第2回「世界料理学会 in VISON」が4月16日、大型商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」(多気町)内の食の美術館「AT CHEF MUSEUM(アット・シェフ・ミュージアム)」で開かれ、約320人が参加した。(伊勢志摩経済新聞)

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 函館で始まった料理人による料理人のための料理学会「世界料理学会」は、スペイン・バスク地方の小都市サンセバスチャンでの取り組みを日本でも実現させたいと、北海道函館市内でスペイン料理店「レストランバスク」オーナーシェフの深谷宏治さんらが、料理人たちが料理の背景にある風土や素材、調理の技について語り、「日本の食文化の発展と料理人・レストランのクリエーティビティーの向上、食に関わる全産業の繁栄を目指す」ことを目的に2009(平成21)年から取り組む活動。2022年に第10回大会を開いた。

 「世界料理学会 in VISON」は深谷シェフ監修の下、伊勢志摩地域を食で元気に盛り上げようと活動するシェフ集団「エバーグリーン」のメンバーらが中心となって開催。テレビドラマ「高校生レストラン」の舞台となった相可高校(多気町)調理クラブの高校生約30人も真剣な眼差しでメモを取りながら参加した。

 当日は、料亭「日本料理銭屋」(石川県金沢市)の高木慎一朗さん、「作」「鈴鹿川」などの日本酒を醸造する「清水清三郎商店」(鈴鹿市)の清水慎一郎さん、フレンチレストラン「Le Musee」(札幌市中央区)の石井誠さん、海鮮料理店「食堂あお」(熊野市)の榎本和希さん、フレンチレストラン「Restaurant MOTOI」(京都市中京区)の前田元さんらが登壇。

 フレンチレストラン「ボンヴィヴァン」(伊勢市)のオーナーシェフで実行委員長の河瀬毅さんは「今の時代、ただおいしいものが作れる料理人はたくさんいるが、今回の登壇者はその中で個性を発揮し自分の料理を真っ直ぐな気持ちで追い求める人たちばかり。高木さんは、英語力を生かして世界を舞台に活躍。老舗の日本料理屋を守るだけにとどまらず、新しく大箱のレストランを作り、金沢の発展に尽力している。清水さんは日本酒『作(ざく)』を片手に日本酒の普及にヨーロッパ中を駆け回っている。石井さんは、僕がほれ込んだ天才。料理、絵画、陶器、文章のどれを取っても一級品で世界一になるために現れた人物。榎本さんは熊野ならではの男で、三重県から生まれる次世代のスター。前田さんはどの切り口でも実力を発揮できる人」と紹介する。

 前田さんの講演では「レストランに未来はあるのか。変わりゆく時代に沿ったレストランの在り方は。長時間労働、人件費の高騰、人員不足、低賃金、スタッフの少人数化など」複合化する問題を挙げ、「このままではレストランに未来はない」と自問自答していることを吐露。「人を幸せにすることができるレストランは素晴らしい仕事。レストランの未来は自分たちで創り出す」と会場にげきを飛ばした。

 深谷さんは「社会に対して料理人としてどう考えるか。料理人の環境、危機感を自分の言葉で話すことが大切。日本全体の料理のレベルが上がることでさらに世界から日本が注目されることになる。次の世代に受け継ぐことができる場になった」とまとめた。