福島市仲間町の交流スペース「ひだまりねこ」は、暮らしている猫の大半が10歳以上で、人間で言えば60歳以上に相当する「お年寄り」ばかりという珍しい施設だ。運営する愛猫家たちは「行き場を失った猫たちが、不安を感じることなく最後まで穏やかに過ごしてほしい」と願う。

 運営する一般社団法人「猫の陽(ひ)だまり」の宝槻(ほうつき)敦志さん(44)らメンバーは、もともとは福島市内にあった猫カフェの常連客で、地域猫や保護猫を支援する目的で2020年1月に設立。有志として猫カフェの猫たちの治療費なども個人的に負担していた。だが、その猫カフェは新型コロナウイルス禍で経営が悪化し、21年10月で閉店することになった。

 当時20匹以上いた猫たちは、東日本大震災の前後にこの猫カフェに引き取られて高齢化が進んでいたが、閉店後にどこで暮らすかの見通しは立っていなかった。「再び居場所を失うことだけは避けたい」と、里親が見つかった猫を除く17匹を引き取ることにした。

 「猫の数が多過ぎる」と引き受けを断られ続けた中でようやく見つけた空き物件をリノベーションし、22年3月22日に「ひだまりねこ」をオープン。クラウドファンディングで資金を募り、すべての猫を血液検査。健康が悪化していた猫には療養食を食べさせた。

 コロナ禍が落ち着いてからは「すべての猫が里親に巡り合い、ここを卒業する」ことを目標に毎月、譲渡会を開催している。5月26日の譲渡会にはNPO法人「黒猫すずの家」(福島市)の保護猫も加わり、予約した親子連れやお年寄りが次々と訪れ、老いた猫たちはマイペースでのんびりと過ごしていた。

 現在は当初の17匹から、里親につないだり病気で最期をみとったりした猫を除いた9匹が「ひだまりねこ」で暮らす。スタッフ数人は全員が会社員などとの複業で、ローテーションを組んで店番をしたり動物病院に連れて行ったりしている。

 譲渡会では子どもや大人向けの講座も併せて開き、屋内飼育や不妊手術の必要性を伝えている。悩みの種はペットフードや電気料金の高騰に加え、高齢の猫の通院が重なって医療費がかさむこと。マンスリーサポーターをクラウドファンディングサイト(https://readyfor.jp/projects/00−2929/announcements)で募集している。

 スタッフの女性は「支えてくださる支援者の皆さんのおかげで猫たちが安心して過ごせるので、とても感謝しています。全員に里親を見つけてあげたいけど、どうしてもここが最後のすみかになってしまう子も多いと思う。自分の家のように最後まで見守ってあげたい」と話している。

 次回の譲渡会は30日午前10時半〜午後5時。予約や問い合わせは同店(024・573・0299)へ。【錦織祐一】