61万部突破のベストセラー「80歳の壁」(幻冬舎)ほか、著書が累計100万部超えの老齢医学が専門で、精神科医の和田秀樹氏がパーソナリティーを務めるラジオ番組「恋せよ!オトナ」(文化放送 日曜早朝4時〜)が4月からスタートした。50代からのハッピーな年の重ね方を伝える忖度ナシのラジオだ。番組プロデュース&テーマソングを制作する藤岡藤巻の2人と共に、番組への意気込みと等身大の“思秋期”について熱く語る。

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藤巻 番組のきっかけは和田先生の3つの夢でしたね。

和田 僕の3つの夢は、映画の監督をすること、「徹子の部屋」に出ること、ラジオのディスクジョッキーをやることで、先の2つはかなって、残りがラジオでした。受験勉強しながら深夜ラジオを聴いていた世代ですから、ラジオに思い入れがあるんですよね。

藤巻 そんなとき、文化放送がこの4月から「オトナのホンネ」というキャッチフレーズで中高年に向けてアプローチしていくというので、ピタリとハマった。

和田 団塊の世代の人たちは若い頃からラジオに親しんでいて、今も聴いている方が多い。そんな皆さんに若い頃を思い出してもらいたいと深夜放送チックな番組にしました。音楽も大滝詠一やあのねのねなど、懐かしさの中にかなりパンチのきいた歌詞の曲をセレクトしたり、クセのある内容にしています。

藤岡 僕は飲み会の席で和田先生の本をみんなに見せているんですよ。食も控えるのが美徳、女性に興味を持つなんて恥ずべきみたいな風潮で「80歳の壁」は僕の主張を医学的に説明してくれた本ですから。藤巻もそうです。藤巻はスタジオジブリの鈴木さんのエッセーに“仕事をしない”“お気楽”な人って書かれているヤツなんですが、和田先生が無理をするな、頑張るな、食いたいものを食えって書いてあって、藤巻の人生全肯定なんです。

藤巻 先生の本のタイトル全部好きだもん。

藤岡 自分を甘やかしてくれるんですから。

藤巻 精神科医が言うんだから間違いない!

藤岡 和田先生のラジオのトークは、我々世代に目からウロコなことも多いですね。

藤巻 コレステロールを減らさなくていい、って話していて。

和田 コレステロール値を下げなければいけないのはアメリカ人の話なんです。アメリカ人の死因は長年心筋梗塞がトップで、コレステロールを取り過ぎていた。だから、アメリカの医者がコレステロールを下げようと提唱して、それを日本の医者たちもうのみにしたんです。ところが日本は死因のトップががんで、2人に1人ががん、全くタイプが違います。コレステロールを取らないと免疫力が下がるので、がんには良くない。心筋梗塞よりもがんになるのを避けたい日本人はコレステロールを取ったほうがいいんです。

藤巻 健康診断で言われていることと真逆で驚きました。

「(高齢者は)恋もしないし、そういう話すら憚られますね」

和田 医者って、上の先生に言われたことは疑わないし、アメリカの医学常識が日本と同じだと思っているんですよ。でも、アメリカ人とは食べ物も違うし体格も違う。日本は男性ホルモンが足りないから、セックスレスの夫婦も多いし、ある年代になったらEDが当たり前になる。日本は“枯れる”ばかりです。

藤岡 恋もしないし、そういう話すら憚られますね。

和田 そこをラジオで覆していきたいと思っています。欧米だとポルノが解禁されているのに日本はいまだにモザイク映像なのはいかがなものか。スウェーデンは69年にポルノを解禁していますが、当時、一番高齢者が多いから、エッチなことも必要だと国が認めました。今回のコロナ騒ぎでも、スウェーデンは高齢者を家に閉じ込めると歩けない人が増えちゃうから集団免疫路線をとったのに、もっと高齢化が進んでいる日本が老人を閉じ込めているという、政治のバカさ加減含めて、スケベなことが若返りのために悪いことじゃない、とラジオを通じてみなさんに伝えたいと思います。

藤岡 同世代の仲間も、若い頃は合コンばっかりやってたのに、「もう店じまいで」って言う。70歳超えて女性に目がいくのは良くない、って“枯れたフリ”するんですよ。

藤巻 「年甲斐もなく」って言葉を使うよね。

和田 年甲斐もなくって、自分で自分を老化させてるんです。実年齢に自分を合わせていく「年齢呪縛」です。免許返納だって、75歳でも元気で運転している人はいるわけで、全員に強制するのはある意味、呪縛です。

藤巻 ジブリの鈴木敏夫さんなんて75歳で僕より元気ですよ。

和田 僕ら精神科医の仕事は“患者さんを楽にさせる”ことだから、そういう呪縛こそ外したい。

藤巻 自分でまだまだ若いんだ、って思っている僕たちにとって、和田先生の本は印籠になります。

藤岡 血圧を下げる降圧剤を飲むとEDになるってことは、医者も枯れさせようとしているってことですよね?

和田 長生きさせる可能性はゼロではないんだけど、「元気」という面ではどうか。たいがい血圧高いほうが元気だし、血糖値も高めのほうが脳に糖が満ちているわけで、アクティブになれる。ひょっとしたら長生きできるかもしれないけど、医者が言った通りにしていると、結果的に枯れる。それってQOLとしてどうなのかという疑問が生じます。

藤岡 生き方の問題ですよね。

和田 長生きできないかもしれないけど“好きに生きる”っていう選択肢もあるはずなんですよ。それこそが尊厳死なんです。

藤巻 ウチの家系はコレステロールが高いんだけどオヤジは何の治療もしないで103歳まで生きたんです。ところがウチの姉は医者の言う通りにコレステロールを下げる薬を20年飲み続けて、この前肝臓がんになった。うちはがん家系でもないのにですよ。まったく和田先生が言うことが符合するんです。

和田 薬で免疫力が下がった可能性はありえますね。

藤岡 藤巻の知識って身の回りのことだけなんですよ。

藤巻 ジブリ映画と同じ、半径5メートル以内で生きてるんで(笑)。でもほとんどの病気が遺伝に関係するともいいますよね。

和田 いっぱい高齢者を見ていると、親が長生きだったら多少いい加減な暮らしをしても長生きしますしね。いい意味でも悪い意味でも遺伝子には勝てない、ただ、遺伝子なりに生きるという選択肢もあります。

藤岡 与えられた中で生きるわけですからね。

和田 楽しむか楽しまないかは選べます。生きていても、うつ病はとてもつらいんだよね、何考えても気分乗らないし。長生きよりも、うつにならないほうがよっぽどいいと僕は思います。

藤岡 そう思ったら高コレステロール食でも楽しい人生のほうがいいですね。 =後編につづく

(構成=岩渕景子/日刊ゲンダイ)

▽和田秀樹 1960年大阪府生まれ。老齢医学・精神科医。学生時代から塾を起業、受験本を出版するなどマルチタスクで活躍。2022年に出版した「80歳の壁」(幻冬舎)は61万部超えで話題に。

▽藤岡藤巻 共に1952年、東京都生まれ。74年に小学校からの同級生である藤岡孝章、藤巻直哉らでバンド「まりちゃんズ」を結成してデビュー。2004年、会社員の傍ら藤岡と藤巻の2人で「藤岡藤巻」として活動再開。08年に大橋のぞみとトリオで歌った「崖の上のポニョ」で日本レコード大賞特別賞を受賞。