バドミントン男子シングルスで元世界ランク1位の桃田賢斗(29=NTT東日本)が18日、都内で会見を開き、日本代表を引退すると発表した。今後も国内を中心に現役を続けるが、代表活動は27日開幕の国別対抗戦トマス杯(中国)が最後となる。体力面と精神面が限界に達したと明かし「世界一を目指すところまではいけない」と決断した。

紆余(うよ)曲折の代表人生を振り返る表情はさわやかだった。「ほとんどがしんどい時間だったが、充実した時間だった」。18年から世界選手権で2連覇したが、20年1月には遠征先のマレーシアで交通事故に遭遇。代償は大きく、羽根が二重に見えることもあった。「なんで自分なんだろう」と嘆くこともあったが、心の支えとなったのはファンの存在。16年に発覚した違法賭博問題から復帰後は「応援されないのでは」と思ったが、実際には多くの人から声援が届いた。

「勝つだけが全てじゃない」。パリ五輪選考レースは厳しい状況が続いたが、ファンへ恩を返すべく、決して諦めなかった。今後は競技を続けながら、子どもたちとの交流活動などにも尽力する。「まだまだバドミントン界に貢献したい」。桃田だからこそ伝えられる思いを、未来の世代へつないでいく。【藤塚大輔】

<桃田の主な代表人生>

◆15年8月 世界選手権で日本男子初の銅メダル。

◆16年4月 違法賭博問題により、無期限の出場停止処分。同年リオデジャネイロ五輪の出場を逃す。

◆17年5月 1年2カ月ぶりに復帰。

◆18年8月 世界選手権で日本男子初優勝。同9月に世界ランク1位。

◆19年8月 世界選手権で2連覇。

◆20年1月 マレーシア・マスターズの遠征先で桃田らを乗せた車がトラックに衝突。運転手は死亡し、桃田も全身打撲や右眼窩(がんか)底骨折などの重傷を負った。

◆21年7月 東京五輪で1次リーグ敗退。

◆24年3月 各国最大2枠のシングルス代表を懸けたパリ五輪選考レースで日本男子6番手の48位(現在同7番手の52位)となり、代表入りの可能性が消滅。