MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、8年ぶりの「あぶない刑事」シリーズ最新作、非日常のなか青春を謳歌する少女たちの物語、アウシュヴィッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族の物語の、バラエティに富んだ3本。

■鮮度が失われない、主演2人の絶妙のコンビネーション…『帰ってきた あぶない刑事』(公開中)

舘ひろし演じるダンディー鷹山敏樹(タカ)と柴田恭兵扮するセクシー大下勇次(ユージ)が活躍する、「あぶない刑事」シリーズの8年ぶりとなる映画最新作。70歳を超えてなお、主演2人のアクション、大人の色気は健在だ。

今回ポイントとなるのが、タカとユージが横浜に開いた探偵事務所を訪れる、依頼人の永峰彩夏(土屋太鳳)の存在。主役コンビの娘かもしれない彩夏が加わったことで、タカとユージが“父親”としての顔を見せるのが面白い。基本のキャラと世界観を踏襲しながら、娘の登場によって二人の人生の年輪を自然に感じさせる中身になっている。またタカとユージの命を狙う敵が、元銀星会組長の息子というのも、昔からのファンには嬉しい設定である。勿論、過去の作品を知らない世代でも充分に楽しめる内容で、これぞフィクションとしての刑事ドラマの醍醐味。シリーズ誕生から38年、俳優として互いをリスペクトするからこそ鮮度が失われない、主演2人の絶妙のコンビネーションを楽しんでほしい。(映画ライター・金澤誠)

■後章になれば全て明らかに…『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』(公開中)

幾田りら、あのの主演で話題の作品の後編。前章では侵略者(宇宙人)が大量に空から振ってくるという衝撃の展開。後章では、侵略者と人類の攻防戦が行われるなか、一方そのころ小山門出(声:幾田)たちは、大学生になって上京しキャンパスライフを謳歌しようとする。後章では、中川凰蘭(声:あの)がメインヒロインとして、前章でちらりと出ていたあの人がキーパーソンとして活躍する。

前章にあった門出の飛び降りシーン、“イソベやん”の秘密道具を使って悪を粛正するシーンなど、過去のフラッシュバックがいまとつながらず、ちょっと「ムムム」と思っていた方も多いだろう。だがそれもきっと、後章になれば全て明らかになるはずだ、と。その通り「なるほどね〜!」となります。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』というタイトルも、「そういうことか〜!」と。そして、ちょっとウルウルするシーンも。「侵略者の真実は?」といった方向に行かず、あくまでも青春譚であるところがいい。(ライター・榑林史章)

■観る者の感性をも試す衝撃的な映像世界…『関心領域』(公開中)

カンヌ国際映画祭でグランプリに輝き、米アカデミー賞では国際長編映画賞、音響賞を受賞。世界的に絶賛を博した本作は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが犯したホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)を、まったく新しい視点で映像化した歴史劇だ。舞台となるのは、ポーランドのアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に隣接した一軒の邸宅。そこで暮らす所長ルドルス・ヘス(クリスティアン・フリーデル)の家族の姿を、定点観測のごとく冷徹なカメラワークで映しだす。

知人たちを招き、色鮮やかな花々が咲き誇る庭でパーティーを催す一家の日常は優雅そのもの。しかし壁一枚を隔てた収容所では、罪なき大勢のユダヤ人が日々殺されている。ジョナサン・グレイザー監督はナチスの虐殺行為を直接描かず、緻密な音響効果によって収容所内の惨劇を表現。やがて浮き彫りになるのは、おぞましい現実に目を向けようとしない人間の“無関心”の恐ろしさ。観る者の感性をも試す衝撃的な映像世界を、ぜひ体感してほしい。(映画ライター・高橋諭治)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼