経済産業省発表の2022年のBtoB‐EC市場規模は420兆円、EC化率は37.5%である。

市場規模が巨大なのは、原材料調達、中間品製造、完成品製造、卸売、小売といった一連の過程において、それぞれに売上高が積み上がるためだ。つまり二重カウントによって実態以上に金額が大きく見える。



卸売業中での1次卸から2次卸といった内部流通でも同様のことが発生する。よって420兆円という推計値を参考にする際には注意してほしい。

ただしこれはEDI(電子データ交換)の取引規模である点にも注意が必要だ。

EDIとはインターネット登場以前から存在する企業間取引システムの総称である。EDIはECというよりサプライチェーン管理システムのイメージに近い。

EC化率は37.5%なので6割は未導入。利用コスト面などで断念している中小企業は多いと見る。裏を返せばコスト面などの課題点を克服できれば伸びしろは非常に大きい。


<BtoB小売は勝機多い>
ところで経済産業省の報告書にはEDIの市場規模しか記載されていないが、これがBtoB‐ECの全てではない。例えばASKUL、たのめーる、カウネットに代表されるようにオフィスサプライ系のBtoB‐ECがある。

工場などで必要となる間接資材を販売するMonotaROもBtoB‐ECだ。EDIと区別する意味で筆者は「BtoB小売」と呼んでいる。EDIほど市場規模は大きくないがこちらも伸びしろはありそうだ。

具体的な数値を見てみよう。このBtoB小売市場をASKULのような「総合小売型」および特定カテゴリーの商材を扱う「カテゴリー特化型」に分けて推計すると、合算で市場規模は推定約2兆円となった。分母の商取引規模は推定約27兆円なのでEC化率は7%台である。EC化率だけ見るとBtoB‐ECよりも低い。無論、商材カテゴリーによってEC化率は異なるため全てに伸びしろがあるわけではないが、勝機はひそんでいる。



以上をもとに、改めてBtoB‐ECの伸びしろについて整理してみたい。

ポイントは、①従来型EDIの伸びしろ ②従来型EDIの導入を断念する層への代替策による伸びしろ ③BtoB小売の伸びしろ――の3点である。

①はこれからも市場規模は伸びるだろう。しかしながらある程度システムの採用が進んでいると推測されるため、業種にもよるが新規ユーザー獲得という点での伸びしろは、それほど大きくないのではと筆者は考える。

②は大きなチャンスが眠っていると思うが、筆者があえて注目したいのは、③のBtoB小売である。①や②より規模は小さいが、③は純粋なECそのものである。商材にもよるが個人向けに消費財を手がける事業者は企業向けにニーズを開拓してみてはどうか。

BtoB‐ECとの相違点は相手企業に合わせた決済方法、相手先別にカスタマイズした商材ラインナップの見せ方、および価格設定あたりだろう。今後の展開に大いに期待したい。