近年の研究で、りんごなどに含まれるポリフェノールの一種であるプロシアニジンが、腸内細菌に影響を与えることが分かってきました。なかでも、長寿菌ややせ菌といわれるアッカーマンシア菌の増加が注目されています。
※この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年4月号に掲載の情報です。
プロシアニジンとは?
ポリフェノールの一種で、活性酸素そのものを取り除くなど、強い抗酸化作用があります。他に、生活習慣病の予防をはじめ、さまざまな健康効果も(下記参照)。りんごに含まれるポリフェノールの約6割がプロシアニジンです。
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プロシアニジンの腸への作用
実験によると、脂肪を多く含むエサを食べたマウスでは、体重が増加し、血中コレステロール値や血糖値などの値が悪化します。同時に、腸内では悪玉菌が増え、善玉菌が減少します。
一方、りんご由来プロシアニジンを摂取させたマウスでは、善玉菌と悪玉菌の比率が改善し、通常のマウスと同様の比率に。肥満や糖尿病の予防効果で注目のアッカーマンシア菌が増加しました。
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どうとればいいの?
りんご1個を目安に、毎日習慣的に食べましょう。プロシアニジンは熱に弱いため、できるだけ生のままがおすすめ。皮をむいてくし形切りで食べるのはもちろん、下図のような食べ方も◎。
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※出典:「青森県りんご対策協議会」

りんごに多く含まれるプロシアニジンは、動脈硬化や肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病予防、抗加齢&老化予防など、多くの健康作用をもつことが分かっています。
さらに近年、注目されているのが、腸内環境への作用だと庄司俊彦先生。
「プロシアニジンの摂取によって、内臓脂肪面積が減少したり、血糖値の上昇が抑制されることは長年の研究で分かっていました。では、なぜこのようなことが起こるのか、肥満させたマウスによる試験を行ったところ、プロシアニジンを摂取しているマウスは、体重の増加が抑制されていました。また、血糖値の上昇を抑えたり、脂質代謝(※1)を促す効果が期待されるアッカーマンシア菌の量が増えるなど、腸内細菌にも変化が見られました」
また、りんご由来プロシアニジンを摂取したマウスの腸内では、腸管のバリア機能の向上も見られ、体内の慢性炎症(※2)の抑制や脂質代謝異常の改善に役立つことも期待されています。
現在、日本人における試験でも、プロシアニジンによる体への健康作用と腸内細菌への影響を明らかにする研究が進んでいます。
「りんごの食べ方はお好みでOK」と、庄司先生。
プロシアニジンは体内に貯めておくことができないので、毎日食べることが健康への秘訣です。
※1 体の中での脂質の変化・サイクルのこと。
※2 本来一過性で治まるはずの体内での炎症反応が、低レベルではあるものの、長期間持続して慢性化した状態。
構成・取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子



<教えてくれた人>

国立研究開発法人 農業· 食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
庄司俊彦(しょうじ・としひこ)先生

1990年北海道大学農学部農芸化学科卒業、農学博士。2021年より、上記研究機構の食品健康機能研究領域 食品・感覚機能グループで主席研究員を務める。