去年、記録的なサケの不漁となった新潟県村上市。4月11日、稚魚の放流式が行われましたが、その裏では卵の確保に向けた県内・県外からの支援の輪が広がっていました。

【記者リポート】
「こちらの水槽をのぞいてみると、元気いっぱいに泳いでいるのはサケの稚魚です。これから雄大な三面川に放流されます」

11日、サケの稚魚の放流式が行われたのは村上市の三面川です。

三面川では毎年サケが遡上するとともにふ化事業が行われていて、今年は約520万尾の稚魚が放流されます。

こうしたサケに関する歴史は1000年以上にわたるというまさに「サケの街」ですが…

【三面川鮭産漁業協同組合 佐藤克雄 組合長】
「きょう放流するサケの稚魚、特別な思いのあるサケの稚魚になります」

去年、ある異変が起きていました。

【記者リポート】
「こちらの水槽、例年であれば30匹ほど泳いでいるということですが、今は数えられるほどしかおらず、かなり少なくなっています」

襲ったのは、サケの記録的な不漁です。

三面川鮭産漁業協同組合では、例年ウライ漁などで2万匹ほど採れるサケが去年はわずか3500匹に。ふ化させる卵が十分に確保できず、伝統が途絶えかねない事態となりました。すると…

【三面川鮭産漁業協同組合 佐藤克雄 組合長】
「今年はもう無理かなと思って心配していたが、全国のサケを扱うふ化場の方々から『なんとかサケを育ててください』と…」

組合に届いたのは、県内・県外のふ化場からの温かい支援。各ふ化場から約400万粒の卵が集まり、事業を継続することができました。

【児童】
「本当にちっちゃいイクラみたいな卵から育てて…」

この日の放流にはサケを卵から稚魚にまで育てた市内の児童なども参加。そして…

【児童】
「いってらっしゃ〜い」

今年の最後の放流となったこの日は約3万匹の稚魚が自然界へ送り出されました。

【児童】
「広い海に旅立つんだなと思いながら、元気でねという気持ちで流した」

【児童】
「お別れは寂しかったけど、また大きくなって帰ってきてほしいなと思った」

放流した稚魚が成長して戻ってくるのには約5年がかかります。

【三面川鮭産漁業協同組合 佐藤克雄 組合長】
「我々はいかなる条件の中でも、やっぱり決められたサケを育てて、海に帰し続けることは決意している。ぜひ無事で戻ってきてほしいとそれだけを願う」

三面川では10月にサケ漁が始まります。