マーカーランプの役割

 大型トラックの車体にはさまざまなライトが取り付けられており、夜間走行時には電飾が施される。そのなかでも、車体側面のライトは「マーカーランプ」と呼ばれ、主にふたつの役割を担っている。

 ひとつは「サイドマーカーランプ」で、機能的な側方灯としての役割。もうひとつは、イルミネーション効果を狙ったファッションとしての役割だ。

 側方灯として使用する場合は保安基準の対象となり、基準を満たしていないと車検に通らない。ヘッドライトやテールランプほど必要ではないが、あるのとないのとでは夜間走行に差が出る。

 一方、ファッションとして装着する場合は「その他の灯火」として扱われ、こちらにも基準がある。では、それぞれどのような基準があるのだろうか。

マーカーランプをつけて走行するトラック(画像:写真AC)

夜間走行における安全確保の必要性

 大型トラックは一般的な乗用車に比べて車体が長いため、夜間など暗い場所では大きさが把握しにくく、他の車両と衝突する危険性がある。

 そこで、他のドライバーにトラックの大きさを知らせるために必要なのが側方灯である。その役割を果たすのが、トラックの側面に取り付けられたサイドマーカーランプである。

 サイドマーカーランプが必要な車両は、国土交通省の「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」で定められている。この告示第35条の2には、

・長さ6mを超える普通自動車(トラック)
・長さ6m以下の普通自動車である牽引自動車(トラクタ)
・長さ6m以下の普通自動車である被牽引自動車(トレーラー)
・二輪自動車
・ポール・トレーラ

とあり、これらの車両は両側に側方灯を装備しなければならないと定めている。

 ランプは「地上0.25m以上、1.5m以下」の高さに取り付けなければならず、最前部のランプは車両の前端から3m以内、最後部のランプは車両の後端から1m以内に取り付けなければならない。さらに、トラックの車体全体から3m以内にランプをひとつ設置しなければならない。

 ランプの色も規制されており、2008(平成20)年に出された「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」では、側方灯の色は「橙(だいだい)色」と規定されている。

 明るさは、「夜間側方150mの距離から点火を確認できるもの」でなければならず、「照射光線は他の通行を妨げないもの」と決められている。具体的には、他の車両がトラックなどの存在を認識できるように、乗用車のポジショニングランプ(車幅灯)の明るさに相当する300カンデラ以下でなければならない。

 また、マーカーランプを点滅させて走行することは違反である。常に点灯していないと車検に通らない決まりがある。

トラックのマーカーランプ(画像:写真AC)

マーカーランプの取り付け位置による色の制限

 ファッション目的のマーカーランプは「その他の灯火」である。側方灯として使用する場合よりもライトの色の自由度は高いが、取り付け位置によって使用できる色が制限される。特に赤色は、緊急車両が使用する赤色灯との混同を防ぐため、基本的に使用が禁止されている。

 また、青紫色や黄緑色のランプを車両前面に取り付けることはできない。これは、かつてトラックに使われていた車速灯との誤認を防ぐためだ。後部は、ストップランプとバックランプの混同を防ぐため、赤と白は禁止されている。側面は、サイドマーカーランプなどを兼ねているため、橙色か黄色のランプしか認められていない。

 側方灯と同様、明るさは300カンデラ以下でなければならず、点滅していると整備不良とみなされ、車検に通らない。これらのルールを守れば、ファッション目的で設置することも可能だ。

 そんなオシャレなマーカーランプの光源やレンズには多くの種類があり、それぞれに特徴がある。例えば、光源には発光ダイオード(LED)と電球があるが、最近は明るさが増し、比較的寿命が長いLEDが主流になっている。LEDは高めだが、消費電力が少なく、電球よりもメリットが多い。

 レンズにはガラス製と樹脂製があり、それぞれに一長一短がある。樹脂製は安価で軽量だが、紫外線で黄変する。ガラス製は経年劣化が少ないが、高価で壊れやすいなどだ。

夜道を走行するトラック(画像:写真AC)

ファッションと安全性のバランス

 ファッション目的で装着されるマーカーランプなどのライトは、色や光源、素材などで個性を出すことができる。実際、2021年東京パラリンピックの開会式では、デコレーショントラック(デコトラ)が登場し、注目を集めた。そのため、トラックのライトは単なるファッションとして取り付けられていると思った人もいるかもしれない。

 しかし、マーカーランプには側方灯としての役割があり、他のドライバーにトラックの大きさを知らせる役割があった。また、明るさや取り付け位置にも規制があり、安全性にもつながっていた。

 全日本トラック協会(東京都新宿区)が2023年9月に発行した「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2023」では、2021年度の国内貨物総輸送量トン数と輸送機関別分担率が報告されている。

 それによると、国内貨物総輸送トン数は約43億トンで、そのうちトラックが占める割合は91.4%、航空、鉄道、海運を合わせた割合は8.6%となっている。

 このことは、トラックが今後も輸送の主役であり続けることを示唆している。規制を順守したマーカーランプで、これからも安全を守ってもらいたいものだ。