<大相撲夏場所>◇8日目◇19日◇東京・両国国技館

67年ぶりの快挙が現実味を帯びてきた。新三役の小結大の里(23=二所ノ関)が、西前頭筆頭大栄翔との1敗対決をはたき込みで制し、勝ち越しに王手をかける7勝目。平幕の宝富士と並び、優勝争いのトップを守った。

新三役優勝は昭和以降、57年5月場所を、同じく新小結で制した安念山(後の元関脇羽黒山)1人だけ。3日目から6連勝を飾り、勢いに乗ってきた。

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パワーやうまさだけではなかった。大の里が抜群の反射神経と俊敏さを見せつけて、6連勝を飾った。立ち合いから大栄翔の突き、押しに土俵際まで後退。相手が一気に押し出そうと、勢いよく飛び込んできたところを、ヒラリと右にかわしてはたき込んだ。「落ち着いて体も反応した。受けたけど足が動いていた」。横綱照ノ富士のパワー、霧島と琴桜の両大関のうまさに対抗して破ってきたが、スピードのある大栄翔を上回る速さも披露。手のつけられない状態に突入した。

「2日目に負けてから修正できている」。今場所唯一の黒星は前頭高安の圧力に引き、呼び込んで慌てて喫したもの。最後は俵を伝って回り込もうとしたが、足がもつれて転んだ。やや足首をひねっており「危ない負け方」と、1歩間違えればケガする取り口を猛省。前に出るという基本と、この日のように土俵際に詰まっても、思い切り良く横に動く。ケガしない相撲は、自然と白星を運んできた。

1敗で並ぶトップは、宝富士と2人だけになった。安念山以来、67年ぶりの新三役優勝へ、また1歩近づいた。ただ大の里は6連勝にも「気にしていない」と涼しい顔。新入幕から2場所連続で優勝争いし、重圧もなく、不安要素はなくなってきた。【高田文太】