「新しい職場で心機一転活躍しているのに、書類のことで、まだ前の職場とやりとりしている…」

転職が当たり前の時代、初めて転職する人の中には、退職する際にやらなければいけないことが多々あることを知らない人がいるかもしれない。

「手続きすべき書類」「返さなければいけないもの」等、「退職時のお約束」を知らないでいると面倒なことになるケースも少なくない。

そこで今回は、転職・退職時に絶対に忘れてはいけないことについて解説する。

■退職時にやるべきこと1:受け取るべき書類をもらう

退職時には元職場から次の職場で必要になる書類をもらい忘れないようにしよう。退職後でも郵送してもらう、実際に出向くなどの方法で受け取れるが、二度手間になるのでできれば避けた方が良い。特に円満とはいいがたい形で会社を辞める場合、はやめに手続きを進めておくのが賢明だ。

具体例として以下の書類が挙げられるので、事前にチェックし、抜け・もれがあれば連絡しよう。

・雇用保険被保険者証
・源泉徴収票
・年金手帳
・離職票・退職証明書

なお、発行や返却までに時間がかかると言われた場合は、いつごろまでに対応してもらえるかを確かめておくべきだ。一向に発行・返却されない場合はハローワークに事情を話すと良い。

■退職時にやるべきこと2:返すべき備品を返却する

逆に、自分が元職場に返すべきものを返さないと、トラブルのもとになるので絶対に避けて欲しい。一般的には次のものを返却するよう求められるので、なるべく早いうちから準備しよう。

● 健康保険被保険者証
● 会社から支給された身分証や備品

制服を貸与されていた場合は洗濯するかクリーニングに出すと良いが、そのまま返却するよう言われた場合はこの限りではない。また、仕事で作成した顧客名簿や企画書があれば、元データも含めて返却しよう。

他にも、判断に迷うものがあれば「とりあえず返す」で進めるのが無難だ。

■退職時にやるべきこと3:PC関連の設定の消去作業

職場によっては、業務で私用のパソコン・スマホを使うことがあるかもしれない。そのような場合、業務において利用したソフト、アプリ、システムの設定はすべて削除しよう。退職後に不当アクセスの疑いをかけられる可能性があるためだ。具体的に何を削除すれば良いのかは、職場の担当者に確認しておくのをおすすめする。

■退職後は住民税にも注意

会社勤めをしていれば住民税は給与から天引きされる(特別徴収)ことになるが、辞めた場合は普通徴収となり、自分で支払うことになる。具体的な扱いがどうなるかは、以下の3パターンのいずれに当てはまるにかによって異なるので注意が必要だ。

・退職前にすでに転職先が決まっている場合
次の就職先が決まっている場合は、その会社に特別徴収を継続してもらうことになる。その際「給与所得者異動届出書」が必要だ。この書類は、前の会社から受け取る必要がある。こちらについても退職後にやりとりをしたくないなら、はやめに手続きしておくのがおすすめだ。

・1月1日〜5月31日までに退職した場合
退職月の給与から5月までの住民税が一括で徴収される。徴収される住民税が退職月の給与と退職金の合計を上回っていた場合は、普通徴収として自分で納めなくてはいけない。

・6月1日〜12月31日に退職した場合
退職月の住民税は天引きしてもらえるが、その翌月以降は自分で納める必要がある。ただし、職場によっては退職する月から翌年の5月までの住民税を退職月の給与・退職金から一括徴収してくれることもあるのでまずは相談してみよう。

■面倒なことにならないように…

退職・転職する理由は人によってさまざまだ。「新しいことにチャレンジしたい」「キャリアアップしたい」など前向きな理由であることもあれば、「職場の人間に二度と会いたくない」「パワハラ、セクハラに遭った」など、あまり好ましくない理由であることもある。ひとつ言えるのは、どんな理由であれ「立つ鳥跡を濁さず」で進めて欲しい。「どうせ最後だから」と丁寧さを欠いたり、抜け漏れがあったりすると、後々面倒なことになってしまいがちなので気を付けよう。

文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。