呉美保監督、吉沢亮主演の『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が9月より全国公開決定。このたび、原作者の五十嵐大と、新たに出演が発表された忍足亜希子のコメントが到着。あわせてティザービジュアル、WEB限定超特報が公開された。

本作のストーリーは宮城県の小さな港町から始まる。耳のきこえない両親のもとで愛されて育った主人公の五十嵐大は、幼い頃から母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。そして心を持て余したまま大は20歳になり、逃げるように東京へ旅立つ。

主演は、「キングダム」シリーズ、「東京リベンジャーズ」シリーズなどの話題作から作家性の強い監督作まで、幅広い作品に出演し、2025年に吉田修一原作、李相日監督『国宝』も公開を控える吉沢。さらに、ユースケ・サンタマリア、烏丸せつこ、でんでんなど個性豊かな俳優陣も本作の脇を固めている。監督の呉美保は、2014年モントリオール世界映画祭ワールドコンペティション部門最優秀監督賞に輝き、第87回アカデミー賞外国語映画賞部門の日本代表作品に選出され、2014年キネマ旬報ベスト・テン1位に輝いた『そこのみにて光輝く』(14)で知られ、本作が9年ぶりの長編作品となる。脚本は『正欲』(23)、『ゴールド・ボーイ』(24)などを手掛ける港岳彦が務める。

今回発表された新キャストは、主人公、大のろう者の母、明子役の忍足と、父の陽介役の今井彰人。ろう者俳優として活躍する2人が、あふれんばかりの息子への思いを見事に表現している。出演に際し忍足は「私は五十嵐大さんの家庭とは逆の境遇で、私は生まれつき、きこえない子どもで、きこえる親から生まれ、きこえる世界で育ちました。 自分は何者なのか孤独感や苦悩と葛藤しながらも、きこえる世界ときこえない世界を行き来するという、同じ立場だからこそ、とても共感しました。 コーダの世界をひとりでも多く知ってもらえる良い機会になれば見方も変わると思います」とコメントを寄せた。

原作者の五十嵐は作家、エッセイストとしてコーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子どもという意味)という生い立ちを踏まえ、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動を続けている。本作は彼の自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」が原作となっている。

五十嵐も「2つの世界に挟まれ、まるで揺蕩うように生きるコーダについて説明するのは、いつだって難しい。だからこそ、理解してもらうことを諦めていた時期もありました。でも、社会は少しずつ前進していて、ようやく、コーダが抱える葛藤にも目が向けられるようになりました。子どもの頃の自分がいまの状況を目にしたら、『世の中は捨てたもんじゃないな』と思うかもしれません。完成した映画は、想像を遥かに超えるものでした。コーダの苦しみが描かれつつも、そこにあるのは普遍的な親子の愛情です。きこえない母ときこえる息子がどんな愛情を紡いでいくのか、ひとりでも多くの方に観ていただけることを願っています」と期待のコメントを寄せている。


さらに、大が宮城県から東京へ向かう電車の中を切り取った、ティザービジュアルが明らかに。あわせて、バリアフリー字幕版も用意されたWEB限定の超特報映像も公開されている。

誰もが共感する母と息子の物語に映画館で是非とも触れて欲しい。

文/サンクレイオ翼