新倉庫、コロナ禍で稼働できず

2023年12月7日、さいたま地裁より破産手続き開始決定を受けた埼玉県新座市の梱包業者エムティエス。1997年10月の設立で、近年は同県内の朝霞市、三芳町、富士見市に倉庫を構え、梱包をはじめ仕分け、出荷、配送と総合的な物流業を確立。また、化粧品や医薬部外品の製造許可を取得して三芳町の倉庫にはクリーンルームを備え、本格的な医薬部外品の取り扱いを開始し、製薬会社との取引を増大させていた。

ただ、倉庫の3カ所分散による拠点間移動のムダを感じていた同社は、その集約を検討するようになる。そんな折、現本店である新座市大和田町内に某業者による大規模倉庫新設の情報が入り、設計段階から使用者の要望を取り入れるという使い勝手のよさも手伝って、コロナ禍中の極めて判断の難しい状況ではあったが、約15億円の借り入れと倉庫統合という大型設備投資を決断する。稼働開始は21年7月のことだった。

しかし、結果的にこの投資判断は失敗に終わる。やはり、タイミングが悪過ぎた。まさに「新型コロナ関連倒産」の典型となる。取扱品の中心である医薬部外品は行政による許可を必要とする。ところが、新倉庫の方の許可取得に向けた行政による現況調査が、コロナ禍の影響を受け一向に進まず、許可が取れないことで旧倉庫を閉じることができなかった。つまり、新倉庫はほぼ遊んだまま(本格稼働できないまま)、旧倉庫を動かさざるを得ないという、倉庫賃料の二重払いが当社を苦しめたのだ。

今回の件では、投資判断の甘さに加え金融機関の姿勢にも疑問の目が向けられた。ただ、世界中の誰しもが経験したことのないパンデミック。先行きを正確に予想し、正しい判断を下すことはかなり難しい。そうであるがゆえに、慎重のうえにも慎重な動きが必要ではなかったか。これだけの負債を抱えていたのだから、単なる結果論では済まされない部分もあるといえる。 (帝国データバンク情報統括部)