長野県諏訪地域の歴史や文化、信仰をテーマにした地域密着のガイドツアー「SUWAエクスペリエンス」が26日、始まった。諏訪信仰の研究会「スワニミズム」を基盤に、考古資料の調査や活用に取り組む「大昔調査会」にも所属する4人が案内役を担当。第1弾として、江戸時代まで諏訪神社(現・諏訪大社)とともにあった神宮寺由来の仏像などを公開した寺院を巡り、諏訪の魅力を伝えた。

 ツアーは代表の林聡一さん=岡谷市出身=が社長を務める旅行会社「丸ト林商店」(岡谷市)が企画・運営。ガイド経験の豊富な石埜三千穂さん=下諏訪町=、坂間雄司さん=岡谷市=、三好妙心さん=茅野市=と林さんで案内する。

 この日は全国から19人が参加。下諏訪町の諏訪大社下社秋宮を出発し、岡谷市の真秀寺など4寺院を回った。渡来僧の一山一寧を開山とする慈雲寺(同町)を訪れた一行は、同寺境内にある修験道「敬愛社」の道場「宝光院」から、前日に遷座された薬師如来立像と不動明王像を見学した。

 如来像は鎌倉時代の作とされ、石埜さんは「行者が個人的に礼拝した念持仏で、下社春宮薬師堂の本尊だった」と語り、火災の痕跡などを紹介。寺社巡りが好きで参加したという吉本健一さん(50)=名古屋市=は「背景まで分かって参考になる」と話し、耳を傾けていた。

 茅野市尖石縄文考古館や国史跡の八島ケ原湿原(下諏訪町)などを見る第2弾も計画。海外からの集客も視野に入れ、諏訪のブランドや活力向上にもつなげたいと考える。

 全国通訳案内士の資格も持つ林さんは「縄文時代に始まり、近代化にも成功した諏訪は歴史が重層的で、理解には案内人が鍵になる」といい、「専門的で分かりやすい話ができるメンバーが集まった。ビジネスとしても成立させ、自立的な文化活動にしたい」と意気込んでいる。