ソフトバンクグループ(SBG)は27日、がん患者の遺伝子情報や電子カルテを人工知能(AI)を使って解析するサービスを始めると発表した。東京都内で記者会見した孫正義会長兼社長は「日本での最大の死因はがん。私の父も昨年亡くなり、肺がんでした。毎日泣いた」と明かし「今まで絶望して亡くなっていた家族を減らす上で、ASI(人工超知能)は有益だ」と強調した。

 ◇どんなサービス?

 SBGは米医療IT企業「テンパスAI」と合弁会社を設立し、サービスを行う。資本金300億円を折半する。

 テンパスは、がん患者の遺伝子情報や画像データ、電子カルテを米国内の約2000の病院から集め、AIで解析して医師に治療法の選択肢を示す。病院には無償でサービスを提供し、匿名化した情報を製薬会社に売却することで収益を得ている。

 遺伝子検査は最先端の医療とされるが、実施率は米国の30%に対して、日本では0・7%にとどまるという。孫氏は「日本では標準治療で効果がなければ最後に遺伝子検査を受ける。真っ先にやるべきだ」と強調した。

 年内にも全国に13ある、がん治療中核病院でサービスを開始したい構え。導入時から、米国の患者の解析データを利用できるという。孫氏は今月のSBG株主総会で、ASIの実現が「僕の使命」と語っていた。27日の記者会見では「少なくともがんにおいて悲しみを減らせる。使わなきゃ損」と語り「病院にとっては無償で、カルテの形式も変わらないため業務の手間も変わらない。広がらないわけがない」と事業拡大に自信をのぞかせた。

 テンパスは2015年設立。今月、米ナスダック市場に時価総額1兆円規模で上場した。【古屋敷尚子】