2024年3月19日に行われた日本銀行の政策決定会合で金利の引き上げがおこなわれました2016年1月から続いていたマイナス金利が解除され、利上げ自体も2007年以来17年ぶりのことです。

このニュースを見て「金利が上がると住宅ローンの返済額が増えるの?」や「今後大幅に住宅ローンの金利は上昇するの?」と住宅ローンに関する心配をしている人は多いのではないでしょうか。

10年前から住宅ローンを利用しているAさんも、金利の上昇を心配しているひとりです。

Aさんは35年の住宅ローンを組みました。変動金利で借り入れをしており、現在の金利は0.5%と非常に低いです。

しかし借入金額が5000万円で返済期間も長いことから、今回の金利引き上げを受けて「すぐに住宅ローンの返済額が増えるのか?」「今後利上げが続くのか?」と心配をしています。

Aさんは共働きで子供が2人います。現在の生活も決して余裕があるわけではなく、今後さらに子供の教育費がかかることを考えると、住宅ローンの返済額が増えてしまうのは死活問題です。

政策金利が上昇するとどうなるのか?

政策金利が上昇すると、今後、住宅ローンの金利がどうなるのでしょうか。元メガバンク行員でファイナンシャル・プランナーの渡辺智さんに聞いてみました。

——政策金利が上昇すると、すぐに住宅ローンの返済額は増えるのですか?

確かに、住宅ローンの返済額が増えるかどうかは気になるところですね。でも安心してください。変動金利は半年に1度金利の改定がなされ、5年に1回返済額が変更される仕組みなので今回の利上げで返済額が急に増えるわけではありません。

しかし金利が上昇すると、返済額は変わらなくても元本の返済が少なくなり、利息の支払が多くなります。最終的には金利が上がる前より総返済額が多くなるわけです。

—今後さらに金利は上がりそうですか?

今後も日銀は政策金利を上げる可能性はあります。しかし、固定金利に比べて変動金利はまだまだ低い状況です。固定金利より変動金利が高くなる可能性は現状かなり低いです。

たとえば三井住友銀行の住宅ローンの場合、固定金利特約型5年の金利が年間1.65%〜1.90%、固定金利特約型10年の金利が年間1.79%〜2.04%なのに対し、変動金利型の借り入れ当初の金利は年間0.475%です。

このようにまだまだ固定金利と変動金利では金利差が大きいため、当面は変動金利を利用するのが良さそうです。

—これから家を買うつもりですがやめておいた方がいいですか

今後、住宅ローンの金利が上昇する可能性が高いため、今の金利で計算してギリギリの返済状況になるのであれば、やめておいた方が良いかもしれません。

しかし、今回金利が上がったといっても、まだまだ住宅ローンの金利は歴史的に見て超低金利です。

急激に金利が上昇する可能性は低いため、住宅が欲しければ購入を控えるべきではないでしょう。

どうしても金利の上昇が気になるのであれば、固定金利を使うのも方法ですが、現状では変動金利と固定金利では1%以上の差があります。まだまだ変動金利の利用をした方が得策だと私は考えます。

◆渡辺智(わたなべ・さとし)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
メガバンクに11年間勤務。現在は金融ライターとして活躍中。メガバンク在職時には最優秀営業賞を2回受賞。富裕層を対象にするプライベートバンカーなどを歴任。「難しい金融をわかりやすく伝える」ことをモットーに活動中

(まいどなニュース特約・八幡 康二)