巨人の野手では2001年の阿部慎之助監督(45)以来の快挙だそうだ。ドラフト3位・佐々木俊輔(24=日立製作所)が当確となった「新人の開幕スタメン」のことだ。

 オープン戦は規定打席にあと「1」届かなかったものの、堂々の打率.400と打ちまくった。174センチと上背はないが、遠投110メートルの強肩、50メートル走6秒ジャストの俊足を生かした守備範囲の広さが武器。将来的な目標に「トリプルスリー」を掲げ、「足が一番の武器」と自信を見せる。

 中学時代に所属した羽村シニアの原島佑輔監督(37=当時はコーチ)がこう振り返る。

「チームのグラウンドは東京都の羽村市にあるんですが、佐々木は隣の日野市から自転車で通って来ることがあって、すごい根性しているなと感心していました。だって、15キロから20キロ近く距離がありますから。1時間以上はかかったと思います。アップダウンもあるので、これで足腰が鍛えられたのかもしれません。体は大きくないですが、足、肩、バネ、パンチ力があって、強豪校に進学してプロも視野に入ってくるかもというくらい目立っていました。ただ、最も印象的だったのはガッツです」

 ある大会で羽村シニアは初回に大量失点を喫した。原島監督が続ける。

「みんな意気消沈してシーンとなる中で、佐々木だけが『逆転しようぜ!』とひたすらチームメートを鼓舞し続けた。そのかいあってチームはあと一歩のところまで追い上げた。主将ではありませんでしたが、誰よりも責任感が強かった。チームとして目立った実績はなくても、佐々木の名前はとどろいていて、帝京の前田三夫先生(当時監督)が直々に練習を見に来て『ぜひ佐々木君を帝京に』と即決してくれました」

 帝京から東洋大、日立製作所とアマチュア野球のエリートコースを歩んだ。とはいえ、各球団のスカウトは佐々木の躍進に驚きを隠せない。社会人野球関係者は「日立製作所に届いたドラフト前の調査書は、巨人を含めて2球団ほど。だから、佐々木は指名漏れも覚悟していたようです」と証言。巨人の球団関係者もこう苦笑いする。

「レギュラーじゃなくても、守備や走塁から出場してチャンスをつかめるタイプという評価で、3位指名に踏み切った。守備固めや代走で出る時は、勝ってる展開が多い。対戦する投手は敗戦処理というか、負けている試合に投げる投手だから、そこそこ打率も残せるだろうと。まさか開幕スタメンなんて想定外です」

 要するに、球団の期待を大きく上回る活躍ぶりということ。他球団のスカウトに至っては「巨人にやられた」と唇をかんでいるという。

「見逃し三振をしても堂々とベンチに戻ってくる。いい根性をしている」とは巨人ナイン。阿部監督以来の23年ぶりの快挙も、この男なら平常心で戦えそうである。

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 例年にない期待感をかもす阿部巨人。OP戦最終戦は4点のリードからリリーフ陣が炎上して逆転負けという不穏な幕切れだったものの、阿部監督は泰然自若に構えていて、なんなら自信すらも透けて見える。

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