〈「託す」2024かごしま知事選より〉

 不登校の児童生徒が増え続けている。2022年度に鹿児島県教育委員会が行った調査では、前年度比819人増の4507人と、5年連続で過去最多を更新した。苦しむ子どもや家族をどう支えるのか。県政の大きな課題となっている。

 「背景が複雑、多様化してきた」。30年にわたって不登校の相談や支援に取り組んできた、南さつま市の上薗昭二郎さん(71)は、子どもたちの“変化”を肌で感じている。「始めた当初は月に数件程度だった不登校の相談が、近年は増え続けている」と危機感を抱く。新型コロナ禍の20年には年間延べ800件に上った。対人関係の悩みがほとんどだった内容も、ゲームや交流サイト(SNS)への依存、発達障害などさまざまだ。

 理事長を務める児童養護施設「南さつま子どもの家」(南さつま市)には、幼児から高校生まで41人が、一つ屋根の下で暮らす。子どもたちは、それぞれが虐待などの事情を抱える。

 最近は、ゲームやインターネットで生活リズムを崩して不登校になった入所者もいる。この春に施設を退所した18歳男性は、その典型例だった。相談を受けたのは5年前。当時中学2年だった男性は、友人関係のトラブルをきっかけにゲームにのめりこんだ。生活は昼夜が逆転し、登校できなくなった。

 その年の秋から男性を施設で預かった。ゲームは1日1時間、食事は他の子と一緒に食べる−。施設のルールを何度も説明し、徹底させた。慣れない環境のストレスを減らすため、施設の公認心理士らによるカウンセリングも続けた。

 一度乱れた生活リズムを元に戻すには2年近くを要した。その後、男性は高校に進学。休むことなく通学し、今年4月に短大に入学した。「もう大丈夫」。入所時とは別人のような男性の笑顔に、根気強く支援を続ける大切さを実感した。

 県はここ数年、児童家庭支援センター新設やスクールカウンセラーの増員を進めている。上薗さんは「支援態勢の充実はいいことだが質も求められる。じっくりと時間をかけて、子どもに寄り添うような支援が必要だ」と訴える。

 県知事選は、現場と同じ目線に立ち、苦しむ子どものために決断ができる人物か見極めるつもりだ。