元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半が経過したところで引退を決意し、現在は同人作品やセクシービデオの脚本など、あらゆる方面で活躍中。
◆セクシー女優のメディア進出の裏事情

 昭和〜平成初期くらいまで、セクシー女優とは典型的な“ナイショの仕事”だった。この仕事をしていることは、誰にも言わずに墓場まで持って行く勢いで、口が裂けても周りには言えないのが当たり前。うっかり漏らしてしまえば地元では村八分、友人は離れていって、家族とは大モメして……みたいな、マイナス要素が非常に大きかったのである。

 しかし、不思議なことに従来の概念は時代とともに薄れていく。セクシー女優のメディア進出は地上波番組を皮切りに加速、今となってはありとあらゆる場面で女優を見掛ける機会が増えた。

 一見してセクシー業界は演者の格上げを成功させたように思えるものの、実際はまだまだ高い壁が立ちはだかるのが事実。進出はできても、突き抜けるには高いハードルを乗り越えねばならない。

 今回は「元」の肩書きを乱用する筆者が実際に体験したエピソードや、見て聞いた話を元にお話していこう。

◆セクシー女優の肩書きでは出られない場所も

 現代の女優が活躍するメディアは週刊誌・青年誌(漫画)・YouTube含むネットテレビ・SNS、深夜やCSの番組等。挙げると意外と多いように思えるが、実はこの中でも“全て出演可能”なわけではない。 

 一口に週刊誌や青年誌といっても、「出られるのはグラドルまで」というケースも多い。青年誌に関してはセクシー女優がグラビアを飾れるのは某出版社から出ている一誌のみ。それも相当な人気がないと掲載不可、なんて縛りさえある。

 様々な女優の活動を見ている人なら、みんな似たようなところに出ているのがわかると思う。あれは売り出し方が全く一緒とかではなく、ただ単純に露出の場が限られているからなのだ。

◆元セクシー女優たちにも制限が…

たかなし亜妖さん じゃあ現役セクシー女優の肩書きを外し、「元」になれば羽を伸ばし放題なのか。その答えはNo。すでに1回でもビデオに出演し、活動履歴を作った時点で受けられないオーディションや案件が出てきてしまう。

 どこがダメで、どこがOKなのかの判断は広いので本記事だけでは説明しきれないが……。例を一つ挙げるなら、ファッションブランド。「どんなに可愛くても、セクシー女優を使うとブランドイメージが壊れるんじゃないか」と考えるところは少なくないため、引退後でも“そっち系の仕事をした経験がある人はNG”なんて体制を取っている場合も。

 これは下着や水着メーカーでも同様で、脱ぎ仕事だからといってセクシー女優ウェルカムではないことも多い。爆発的な人気があるのなら既存のファッションブランドに頼らず、自分で立ち上げるなど、回避策は取れる。元女優たちは、こういった制限を理解しつつもその現実に打ちひしがれぬよう、みんなうまいことやっているのだ。

◆元女優を隠すのは危険

 ちなみに、ビデオにたった1本出ただけでは先方にバレないだろうから、経歴を隠してオーディションに応募したり、売り込みを掛けるパターンもあるっちゃある。けれども今の時代はどんな形で過去がめくれるかわからないので、「元女優」な限り危ない橋は渡らないのが懸命だ。

 よって、ほとんどの人が嘘をつかずに活動を続け、「元セクシー女優でもいいですよ〜」と返事をくれたクライアントと仕事をするのが普通の流れである。

◆元女優がメディアで成功を収めることの懸念点

たかなし亜妖さん きっと現役・元セクシー女優が当たり前のようにテレビに出られて、諸々のルールを取っ払えるくらい地位が向上すれば「完全なる成功」と言えるのだろう。実際にセクシー業界に身を置き、卒業後に芸能人として活躍した例もあるのだから。

 しかし私としては、こういった制限が緩くなることにはあまり賛成ではない。やっぱりどこまでいってもオトナ向けの仕事をしていたことに変わりはないので、ちょっとぐらいアンダーグラウンドさが残っていてもいいと思っている。

 どんな人でも、多少なりとも偏見の目を向けられるのを承知の上で業界入りしているはずだ。「認めてよ!」と大きすぎる声で世間を説得させるのは、ちょっと違うかなと思っている。

 それにセクシー女優があちこちに出まくれば、“特殊な仕事をしている人”としての価値がなくなる。つまりはどういうことかと言うと、大多数に認められてしまえば見事にギャラが下がるだろう。水商売の賃金が高いのは世間を逆走するからであって、“みんなと一緒”になってしまえば独特の考えや概念が通用しなくなる。

 だからこそ私は、セクシー女優のメディア進出については現状維持でいいと思う。こんなことを言ったら現役女優の子やプロダクションから非難轟々だろうけど、結論としては「既存のフィールドで努力する」のがベストではないだろうか。

文/たかなし亜妖

―[元セクシー女優のよもやま話]―



【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。