「今の任天堂」を不安視する理由とは

 任天堂の公式YouTubeチャンネルに配信される「Nintendo Direct」は、同社が直接情報を届ける配信番組で、ここ数年はNintendo Switch(以下、スイッチ)に展開する最新ゲームや関連する展開などを定期的に披露しています。ファンが待ち望むシリーズの最新作や、驚きの新作が発表される機会も多く、ゲーマーをはじめ多くのユーザーが関心を寄せる番組です。

 2月21日に実施されたNintendo Directでも、さまざまな新情報が寄せられ、関連ワードがX(旧:Twitter)のトレンドを埋め尽くす勢いで飛び交いました。ですが、今回の展開を見て、任天堂を不安視する人も一部にいます。なぜ、不安を感じる人がいるのか。そして、実際に先行きは不安なのでしょうか。

●「Nintendo Direct」好評の裏で湧き上がる、任天堂への不安
 先日実施されたNintendo Directでは、「ゲームボーイアドバンス Nintendo Switch Online」での配信が始まった『MOTHER3』や、『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』のリメイク決定など、懐かしい名作たちの復活が報じられます。

 また、『パワフルプロ野球2024-2025』に『真・女神転生V Vengeance』、『ガンダムブレイカー4』に『エンダーマグノリア: ブルームインザミスト』など、人気シリーズの最新作や新展開も続々と発表され、往年のファンから若手のユーザーまで、幅広い層の歓喜へと繋がりました。

 一見すると不安視する材料はないように思いますが、Nintendo Directといえば任天堂タイトルも数多く発表される場です。しかし、通常回と比べるとごくわずかな発表しかなく、その点に不安や不満を抱く人が一定数いました。

 今回のNintendo Directは、あらかじめ「ソフトメーカーラインナップ」を掲げており、他社の発表が大半なのは予告済みでした。そのため、肩透かしという評価はやや乱暴な見方といえます。ですが例年では、この時期に任天堂タイトルの情報が頻繁に出ていたこともあり、期待を高めた人が反動で残念がる様子などがSNSで見て取れます。

●昨年に比べると、動きが乏しめな2024年
 Nintendo Directがソフトメーカーラインナップだったこともあり、任天堂の現状を不安の兆しと捉える見方もあります。

 まず、スイッチがいくら好調とはいえ、単純な性能面で考えればPS5やゲーミングPCと明確な差が生まれていますし、『モンスターハンターワイルズ』や『グランド・セフト・オートVI』のといったビッグタイトルの展開に、スイッチは含まれていません。

「スイッチは任天堂タイトルで支えればいい」と考える人もいますが、任天堂がリリースする主だった今後のタイトルは、『プリンセスピーチ Showtime!』が3月22日に、『フォーエバーブルー ルミナス』が5月2日に発売されるほか、『ルイージマンション2 HD』は今夏、『ペーパーマリオRPG』は年内に登場する予定です。また、『Metroid Prime 4 (仮称)』も控えていますが、こちらは発売時期がまだ決まっていません。

 比較の意味で振り返ってみると、2023年は新作だけでも『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』に『ピクミン4』、『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』、『超おどる メイド イン ワリオ』などが相次いぎましたし、『メトロイドプライム リマスタード』や『スーパーマリオRPG』といった名作の復活もありました。

 昨年の活躍が著しかっただけに、同程度の勢いを今年も見せてくれるのかどうか、その先行きはまだ不透明です。

『スプラトゥーン3』エキスパンション・パスの「サイド・オーダー」が配信され、多くのファンを魅了している

任天堂の現状は、本当に不安材料だけなのか?

●直近だけでも、『スプラトゥーン3』DLCなどの展開に注目集まる
 確かに、そうした点に不安を感じるのも仕方ないかもしれません。しかし、任天堂の動きがないのかといえば、直近だけでもいくつかの展開を見せています。

 特に関心を集めているのが、『スプラトゥーン3』の有料DLC「エキスパンション・パス」に含まれている「サイド・オーダー」の配信です。『スプラトゥーン3』は全世界累計で1171万本もの売れ行きを記録しており、そのDLCとなれば注目されるのも当然でしょう。

 DLC単体の売上総数は明かされていませんが、2月22日に配信された「サイド・オーダー」に先駆けて公開された紹介映像は109万回も再生されており、その人気ぶりは疑うまでもないほどです。また、同時期に公開した映像「スプラトゥーン3 2024春 Fresh Season」も125万回にのぼっており、任天堂の施策は十分な効果を発揮しています。

 加えて、先月は『アナザーコード リコレクション:ふたつの記憶』を、今月は『マリオvs.ドンキーコング』が発売されています。少なくとも、ここ2ヶ月間の動きとしては、「サイド・オーダー」を含めて一定以上の動きを示しています。

●「大きな発表を控えた前の静けさ」という予測も
「大事なのはこの先だ」と考える人にとっては、来月発売の『プリンセスピーチ Showtime!』より先の展開に不安を抱いているのかもしれません。その点については、当たり前の話ですが任天堂の関係者以外は誰も知らず、よくも悪くも憶測や予想どまりの話になります。

 それを踏まえた上で、過去の展開を鑑みて明るい話を見つけるならば、そもそも任天堂は新たなタイトルの発表をあまり前倒しで行わないのが通例です。『ゼルダの伝説』のようなビッグタイトルなどは一部除きますが、長くても年内もしくは翌年発売、早ければ発表と同時に発売日もセットで公開する場合が多々あります。

 そのため現段階の動向が少なく見えても、ある日突然、怒涛の新発表を行ったりするため、いい意味で油断ができない会社です。

 また、当面の動きが乏しい理由として「スイッチの後を継ぐ、次世代機の発表が近いのでは?」と予想する声もあります。新たな作品やシリーズの新作を次世代機向けに開発しているとすれば、今現在発表できないのは当然の話です。その予想が仮に当たっていれば、現時点の予定の少なさは、むしろ期待の証と言えるかもしれません。

 ソフトメーカーラインナップとは別に、任天堂タイトルに注力するNintendo Directが近いうちに行われるのか。または、次世代機の発表が飛び込むのか。真相はまだ不明ですが、今は「朗報の前の静けさ」なのかもしれません。