バレーボールの黒鷲旗全日本男女選抜大会第4日は4日、大阪市のAsueアリーナ大阪で男女の準々決勝があり、4強が出そろった。女子は2013年度大会以来の優勝を狙う久光スプリングスがJTマーヴェラスにセットカウント3―1(25―21、25―22、30―32、25―17)で勝ち、準決勝に進出した。5日はデンソーエアリービーズと対戦する。

 久光のスターティングメンバー(第1セット)は、中川美柚(24)、北窓絢音(19)、万代真奈美(25)、吉武美佳(21)、平山詩嫣(23)、濵松明日香(25)、リベロ・高橋葵(18)。

 久光が「4度目の正直」でJTを倒した。今季VリーグのレギュラーラウンドとVカップで計3戦全敗を喫していた難敵を相手に「サーブ」と「ブロック」で狙い通りの展開に持ち込み、撃破した。サーブの効果率(サーブで相手のレシーブを崩した割合を数値化したもの)はJTの7・3%に対して11・5%。ブロックポイントはJT(8得点)の約2倍となる15得点を計上した。「大会も4日目に入り、体力的にも厳しい中、選手たちは最後までボールに食らいつき、負けないバレーをしてくれました」。会心の白星に、酒井新悟監督の声がうわずるのも無理はなかった。

JT戦でプレーする久光の西村弥菜美(手前)と高橋葵(写真提供:SAGA久光スプリングス)

 久光が今季、ここまでJTに勝てなかった要因の一つが、195センチの長身を誇るサンティアゴの存在だった。レギュラーラウンド22戦無敗に貢献し、スパイク賞とブロック賞を獲得した強力なミドルブロッカーに久光は苦しめられてきた。「今日も出場してくることは想定していました。サンティアゴ選手が前(前衛)にいるときこそ、サーブで崩して彼女を極力使わせないこと。仮に使わせたとしても、コンビを少しでも乱そうと」。酒井監督が明かしたプランは的中。アタックでは18打数で8点を決められながら、スパイクミスを2本誘った。第4セットでは23―16から、平山がサーブで攻めて、ブロックを絞りやすくしたところでサンティアゴのスパイクを濵松がシャット。相手の強みを完璧に封じて、勝利をものにした。

【次ページに続く】「強固な壁」

 「(試合を通して選手個々の)サーブが効いていたので、どのタイミングで(サンディアゴを)使ってくるのか、何となく伝わってきました。私自身、前よりも(ブロックで)手がしっかりと出るようになっているからこそ、今日は貢献できたかなと思います」と振り返ったのは平山だ。自身のブロックポイントはチーム最多の5点を記録。吉武が4点、北窓も3点をマークするなどチーム全体で「強固な壁」になった。

 「JTさんにはリーグ、Vカップと勝てていなくて、悔しい気持ちを味わっていました。向こうは手を抜かずに、きっちり準備してやってくると思っていたので、こっちも負けないように意識していました」。平山がスタッフを含めた全員の思いを代弁した。今大会は1次リーグで筑波大に敗れ、東レアローズには2セット連取からのフルセット勝利。苦しみながらの4強入りで、頂点が見えてきた。「明日もストロングポイントである、サーブからのトータルディフェンスで粘り強く戦いたい」。酒井監督が言い切った。昨年12月の天皇杯・皇后杯全日本選手権では決勝でNECレッドロケッツに屈し、Vリーグではプレーオフで1勝もできずに不本意な最終順位(6位)に終わった。今季追求してきたバレーを結果で示すラストチャンス。一丸となって「黒鷲旗」をつかみ取る。
(西口憲一)