厚生労働省は9日、マイナ保険証普及のため、新たな医療機関向けの支援策を導入することを明らかにした。

 マイナ保険証の利用者を増やした分に応じて、診療所・薬局に最大10万円、病院には最大20万円を支給する方針。患者にマイナ保険証の利用を呼びかけることを条件とするが、細かい制度設計については10日、発表される。

 マイナ保険証の利用は一向に進んでいない。厚労省によると、利用率は昨年4月の6.3%をピークに下がり続け、昨年12月は4.29%まで落ち込んだ。今年に入ってからは微増傾向ではあるものの、3月は5.4%と依然伸び悩んでいる。

 全国保険医団体連合会(保団連)事務局次長の本並省吾氏が言う。

「ほとんどの患者さんがマイナ保険証を持ってこないのが現状です。高齢者からすれば機械の操作が複雑ですし、顔認証のエラーやデータの紐づけミスは現在でも確認されている。トラブルを避けるためにもマイナ保険証の利用を控える人が多い。従来の保険証でも資格確認はスムーズに行えるため、現場ではマイナ保険証のメリットは全くありません」

 マイナ保険証普及を狙った医療機関向け支援金制度は、今回が初めてではない。今年1月には、利用1件あたり20〜120円を支給する制度を実施。それでも思うように利用率は上がらなかったのだろう。

■何のメリットないのに税金バラマキ

 厚労省は新たな支援策の導入について「医療機関にとっては受け取る金額が増える」と説明している。もっと大きなニンジンをぶら下げようということらしい。

「1月の支援金で思うような効果がなかったにもかかわらず、新たに支援金を導入するのは問題です。マイナ保険証が不便だから誰も利用しないという根本原因を、国は全く認識していません。何のメリットもないマイナ保険証のために、われわれの税金がこんなふうに使われていいのでしょうか。それに、マイナ保険証関連のトラブル対応にかかった費用は、10万円や20万円で賄えるものではありません」(本並省吾氏)

 金をバラまいたところで、問題は解決しない。