大相撲夏場所は、石川県津幡町出身の小結・大の里がデビューから7場所目と、史上最速での初優勝を果たしました。今場所の大の里の強さの秘密はどこにあるのか、独自の視点で振り返ります。

夏場所で初優勝を決めた 小結・大の里

■初日 〇大の里(1勝) すくい投げ 照ノ富士●
立ち合い、左をのぞかせ少しがぶりながら右を差すと一気の攻めを見せた大の里。照ノ富士が小手に振ろうとするところをすくい投げを決め、横綱戦初勝利。夏場所の活躍を予感させる一番になりました。

■5日目 〇大の里(4勝1敗) 寄り倒し 霧島●
立ち合いから霧島は左の前まわしをつかみ、大の里の右を封じたかに見えましたが、浅いながらも右の下手を取った大の里は右半身から霧島を土俵の外へ。決して十分とは言えない体勢から大関に勝ち、1敗を守ります。

■6日目 〇大の里(5勝1敗) 寄り切り 琴櫻●
「猛牛」の愛称で横綱まで上り詰めた祖父のしこ名を夏場所から継承した、大関・琴櫻との一番。右の相四つ同士、左の上手を引いた琴櫻ですが、大の里は右差しから重心を低くして寄り切り。大関を2日連続で撃破しました。前日の霧島戦のように右差しからの攻めが冴えました。

■10日目 〇大の里(8勝2敗) 押し倒し 豪ノ山●
突き押し相撲が得意の豪ノ山との対戦。頭で低く当たる豪ノ山ですが、大の里も当たり負けしません。豪ノ山の突きをうまくあてがいながら、得意の突き押し相撲で圧倒。10日目で勝ち越しを決めました。

■千秋楽 〇大の里(12勝3敗) 押し出し 阿炎●
立ち合い、阿炎のもろ手突きにも動じず前への圧力をかける大の里。右差し、左のおっつけから一気に押し出しで勝利しました。プレッシャーをものともせず、優勝を最高の相撲でもぎ取りました。

石川県七尾市出身で、大卒の力士として唯一横綱昇進を果たしている輪島は、1972年(昭和47年)に新小結になり、10勝5敗の成績で殊勲賞を獲得する活躍を見せました。大の里はこれを超える活躍で、見事初優勝を果たしました。

「黄金の左」で横綱まで上り詰めた輪島

輪島は、左を差してから右から強烈に絞り下手投げを決める相撲を得意としていました。「黄金の左」と表現される下手からの攻めでしたが、大の里は右差しから勝機を見出す相撲が夏場所では目立ちました。輪島とは左右が逆、「黄金の右」と呼べるような相撲に磨きがかかっています。

MRO

来場所以降は、対戦する力士も大の里の右からの攻めをいかに攻略するか研究するに違いありません。

大の里としては、突き押し相撲をさらに磨くことはもちろんでしょうが、「黄金の右」をいかに確実なものにしていくか。近い将来に大関昇進がかかる中、来場所以降注目したいポイントです。