艦を率いる立場なのに性格が……

「ガンダム」シリーズには優秀さが影を潜めてしまったものの、その個性的な魅力で人気を集めているキャラクターがいます。例えば『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する「アーサー・トライン」は、その天然っぷりが有名すぎてイマイチ優秀さが見えないキャラです。

 アーサーはザフト軍で、「ガンダム」を運用するために建造された新造艦「ミネルバ」の副長を務めています。この「副長」という職は、本来ならば艦長を補佐する立場のはずですが、むしろ彼は能天気すぎて逆に艦長の「タリア・グラディス」からいつも雷を落とされています。

 彼女がどれだけアーサーの能天気っぷりに腹を立てているのか、特にわかりやすいのが、アニメ版と似た経緯を辿っている小説版でのシーンです。歌姫「ラクス・クライン(に扮した偽物)」が「プラント」の「ギルバート・デュランダル」議長をともなって慰問に訪れました。

 歌姫のコンサートを目にして幸運な出来事を喜んだアーサーに対し、タリアは議長の意図に思い悩みます。そのためお気楽なアーサーを見たタリアには「いま彼(アーサー)を絞め殺したら、代わりの副長を見つけるのは難しいだろうか」と悪い考えがよぎっていました。

 そのような情けなさもあるアーサーですが、彼の人格や能天気に場を和らげる才能は、ファンから高く評価されています。最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』でも平和維持組織「コンパス」の新造艦「ミレニアム」で副長を務めており、物語序盤の重苦しい展開が続くなか、彼の存在が癒しになったという声も聞かれました。

『機動戦士ガンダムAGE』の第3部にあたる「キオ編」から、「ガンダム」の母艦「ディーヴァ」の艦長に就任したナトーラ・エイナス艦長も、登場時は役者不足なところが目立ったキャラクターです。

 艦の命運を握っている艦長でありながら、小心者で臆病な性格だったために、周囲への指示も思い通りにできない始末でした。そのような実力や性格と見合わない立場に、軍部ではナトーラに対して「親の七光りだけで出世している」と陰でささやく人もいる有様です。

 そのように艦長らしくなかったナトーラも、周囲の支えや自身の勤勉さもあって少しずつ才能を開花させていきます。その甲斐があってか、アニメと展開の似ている小説版では、のちに「エイナス家における最強で最優の艦長」「戦女神」「伝説の提督」と呼ばれるような、華々しい戦果を挙げたことが示唆されていました。

 ナトーラは艦長として少し頼りない印象もあるところが逆に魅力に感じるのか、ファンの間では仕草がかわいいと好かれている様子です。

なるほど愛されキャラ。バンダイ「機動戦士ガンダム00 パトリック・コーラサワーアイテム アクリルスタンド」 (C)創通・サンライズ

かませ犬とか言うな! ともあれ悪運は最強クラス!

 本来ならば優秀な実力を持っていたはずが、かませ犬になってしまったのが『機動戦士ガンダム00』の「パトリック・コーラサワー」です。コーラサワーは新型モビルスーツのパイロットとしてお披露目会で実力を見せつけていましたが、突如として乱入してきた主人公の「刹那・F・セイエイ」が駆る「ガンダムエクシア」にぼろ負けしてしまいます。

 その後の「ガンダム」との戦いのなかでも、幾度となく撃墜の憂き目にあいますが、必ず生還する悪運の強さを持ち、やがて周囲からは「不死身のコーラサワー」と呼ばれるようになります。実際にTVシリーズの最終決戦や劇場版においては、死んでしまったかと思わせつつも、最後まで生き残って幸せをつかんでいます。

 いずれのキャラクターも、優秀というには少し物足りないような気がしてしまいますが、完璧すぎないところがファンから愛されている理由なのでしょう。