独自の「性別」を生み出したキャラたち

 アニメやマンガには、よく性別不詳の中性的なキャラが出てきます。時に男性か女性かを巡ってファンの間で議論が巻き起こりますが、なかには「性別を超越した存在」として認知されるキャラも少なくありません。

 まずは『バカとテストと召喚獣』の「木下秀吉」でしょう。彼は、ひとつのネットスラングを生み出した偉大な存在でした。

 秀吉はれっきとした男性なのですが、あまりにかわいすぎるため主人公たちから「秀吉」という第3の性別で扱われます。そのため銭湯に行くエピソードでは、男湯でも女湯でもなく、なぜか「秀吉湯」が用意されていたのです。アニメ化されたときも、水着回では秀吉の上半身だけ徹底してガードされていました。

 さらに秀吉は、「このライトノベルがすごい」のキャラクター男性部門・女性部門の両方で2年連続トップ10入りを果たすという快挙も達成します。当時は「『このラノ』にも『秀吉部門』を作るべき」などと言われるほどでした。そして彼を語る際に、「性別は秀吉」という新たな概念が生まれたのです。

 今では「性別は○○」と表現されるキャラも多くなりました。『メイドインアビス』の「ナナチ」も、ファンの間で「性別はナナチ」などといわれていますね。

 ナナチはある理由から、ふわふわな獣人のような姿になったかわいらしい生き物で、作品のマスコット的な存在として扱われることもある人気キャラクターです。一人称は「オイラ」で、話し方は男の子っぽい印象を受けるものの、ふわふわになる前の姿や仕草は女の子のようにも見えます。

 ナナチは作中でも性別が明言されておらず、ファンからは「女の子であって欲しい!」「男の子であって欲しい!」「もうどちらでもかまわない!」などさまざまな願望が寄せられています。

 ちなみに原作者のつくしあきひと先生は、意図的に性別を描写しなかったようです。以前あるWEBメディアがナナチのことを「少女」と書いた際、つくし先生が「X(旧:Twitter)」で「ナナチのこと女の子だと思ってたの?」と反応し、大きな話題を呼びました。

 また変わり種の性別論争なら、『HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)』の「クラピカ」が挙げられるでしょう。中性的な容姿かつ一人称が「私」のため、初期の頃から「クラピカは本当に男なのか……?」と混乱する読者が少なからずいたようです。

 そして「ヨークシン編」での変装があまりにもハマっていたため、一部読者の疑惑はさらに深まります。しかし、変装したクラピカを見て、幻影旅団の団長「クロロ=ルシルフル」が「鎖野郎が女性だとは思わなかった」と漏らし、クラピカは「私がそう言ったか? 見た目に惑わされぬことだな」と返す場面がありました。

 このやり取りもクラピカは普通にクロロの発言を否定しただけのように見えますが、一部からは「これは性別への言及を意図的に避けた返答!」「クロロに対してあやふやな返答をしたのは女性であることを隠したかったからでは……?」といった声が寄せられていました。

 確かにクラピカは、作中ではっきりと性別に言及されておらず、冨樫先生も公式に性別を明言したことはありません。しかしクラピカの幼少期を描いた『HUNTER×HUNTER クラピカ追憶編』では一人称が「オレ」だったこともあり、現在はクラピカを女性だと認識している人は少ないようです。

 とはいえ今でも時折クラピカの性別論争が巻き起こっているため、彼も「性別はクラピカ」が正しいのかもしれませんね。