これでは高齢者の生活は苦しくなるばかりだ。

 75歳以上の高齢者が支払う健康保険料が4月から上がる。対象は年金収入が年211万円を超える約540万人。75歳以上の約3割にあたる。来年4月からは対象が広げられ、年金収入153万円の高齢者の保険料もアップする。試算によると、年金収入200万円超の人は、年3900円負担が増えるという。

 75歳以上の高齢者が加入する「後期高齢者医療制度」は、現役世代の保険料によって支えられている。保険料をアップするのは、現役世代の負担を軽くするためだ。

■「保険料」と「窓口負担」の二重の負担増

 しかし、ここ数年、高齢者の負担は増える一方だ。すでに75歳以上の高齢者は、窓口負担も増やされている。原則1割、現役並みの所得がある人は3割だったのに、2022年から一定以上の所得のある人は2割に引き上げられた。さらに岸田政権は、少子化対策の財源確保のために、自己負担割合を現行の原則「1割」から「2割」に引き上げる方針だ。「保険料」と「窓口負担」の二重の負担増である。

 そのうえ、4月以降、年金の「実質支給額」も減額されてしまう。厚労省は、4月から厚生年金支給額を夫婦2人の標準世帯で月額6001円、国民年金(満額ケース)も1人月額1758円引き上げる。

 額面上、支給額はアップされるが「マクロ経済スライド」が適用されるため、実質額は減ってしまうのだ。「マクロ経済スライド」は、物価が上昇した時は、年金の引き上げ幅を物価上昇率より最大で0.9%低く抑える年金減額の仕組みだ。物価が下落した時は発動されない。

 2023年の物価上昇率は3.2%だった。物価に合わせると、厚生年金は7183円アップしないと生活水準を維持できない。6001円のアップでは、年間1万4184円も足りなくなってしまう。国民年金も年間4500円の実質減額となる。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。

「高齢者の多くは、不安を強めているはずです。生活を切り詰め、消費も減らしています。以前、話題になった2000万円問題も消えてしまった。2000万円問題は、老後は、支出に収入が追いつかなくなるから、生活を維持するためには2000万円の蓄えが必要というものでした。ところが、高齢者が生活費を切り詰め始めたため、2000万円も必要なくなった。日本の高齢者は、『現役世代に迷惑をかけるな』『少子化対策に協力しろ』と迫られると、文句を言いませんが、限界がありますよ」

 自民党議員が裏金で潤い、高齢者が喘ぐ構図である。