スポーツ界で活躍する静岡県人を紹介する企画「静岡人魂」。今回は旧清水市(現静岡市清水区)出身でバスケットボール教室「A’z(エーズ) basketball school」を主宰する元Bリーガー大沢歩氏(33)の新たな取り組みを紹介する。

◇  ◇  ◇

「より多くの子どもたちに、食の大切さとスポーツのつながりを知ってもらいたい」。大沢氏は、子ども食堂(無料または安価で食事を提供する社会活動)を利用する子どもたちと、スポーツとの結びつけに取り組んでいる。

「すべての子どもたちに、平等にチャンスを与えたい」という信念のもと、食とスポーツで子どもたちを元気にしていきたいという思いがある。「力の源はやっぱり食」と、食事の重要性を訴え、4月下旬には地元の子ども食堂運営者と話し合いを持った。基礎知識を深め「子どもたちが不自由なく、食とスポーツに取り組める環境をつくりたい」と決意を新た。同時に課題も知り、「バスケを通じて解決に協力できたら」と年内スタートを目標に内容を煮詰めていく予定だ。

現役を引退して10カ月。現在は地元企業のフジ物産に所属し、アスリートのセカンドキャリアをサポートするAth−up(アサップ)事業を担当している。バスケ一筋で憧れのプロになり、たくさんの喜びを体験したが、多くの苦労も味わった。大学卒業寸前で契約したチームから内定を取り消され、ようやく所属したチームは球団消滅。ケガにも苦しんだ。そんな経験を現職で生かしながら、引退したアスリートたちに寄り添う。

昨年10月に開校したバスケットボール教室は、順調に生徒数を増やしている。当初は、1年で小中高生50人ほどを集める予定だったが、先月に80人を突破。「年内には100人を目標にしている」という。たとえ人数が増えても、子どもたちにバスケやスポーツの楽しさを伝えるという信念はもちろん変わらず、「バスケットを中心にスポーツの裾野を広げる活動はずっと行っていく」と力を込める。地元へ恩返しする意味も込め、子どもから大人まで支え続ける覚悟だ。【倉橋徹也】

○…大沢氏はスクール事業の一環として、低学年用のバスケゴールとボールの寄贈をスタートさせた。その第1弾として、地元さくら幼稚園にゴール2本とボール5個を贈呈。シュート体験などでふれ合い、園児らの心をわしづかみにした。「ここは自分が小学校に通う際、毎日見ていた幼稚園。最初の寄贈はここに決めていた」と喜ばせた。当初30分で終わる予定だった贈呈式は大盛り上がりで、約1時間スポーツの楽しさを伝えた。大半の園児がバスケ初体験。年長男児の1人は「もっとやってみたい。ドリブルする大沢さんがかっこよかった」と目を輝かせた。寄贈は幼稚園や保育園を対象とし、本年度はあと5、6カ所に行う予定という。

◆大沢歩(おおさわ・あゆむ)1991年(平3)4月14日、旧清水市生まれ。小3時に入江ミニバス少年団で競技を開始。静岡学園高−専大。PGとして、15〜16年bjリーグ広島、16〜19年B2香川、19〜21年B3静岡、21〜23年同岩手で活躍し、昨季限りでプロを引退。177センチ、75キロ。右利き。血液型O。家族は妻と1男。