<欧州選手権(ユーロ2024):スイス2−0イタリア>◇29日(日本時間30日)◇決勝トーナメント1回戦◇ベルリン

 

前回王者イタリアがあえなく散った。この日戦ったベルリンのオリンピアシュタディオンは、2006年ワールドカップ(W杯)でイタリアがジダンのいるフランスをPK戦の末に破り、4度目の世界一に輝いた場所だった。そんな栄光の記憶が薄れるほど、何もできないままに敗れ去った。

英BBCで解説者を務めるガリー・リネカー氏は「私の生涯で、これほどひどいイタリア代表を目撃したことはないだろう」と辛辣(しんらつ)にコメントした。

同じくBBCで解説する元イングランド代表主将のアラン・シアラー氏も「イタリアのひどさには本当にショックを受けた。スイスは試合を支配し、イタリアにチャンスを与えなかった。脅威がなかったし、特にフォワードのポジションが悪かった」とバッサリと切り捨てた。

これまでのイタリアと言えば、技術と戦術眼にたけたピルロのような選手や、ガットゥーゾのような闘志あふれる選手、またはマテラッツィのような狡猾な選手がおり、世界のスター選手たちを無力にしてきた。それだけに、これだけ凡庸な「アズーリ」は見たことがない、と専門家たちの失望の言葉が連なる。

昨年夏にマンチーニ監督(現在はサウジアラビア代表監督)が辞任し、ちょうど1年前にナポリをマラドーナ在籍時以来となる33年ぶりのリーグ優勝に導いた名将スパレッティ監督を招聘(しょうへい)した。しかし準備期間が短かったことも災いし、名将と呼ばれる男は何も成果を出せなかった。

3年前の欧州選手権決勝のイングランド戦に先発した選手のうち、この日先発したのはGKドンナルンマ、DFディ・ロレンツォ、MFバレッラ、FWキエーザの4人だけ。W杯カタール大会出場を逃し、大きく変わったチームだったが、今大会の4試合ではアルバニアに2−1と勝利した後、スペインに0−1で敗れ、クロアチアに辛うじて1−1で引き分けただけ。そこへスイスに完敗するという、厳しい現実を突きつけられた。