まり、本編である姫が10歳の時の過去編が展開されます。原作がマンガで主人公も漫画家なので、作者自身の体験談を思わせるエピソードも多く、とても解像度の高い日常シーンが描かれました。

 ほのぼのとした日常を描きながら、少しずつ18歳の姫が父の「隠し事」を知ろうとするに至った理由も描かれていきます。そのなかには思わず涙がこぼれてしまう感動的なエピソードもあり、最終話では第1話から張られていた伏線を畳み掛けるようにきれいに回収して終わりました。1クール作品で見やすく、鑑賞後の満足感がとても高い作品です。