障がいを抱えながらも世界を舞台に活躍する岩手県雫石町出身の現代アート作家・松嶺貴幸さんは、5月に紫波町に新たな拠点を設け作品づくりを始めた。

紫波町の日詰商店街。
外観は書店ですが、中に入ってみると現代アートを生み出すアトリエになっている。

ここで作品づくりに取り組むのは、障がいを抱えながらも世界にアートを発信する雫石町出身の松嶺貴幸さん。
5月15日、松嶺さんにとって待望のアトリエが完成した。

現代アート作家 松嶺貴幸さん
「みなさんでこの空間を作っていただいて、ようやくきょうオープンということで。きょうからアート活動させていただけることになった」

この日は、松嶺さんとともに書店をアトリエに改装した支援者や地元の商店街の人たち、約10人が集まってオープンを祝った。

アトリエのオーナー 南條亜依さん
「私もリノベーション一緒にさせてもらったが、本当に明るくなった。町の人もいっぱい気になっていて、新しい文化的な場所ができてすごくうれしい」

日詰商店会 鈴木弘幸会長
「商店街としてもこれからにぎやかに、さらになっていけばいい。一緒に協力して盛り上げていきたい」

松嶺さんはこれまで他の場所を間借りして作品づくりをしてきたが、今回自分の理想の空間を手に入れたことで、これまで以上に創作意欲に燃えている。

現代アート作家 松嶺貴幸さん
「自分が作る空間が、すごく自分のインスピレーションに関連していて、ここだったら爆発してやっていけそう」

松嶺さんは高校時代フリースタイルスキーの練習中の事故で頸椎を損傷し、肩から下が動かなくなった。

現代アート作家 松嶺貴幸さん
「社会的には障がいがあって大変な人と思われるかもしれないが、そういう状態の僕が一番難しい所を、一番価値があるところを取りにいく。そういうところに価値があると思う」

障がいを抱えながらも30歳からアート作品を手掛けてきた松嶺さん。
これまでに県内や東京での個展のほか、中国の上海やUAEのドバイなどの作品展にも出展し世界で活躍してきた。

そんな松嶺さんが現在制作を進めているのが「メタバースシリーズ」と呼ばれる作品だ。

シリーズ1作品目となる「The Couple」は、インターネット上の仮想空間に作られた世界「メタバース」がテーマで、現実にはお互いの姿を知らない男女の結婚を描いている。

作品は、松嶺さんがパソコンを使って描いた原画を元に作っている。

現代アート作家 松嶺貴幸さん
「これをそのまま100%じゃなく、リアルの方が良くなるように変えていく」

キャンバスにはアシスタントが松嶺さんの指示を受けて描いていく。
作品は現在8割ほどの完成度で、さらにクオリティを高めていくという。

松嶺さんにとって、スタジオのほかにも最近大きな変化があった。
それは愛娘・衣桜(いお)ちゃんの誕生だ。
現在7カ月で、妻の三穂さんと二人三脚で子育てしながら作品づくりに励んでいる。

現代アート作家 松嶺貴幸さん
「自分だけが本当にかわいかったのが、自分よりかわいいものができるのは自分のアート活動のインスピレーションにも違いが出たし、毎日楽しみながら過ごしている」

妻・三穂さん
「貴さんも好きなことを続けながら、私も支えられるところ、健康面とか支えながらただただ明るく健康な元気のある家庭が目標」

一児のパパとして、車いすのアーティストとして、ますます作品づくりに意欲を燃やす松嶺さんは人との交流も大事にしていて、新たな拠点からまちににぎわいをつくりたいと話す。

現代アート作家 松嶺貴幸さん
「自分が目指しているのは国際的な舞台なので、そういった所に行った松嶺が、この日詰から始めたというストーリに―にしてそこをどんどん発信していけば、この日詰商店街が盛り上がる一助になるんじゃないかと考えている」