日本高野連は18日、今春から導入された新基準の低反発バットに関して、「SG」マークを認証する製品安全協会の基準に満たないバットが今春のセンバツ大会などで市場に流通していたことを明らかにした。

大阪市内で取材に応じた日本高野連の井本亘事務局長(52)は「極めて重大な違反。強く抗議をさせていただいた」と厳しく指摘した。

全日本野球バット工業会から情報提供があり、違反が発覚した。株式会社SSプロダクト(本社・石川県金沢市)が製造した3351本のバットが対象。同社に製造を委託していたザナックス、三共スポーツ、ハイゴールド、イソノ、ボルテカの5社から販売されたバットで、各メーカーが自主回収を進めている。

反発性能の規定は打球部の圧縮試験を行った際に、1ミリを変位させる力が6000N(ニュートン)以上が条件。この数値が高いほど反発力は抑えられるが、今回の不適合バットは5300〜5500Nで変位が確認された。打球部の肉厚は4ミリ以上が規定だが、3・5〜6ミリ程度しかなかった。適合バットよりも反発性能が高く、打球速度が上がりやすい“飛ぶバット”が流通してしまった。

SSプロダクトは「SG」の認証を22年9月ごろに受け、23年夏ごろに中国の工場で量産体制に入ったという。波多陽祐代表取締役は「認証から生産までに1年ほどの間があり、その間に工場側が少し違った解釈というか、間違ってしまった」と説明して謝罪。製品安全協会は同社に出荷停止を命じ、5月31日までに改善に応じない場合はバットの工場登録を取り消す。

日本高野連は全国の加盟校に新基準のバットを3本ずつ、計約1万2000本を配布中で、不適合バットも2510本含まれていたと説明。今春のセンバツでも出場32校中5校で同バットが使われたというが、同大会での記録は有効と認める。練習を含めて19日からの使用禁止を各地区の高野連に通達するなど、厳しく対応する。【古財稜明】

▽製品安全協会・高島竜祐理事長(認証したことを謝罪)「SGマーク制度の信頼性を損なうような事態で、大変遺憾に思っております。また、日本高野連、関係者の皆さまにご心配とご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません」

◆低反発バット 「打球による負傷事故(特に投手)の防止」と「投手の負担軽減によるケガ防止」などが目的で、今春のセンバツ大会、春季都道府県大会から導入された。バットの太さは最大径は67ミリから64ミリと細くなった。打球部の肉厚は従来の約3ミリから4ミリ以上に設定。バットがへこむことで強い反発力を生み出す「トランポリン効果」が減衰し、打球の初速が3・6%落ちることが実証されている。今春のセンバツでは大会本塁打が前回の12本から3本に減少した。

◆SGマーク SGはSafe Goods(安全な製品)を意味する。一般財団法人・製品安全協会が定めたSG基準に、製品が適合していると同協会が認証したことを示す。適合した製品にはSGマークがつけられる。