「ギャンブル依存症」の特集です。14日、「啓発週間」がスタートしました。大リーグ・大谷翔平選手の元通訳による違法賭博で改めて注目される中、苦悩する当事者の家族、治療に当たる医師を取材しました。
息子に異変 借金約1000万円
息子がギャンブル依存症・50代女性:
「消費者金融からも満額借りていて、その後闇金も借りていて、闇金を返せなくなったら友達から借りて、だましてでも借りてっていう繰り返しでした。優しくてみんなからも好かれてましたし、まじめに働いてましたし、なんで?って」
豹変してしまった息子について語る県内在住の50代女性。
4年ほど前、突然、20代の息子から「金を返せず、友達に脅されている」と打ち明けられました。闇金融や友人から借りた金は約1000万円。
家族が肩代わりをしましたが…。
50代女性:
「何度も息子を信じようと思って、息子の言うように私たちがしりぬぐいをしてきたんですが、すべてうそだったという絶望感を何度も味わっています」
スマホでスポーツ賭博 家族は気づかず
借金の原因はギャンブル。何度諭しても、息子はやめませんでした。
それまで息子のギャンブルに全く気づかなかったと話す女性。
手を出していたのは野球やサッカーの試合の勝敗に金を賭けるスポーツ賭博でした。スマホやパソコンを使ってオンラインで投票する仕組みです。
50代女性:
「我が家の場合は一緒に暮らしていたが、携帯電話をいじってるだけだったので全く気付かなかったです。24時間365日、どこでもできてしまうので。スマホ一台で賭ける、お金が動くよりも数字が動いてるだけなんですね。お金を失うという感覚をもてないのですごく恐ろしいと思う」
コロナ禍の影響 オンライン賭博が増加傾向
大金が失われ、周囲にも深刻な影響を及ぼすギャンブル依存。
大谷翔平選手の元通訳が陥った違法賭博のケースと重なります。
全国調査によりますと、ギャンブル依存症が疑われる状態にある成人は2.2%。
コロナ禍で在宅時間が増えたことなどを背景に、インターネットを使ったギャンブルを始めた人が増えているということです。
県立こころの医療センター駒ケ根・犬塚伸副院長:
「本当に最近多いのがオンラインカジノ、それからネットでの競馬、ネットでのボートレース、ネットでのオートレースとか、そういう方が本当に多くなっていますね」
ギャンブル依存は病気 医師「コントロール失われた状態」
「県立こころの医療センター駒ケ根」で治療や相談にあたる犬塚医師。ギャンブル依存症は年齢や収入などに関係なく、「誰しもがかかる恐れのある病気だ」と訴えます。
県立こころの医療センター駒ケ根・犬塚伸副院長:
「ギャンブルによってドーパミンが脳の中に放出される、それでそのドーパミンにだんだん脳が慣れていくと、さらにギャンブルをやりたくなってしまう、それでいつの間にかはまり込んだ状態、抜け出せなくなった状態。一言で言うとコントロールが失われた状態というふうに考えています」
「本当に真面目で普通にネクタイを締めて仕事をされているような方、20代、30代の方が多い印象です」
「特効薬」はなく、集団プログラムで治療
では、ギャンブル依存が疑われる人とどう向き合えば良いのでしょうか。
県立こころの医療センター駒ケ根・犬塚伸副院長:
「そういうことをしていてはダメじゃないのとかですね、今後は改めなさいとか言ってもなかなか本人さんが孤立するだけなんですね。ですので、ご家族さんにお願いしたいことは、一つは叱らない、もう一つは肩代わりをしない、その2点をいつもお願いしているところです」
ギャンブル依存症に特効薬はありません。
同じ境遇の人たちが集って、互いの経験を話し合う集団プログラムが有効とされています。
女性の息子は回復する前に逮捕…
女性の息子もギャンブル依存症と診断され、施設に入所したり、病院に入院したりしました。
しかし、回復する前に盗みの疑いなどで逮捕され、先日、実刑判決を受けました。
女性は、もう3年、会っていません。
50代女性:
「本当に深い病気だなと、恐ろしい病気だなと思います。本人には自分の問題と向き合ってもらって、いつかもし回復したら会えればいいと思っていますけれども、今は本当に昔の息子ではないので親の言葉は響かないです」
「うちの祖父なんかには(息子が)死んでしまえばいいのにって言われました。私は切なかったです。私の責任なんだなと思いましたし、家族にも理解ができない病気です。なので理解ができる家族会につながってもらって生きる力をもらってほしい」
女性は当事者の家族でつくる「全国ギャンブル依存症家族の会」に参加。啓発活動などを行っています。
医師「早めの相談・受診を」
ギャンブル依存症はあくまで病気。犬塚医師は早めの相談や受診を呼び掛けています。
県立こころの医療センター駒ケ根・犬塚伸副院長:
「ギャンブル問題で困っている方が身近にいたら、あるいはご本人がそういう場合は、決して恥ずかしがらず、たまたまなってしまった病気なんだということで、周りの人は決して非難することなく、淡々とですね、医療機関なり相談機関にご相談いただければというふうに思います」