2024年4月2日、東京地裁に対して、民事再生法の適用申請を行っていたWeWorkJapan合同会社の手続きが廃止されたことがわかり、注目を集めました。2月にはソフトバンクの100%子会社「WWJ株式会社」の支援により債務の支払いもしていく計画をとされていましたが、一体何があったのでしょうか。
そこで今回は、WeWork Japanに起こったことと、民事再生とは何かについて詳しく解説します。

目次本記事の内容

WeWork Japan合同会社が民事再生法の適用を申請するも廃止に

2010年にニューヨークで創業されたWeWorkは、ワークスペースを提供するサービス事業者で、現在では世界37カ国、600拠点以上に事業を展開しています。月単位での契約が可能で、1名〜数百名規模のオフィスソリューションを提供し、業種業態・業界の垣根を超えて広くビジネス界に受け入れられてきました。WeWorkJapan合同会社はWeWorkの日本進出に合わせて、日本企業のソフトバンクなどとの共同出資により2016年に設立された企業です。


しかし2020年から深刻化したコロナ禍の影響で、シェアオフィスの稼働率が低下し、業績が悪化しました。そして2024年2月に、ソフトバンクが新たに設立した100%子会社の「WWJ株式会社」が事業承継することを条件として、民事再生手続きを申請するに至ります。申請は即日開始決定を受けました。


その後経営再建が進むと思われていましたが、約2カ月後の4月2日、民事再生手続きの廃止が決まったとのニュースが報じられました。これにより今後、WeWorkJapan合同会社は再生に至らず、破産手続きに移行する可能性が高いです。

民事再生の手続きとは?

民事再生とは、民事再生法を根拠法とする裁判手続きのことで、経営が行き詰まった企業について、債権者の同意にもとづいて債務者である企業が再生計画を策定・実行し、事業の再建を図ることを指します。


民事再生の一般的なプロセスは以下の通りです。


➀民事再生の申し立てを裁判所に行う
②裁判所により債務の弁済が禁止される「保全処分の決定」がされる
③民事再生手続きを監督する監督委員が選任される
④債権者説明会が開催(民事再生の申請後1週間後くらいに開催)される
⑤裁判所が再生手続きの開始を決定する
⑥再生計画案が裁判所に提出される
⑦債権者集会が開催され、再生計画案の決議を行う(決議を得るには、債権者の過半数および議決権総額の2分の1以上の賛成が必要)
⑧再生計画を裁判所が認可する
⑨再生計画を完了した場合、もしくは再生計画を裁判所が認可してから3年が経過したら、再生手続きは終了


民事再生手続きをすることで無担保債権者の権利を制約でき、たとえば借入金や買掛金等の返済をいったん停止できます。債務を大幅に圧縮できるので、企業再生のチャンスは広がります。企業の財産を解体して債務を精算する破産手続きとは違い、民事再生はあくまで事業を継続しながら再生を図るので、経営再建の手続き・手法といえるでしょう。


また民事再生では現経営陣がそのまま続投するので、その意味でも倒産・解体ではなく再生・事業立て直しの意味合いが強いです。


民事再生の再生計画においては、本業の将来的な収益状況により再建を図る自立再建型、スポンサーになってくれる企業を見つけて再建を図るスポンサー型、自社の事業を他社に譲渡し、他社において事業再建を図る清算型、民事再生の申し立てをする前からスポンサー企業を確保するプレパッケージ型などの方法があります。

民事再生が廃止される理由とは

民事再生手続きが開始された後でも、再生の見込みがないと裁判所が判断すれば、手続きは廃止されます。民事再生法191条第1号〜第3号では、手続き廃止のケースとして以下が規定されています。


・決議に達する再生計画案の作成見込みがないことが明らかになった場合
・裁判所が決定した期間内に再生計画案が提出されない場合
・再生計画案が否決されたとき


WeWorkJapan合同会社の民事再生手続きが廃止されたのは、「民事再生法第191条1号の事由により」と公表されています。1号とは先述の通り、決議できるような計画案が作成できないことが明らかになった場合です。


2月の段階で、WWJ株式会社のサポートを受けられる見込みは立ったものの、具体的に再生計画を立案する段階で、話がうまくまとまらなかったものと考えられます。今後同社は経営再建への道を進まずに破産手続きへと移っていく可能性も高く、これからの動きも引き続き注目を集めそうです。

まとめ

民事再生手続きをすることで、債務を圧縮して資金繰りの負担を大幅に抑えることができ、さらに裁判所の保全処分の決定によって弁済禁止もできるので、手形の不渡り・取り立ても防げます。


現経営陣も継続でき、企業再生に向けて有利な状況を作れますが、大前提として債権者に納得してもらうこと、スポンサー型やプレパッケージ型の場合は支援企業に納得してもらうことが必要です。ステークホルダーからの合意を得られず、適切な再生計画案が作成できないと、再生手続きの継続は難しくなってしまいます。