長崎大は、ダニが媒介する感染症、日本紅斑熱の治療で広く用いられるフルオロキノロン系抗菌薬(FQ)が、この病気の死亡率を改善させず、逆に患者に害を与える可能性が高いとする研究結果を発表した。日本紅斑熱の治療でFQを使用する危険性を示したのは世界で初めて。今後の日本紅斑熱の治療に影響する重要な発見としている。
 同大熱帯医学研究所の樋泉道子准教授が、福島県立医科大との共同研究結果を1日に発表した。
 日本紅斑熱は、マダニが媒介する病原体リケッチアの一種が引き起こす病気。高熱や発疹を伴い、県内でも発生している。
 樋泉准教授によると、FQは一般的に細菌性肺炎などの治療に使用される。日本紅斑熱については、多くの治療でテトラサイクリン系抗菌薬(TC)とFQが併用されてきた。効果については根拠がなかったが、併用による相乗効果を期待し慣例的に使われていた。
 研究は、国内の病院から日本紅斑熱の確定診断を受けた患者797人のデータを集め調査した。TCだけを投与したグループと、FQを併用したグループに分け、死亡率などを評価した。患者の年齢や重症度などの偏りを補正しても、両グループの死亡率には有意な差が認められず、FQ併用は死亡率改善につながらないことが分かった。
 特に、FQの一種であるシプロフロキサシンを使うと、患者の死亡率を高める可能性があるとの結果も示された。このため、日本紅斑熱の治療ではTCとFQの併用は推奨すべきでないと結論付けている。