カフェスペースを併設する書店「工夫舎」(宇部市寿町2)が4月20日、宇部にオープンした。(山口宇部経済新聞)

 本が並ぶ店内

 店主は宇部出身の根来正樹さん。高校卒業後は消防士として勤務し、休日には本屋や図書館に通っていたという。2019年からは東京の喫茶店で働き、サービス業の楽しさと一人一人の過ごし方に寄り添う仕事に魅力を感じ、同年に商業施設士の資格を取得。今年2月に「合同会社 拵える」を設立した。

 根来さんは「店舗開発にも携わっていく中で、自分の理想の店を作りたいと思うようになった。SNSでの情報発信や電子書籍など、情報が手に取りやすい時代だが、紙の手触りや香り、懐かしいアナログ感が淘汰されていくのは寂しい。街の面白さを一緒に発見できるメディアな店をこの街に作れたら」と話す。

 同店のコンセプトは「数奇な出会いを育む、メディアなお店。」。店舗面積は約15坪で、木製の棚に文庫本や専門書のほか、児童書、エッセイ、趣味・実用書、絵本など約800冊を並べる。

 「宇部にゆかりのある書籍や、小さな出版社で発行部数が少ない商品もある。デザインや旅、料理、農業、哲学、経済など、考えるきっかけになる本、誰かにとって何かのためになる本を選んで置いている」と根来さん。本を販売したい人に棚を貸し出す「宇部ブックアパートメント」も予定する。

 店内の奥には、全7席のカフェスペース「喫茶室」を備え、「コーヒー」(500円)のほか、焼き菓子店「douze cannle(ドゥーズ カヌレ)」の焼き菓子を提供する。喫茶室では受付で購入したドリンクや菓子を飲食できるほか、持ち込んだ本を読むこともできる。

 今後、オリジナルの本を作れる製本所を併設する。根来さんは「個人やグループで自主制作する小さな出版物『ZINE(ジン)』が近年再注目されている。作り手が自由に本を作れる本屋さんとして、趣味の冊子や思い出の写真集など、自分の思いや表現を本というメディアに綴じ込めて形に残してもらえたら」と話す。

 「県内の作家やアーティストの作品や写真の展示、ハンドメイド雑貨などの販売ができるスペース貸しも行い、活動の拠点として利用してもらいたい。本屋とオープンスペースが混ざり合い、ずっと愛でていけるモノやコトを工夫して拵(こしら)えていければ。この場所に集う人たちのつながりを紡ぎ、土地に根差した、物語を育む店になっていきたい」と笑顔を見せる。

 営業時間は、水曜・木曜・金曜=14時〜21時、土曜・日曜=11時〜18時。月曜、火曜定休。