日韓関係の悪化や新型コロナウイルス禍で減少していた韓国人観光客が戻りつつある国境の島・対馬(長崎県)で、喫煙やごみ捨てといったマナー問題が顕在化。対馬市内二つの神社が立ち入り禁止措置を取っている。市などは旅行業者などにマナー向上の啓発を呼びかけるが、大きな改善に結び付いていないのが現状だ。
 韓国・釜山の南約50キロに位置する対馬。韓国人客はピーク時の2018年、約41万人が来島した。当時の国際航路は計5社だったが現在は2社が運航。23年は約11万9千人が釣りや自然、歴史を楽しみに対馬を訪れている。
 だが今月5日、ある問題が起きた。海中鳥居で知られる和多都美神社(豊玉町)の駐車場で、韓国人客が乗った車による物損事故が発生し、神社関係者とトラブルになった。対馬南署は「被害届は出ていない」として物損事故として処理したが、パトロールを強化しているという。
 神社関係者によると、これまでも韓国人客らによる敷地内での飲食や喫煙などの行為があった。神社側はコロナ禍前に団体客の立ち入りを禁止。事態を見守っていたが好転せず、昨年10月ごろから全ての韓国人客に対象を拡大した。
 八幡宮神社(厳原町)も昨年秋ごろから、一部区域への韓国人客の立ち入りを禁止した。市や神社関係者によると、「許可なく社務所の扉を開ける」「祈禱(きとう)などの最中に入ってくる」「ごみを敷地内に捨てる」といった行為があったからだ。
 同神社での出来事について、市国際交流協会が韓国の旅行業者に文書で説明。市は今春、韓国であった事業者との意見交換会でも対策への協力を求めた。
 「すべての韓国人が悪いわけではないのだが…」。二つの神社の関係者はともに表情を曇らせる。
 市はこれまでも啓発リーフレットを高速船の乗客に配るなどしており、市民からは「トイレの使い方など良くなったマナーもある」(20代女性)との声も聞かれる。ただ市の担当者は「大きく改善はされていない。他でも同様の問題が起こらないよう対策を続けるしかない」。
 日韓関係に詳しいある韓国人事業者は「誰にとっても良くない」と憂慮する。今後、立ち入り禁止場所などが増えれば「『対馬への旅行は企画しなくても良い』となる可能性もある」と指摘。「民間レベルでの話し合いを地道にやっていくしかない」。自身も尽力していく姿勢をにじませた。