クロスオーバーSUVの進化と課題

 クロスオーバースポーツタイプ多目的車(SUV)は世界のトレンドであり、世界中のメーカーが続々とラインアップを増やしている車種である。その個性的なデザインから乗用車としての人気も高いが、その反面、従来のSUVの特徴であった「悪路走破性」という点では弱点もある。

 SUVはかつて、ウィリス・ジープなどの軍用車から派生したオフロード走行を主目的とする車両を指していた。1980年頃までは、耐久性の高いボディやフレーム、大径タイヤ、トルクフルなエンジンなどを備えたオフロード向けのクロスカントリーSUVが中心で、乗用車のカテゴリーとしては趣味性の高いサブ的車種であった。

 しかし、1990年頃から乗用主体であるクロスオーバーSUVという新しいカテゴリーが登場した。結果、セダンやハッチバック車をベースに大径タイヤを組み合わせた乗用中心のクルマとなった。

 クロスオーバーSUVの魅力は、力強く押し出しの強いエクステリアデザインにあり、ボリュームのあるボディと大径タイヤの組み合わせであれば、クロスオーバーSUVとみなされる。

 初期は、最低地上高など、従来のSUVのような悪路走破性も備えていたが、乗用車としてのクロスオーバーSUVの人気が高まるにつれ、舗装路での走行がメインとなり、悪路走破性は低下している。タイヤサイズが小さく、最低地上高が低いクロスオーバーSUVが一般的になり、キャンプやアウトドアなど悪路走行には不向きなものが多くなった。

 しかし、国産メーカーのスバルは走行性能の高いモデルを相次いで投入し、日本だけでなく世界でも高く評価されている。

スバルのウェブサイト(画像:スバル)

AWDシステムと走行性能の秘密

 実用性と耐久性に定評のあるスバルのクルマづくりは、クロスオーバーSUVにも受け継がれている。

 スバルは現在、コンパクトカークラスの小型SUVからフォレスターのような大型SUVまで、6車種のクロスオーバーSUVをラインアップしている。コンパクトカー兼OEM車のレックスと電気自動車(EV)のソルテラを除く中型・大型クロスオーバーSUV群は、悪路走行時に障害物を乗り越えるために必要な最低地上高として、地面から車体底面まで200mm以上を確保している。

 もちろん、本格的なクロスカントリーSUVに比べれば限界はあるが、車高の低いクロスオーバーSUVが増えているなかで、スバル車の高い走行性能は魅力になりつつある。

 また、スバルのクロスオーバーSUVには、悪路走破に欠かせない独自の4WD(スバルではAWDは全輪駆動)システム「シンメトリカルAWD」があり、駆動力を左右対称にバランスよく配分できるAWDシステムは、走行性能を大きく向上させている。

 また、4輪に駆動力を配分する「X-MODE」は、通常ならタイヤが空転するような状況でも自動的に駆動力を調整し、多くのクロスオーバーSUVが対応できないような路面でもスバル車は走破できる。

 スバルのクロスオーバーSUVは、このふたつのAWDシステムを核とした数々の走行システムによって、ぬかるみや雪道などの過酷な路面でも安心して走れる。

 スバル車の走行性能は、国内のみならず海外でも高く評価されており、国内メーカーのなかでも特別なポジションを固めている。

スバルのウェブサイト(画像:スバル)

スバルのエントリーモデルの実力

 スバルの最新クロスオーバーSUVのひとつ、クロストレックが実際にどれくらい走るのか見てみよう。

 クロストレックは2022年の新型モデルで、従来のインプレッサやXVの流れをくむ中型クロスオーバーSUVだ。OEMのレックスとEVのソルテラを除けば、基本的にはエントリーモデルであり、ハイブリッド車でありながら価格帯は260万円台からと比較的安価である。エントリーモデルとはいえ、クロストレックには走行性能を高める要素が数多く採用されており、最低地上高は200mmとクロスオーバーSUVに求められる走行性能は十分に確保されている。

 また、前後バンパー下部には障害物を乗り越えやすい角度と形状を採用し、樹脂製バンパーガードにより悪路走破性を高めている。クロストレックにはスバル独自のフルインナーフレーム構造が採用されている。

 これは、ボディを組み立てる際にアウターパネルよりも強度の高い骨格構造を採用することで、剛性を大幅に向上させている。ボディ剛性は悪路走行時の耐久性を向上させるとともに、一般道走行時の安定性も向上させ、日常ユースとして完成度の高い乗用車となっている。

 また、クロストレックにはスバル独自のシンメトリカルAWDシステムとX-MODEが搭載されており、アウトドアが趣味の人や雪道走行が想定される人には、FWD(前輪駆動)モデルよりもAWD(全輪駆動)モデルをおすすめしたい。

 クロスオーバーSUVのエントリーモデルから、こうした悪路走破性を確保する性能を盛り込んでいるのがスバルの特徴であり、スバル車を長年乗り継いでいるユーザーが多い理由でもあるだろう。