全日本空輸(ANA)は航空便を使ったインターネット通販(EC)向けの新しい物流サービスを立ち上げた。条件次第ではトラック輸送より安価に、関東から中国・四国・九州への翌日配送を実現する。トラック運転手の残業上限規制に伴う「物流の2024年問題」で翌日配送できる範囲が狭まる中、航空輸送でトラック輸送のすき間を埋め、事業拡大を目指す。

EC向け自動出荷システムのロジレス(東京都品川区)と組み、4月から羽田発岡山行きの便を使い、一部のEC事業者向けにサービス提供を始めた。倉庫作業の効率にもよるが、「12時に鹿児島の利用客が注文した商品を18時台の便に載せて翌日届けられる」(ANACargoの末原聖常務)。トラックでは不可能な速さだ。

具体的には、EC事業者はロジレスのシステムが入った倉庫に商品を保管。ANAとロジレスのシステム連携により、仕分けや発送作業、貨物スペース予約を一括管理し、時間を短縮する。倉庫内で航空用コンテナに商品を入れて空港へトラック輸送し、そのまま積み込む。デジタル変革(DX)技術でスムーズな輸送を実現する。

航空輸送の運賃はトラックの10倍とも言われるが、「使いようによってはそうではない」と末原常務は話す。同社が目を付けたのは、ガラ空きの昼間の旅客定期便の床下貨物スペースだ。主な取引先のフォワーダー(利用運送事業者)はトラック輸送が基本で、航空便を使うのはトラックを使いづらい朝と夜。このため約80%が空いた状態だった。フル活用すれば、年約125万トンの荷物を運べる。

「これまでも空きスペースを活用したいと思っていた。ロジレスとの連携で活路が開けた」(同)という。

商品はあらかじめコンテナに入った状態で羽田空港内の倉庫に届く

ANAはほかにも旅客機の貨物スペースの利用拡大を図っており、4月1日から昼間帯限定でトラックに対して競争力のある割安運賃を設定した。LD3コンテナ1台当たりの片道運賃は羽田ー新千歳と羽田ー福岡で2万円、羽田ー伊丹で1万5000円とした。

顧客とも連携しており、食材宅配サービスのナッシュ(大阪市北区)とは大阪ー北海道間で旅客機の貨物室を使った冷凍食品の輸送ネットワークを構築した。従来のトラック輸送に比べ輸送時間を最大2日間短縮でき、業務・経路の効率化により総合的なコスト削減にもつながった。

24年問題に伴う輸送力不足はビジネスにとって大きな障害だが、これを覆すアイデアも出てきている。