JRA・GIの皮切りとなるフェブラリーステークスの前に、年間の平地GI全24レースの勝ち馬を予想するこの企画。今年で4回目の実施となる。過去3年を振り返ると、初挑戦の2021年は24レース中5レースで的中。2022年の的中は2レースのみ。それが2023年は7レース的中と巻き返した。

 今年は、クラシックも古馬戦線も、主役不在の大混戦の様相を呈している。それだけに難しそうだが、過去3年同様、寸評と自信度(A、B、C)をつけて、勝ち馬を予想したい。

クラシック戦線の本命は?【フェブラリーS〜皐月賞】

フェブラリーステークス(2月18日、東京ダート1600m)
ウィルソンテソーロ(牡5歳、父キタサンブラック、美浦・小手川準厩舎)
 昨年のチャンピオンズカップと東京大賞典でともに2着。レモンポップとウシュバテソーロが中東遠征で不在のここなら。(A)

高松宮記念(3月24日、中京芝1200m)
ママコチャ(牝5歳、父クロフネ、栗東・池江泰寿厩舎)
 昨年のスプリンターズステークスでGI初制覇。鹿毛だが、白毛の女王ソダシの全妹。この牝系は、得意の距離で長く強さを発揮する。(B)

大阪杯(3月31日、阪神芝2000m)
ソールオリエンス(牡4歳、父キタサンブラック、美浦・手塚貴久厩舎)
 昨年の皐月賞で見せた豪脚は本物。完成は今年の秋以降かもしれないが、現時点でも2000mなら現役最強クラス。(B)

桜花賞(4月7日、阪神芝1600m)
アスコリピチェーノ(牝3歳、父ダイワメジャー、美浦・黒岩陽一厩舎)
 昨年、3戦3勝で阪神ジュベナイルフィリーズを制し、2歳女王に。勝負強さは父譲りで、父以上の切れ味が身上。(B)

皐月賞(4月14日、中山芝2000m)
ジャスティンミラノ(牡3歳、父キズナ、栗東・友道康夫厩舎)
 好メンバーの共同通信杯を完勝。ポジションを取りに行っても折り合えるのはクラシック向き。(A)

「これ強いよ」鹿戸調教師が興奮した逸材【天皇賞・春〜日本ダービー】

天皇賞・春(4月28日、京都芝3200m)
ドゥレッツァ(牡4歳、父ドゥラメンテ、美浦・尾関知人厩舎)
 昨年、5連勝で菊花賞を優勝。大外から出して行って折り合い、直線で突き抜けた。世代最強はこの馬か。(A)

NHKマイルカップ(5月5日、東京芝1600m)
ジャンタルマンタル(牡3歳、父パレスマリス、栗東・高野友和厩舎)
 昨年、3連勝で朝日杯フューチュリティステークスを制するも、共同通信杯では掛かって2着。マイルがベストか。(B)

ヴィクトリアマイル(5月12日、東京芝1600m)
リバティアイランド(牝4歳、父ドゥラメンテ、栗東・中内田充正厩舎)
 ドバイからの帰国初戦がどこになるか読めないが、国内で走るレースのほとんどを勝ちそう。(A)

オークス(5月19日、東京芝2400m)
レガレイラ(牝3歳、父スワーヴリチャード、美浦・木村哲也厩舎)
 昨年のホープフルステークスで、牡馬相手に優勝。皐月賞は厳しそうだが、牝馬同士のオークスなら最有力。(A)

日本ダービー(5月26日、東京芝2400m)
トロヴァトーレ(牡3歳、父レイデオロ、美浦・鹿戸雄一厩舎)
 新馬戦を勝ったとき、鹿戸調教師が「これ強いよ」と珍しく興奮していた。エフフォーリアで惜敗した悔しさをこの馬で晴らす。(B)

凱旋門賞馬の弟は「距離が延びてよさそう」【安田記念〜菊花賞】

安田記念(6月2日、東京芝1600m)
ソウルラッシュ(牡6歳、父ルーラーシップ、栗東・池江泰寿厩舎)
 過去2年、13着、9着に敗れているが着順ほど差はない。富士ステークスで2着になっているのだから東京も大丈夫。(C)

宝塚記念(6月23日、京都芝2200m)
タスティエーラ(牡4歳、父サトノクラウン、美浦・堀宣行厩舎)
 昨年のダービー馬。ここを勝てば史上3組目の父仔制覇となる。(B)

スプリンターズステークス(9月29日、中山芝1200m)
マッドクール(牡5歳、父ダークエンジェル、栗東・池添学厩舎)
 昨年は激しく叩き合い、鼻差の2着。テンからスピードがある、典型的なスプリンター。(B)

秋華賞(10月13日、京都芝2000m)
アルセナール(牝3歳、父エピファネイア、美浦・木村哲也厩舎)
 ナミュールの半妹。デビュー2戦目のクイーンカップで不利がありながら2着。素質は相当なもの。(B)

菊花賞(10月20日、京都芝3000m)
シンエンペラー(牡3歳、父シユーニ、栗東・矢作芳人厩舎)
 凱旋門賞馬ソットサスの全弟。新馬、京都2歳ステークスを勝ち、ホープフルステークスで2着。切れないぶん、距離が延びてよさそう。(B)

リバティは「アーモンドアイ級」になれるか【天皇賞・秋〜ジャパンC】

天皇賞・秋(10月27日、東京芝2000m)
スターズオンアース(牝5歳、父ドゥラメンテ、美浦・高柳瑞樹厩舎)
 一昨年の牝馬二冠馬。昨年の有馬記念(2着)まで全12戦で3着以内。ベストは2000mか。(B)

エリザベス女王杯(11月10日、京都芝2200m)
ハーパー(牝4歳、父ハーツクライ、栗東・友道康夫厩舎)
 昨年の牝馬三冠は4、2、3着。このレースでは3着。リバティアイランドが出てこなければチャンス。(B)

マイルチャンピオンシップ(11月17日、京都芝1600m)
ナミュール(牝5歳、父ハービンジャー、栗東・高野友和厩舎)
 昨年の覇者。繰り返し好走する馬が多いレースだけに、連覇は十分あり得る。(B)

ジャパンカップ(11月24日、東京芝2400m)
リバティアイランド
 昨年はイクイノックスの2着。上手く成長すれば、アーモンドアイ級になるかも。(A)

有馬記念「自信度A」の馬とは?【チャンピオンズC〜ホープフルS】

チャンピオンズカップ(12月1日、中京ダート1800m)
ドゥラエレーデ(牡4歳、父ドゥラメンテ、栗東・池添学厩舎)
 昨年のチャンピオンズカップと東京大賞典でともに3着。成長力で、ウィルソンテソーロを逆転可能。(B)

阪神ジュベナイルフィリーズ(12月8日、京都芝1600m)
チルウィズミー(牝2歳、父ドゥラメンテ、栗東・中内田充正厩舎)
 ダービーで本命にしたトロヴァトーレの半妹。続々と女傑を送り出す厩舎と、藤田晋オーナーのコンビ。(C)

朝日杯フューチュリティステークス(12月15日、京都芝1600m)
コジオスコ(牡2歳、父エピファネイア、栗東・武幸四郎厩舎)
 重賞3勝牝馬プリモシーンの半弟。武幸四郎調教師が、故・武邦彦調教師につづく父子制覇でGI初制覇を果たすか。(C)

有馬記念(12月22日、中山芝2500m)
ドゥレッツァ
 小回り向きの機動力と自在性は、トリッキーなこのコースで大きな武器に。(A)

ホープフルステークス(12月28日、中山芝2000m)
ショウヘイ(牡2歳、父サートゥルナーリア、栗東・友道康夫厩舎)
 大谷翔平にちなんで命名。伯母に牝馬二冠馬ミッキークイーン、いとこにエリザベス女王杯を勝ったブレイディヴェーグがいる。(C)

ドウデュースを予想から外したワケ

 昨年は、レモンポップのフェブラリーステークス、ソールオリエンスの皐月賞、リバティアイランドの桜花賞と秋華賞、そして、イクイノックスの宝塚記念と天皇賞・秋、ジャパンカップの7レースが的中した。

 今年は、各路線で軸になる馬がいないだけに、5レースほど当たれば万々歳といったところか。

 ひとつ自慢をすると、2021年のこの企画で、タイトルホルダーの菊花賞優勝を予想していたことを栗田徹調教師に伝えたら、「おおっ!」と驚かれたあと、「どうしてですか」と訊かれた。選んだ理由は、長距離で強いメロディーレーンの下という血統と、4着だったホープフルステークスのレースぶりだった。管理調教師でさえそういうリアクションをするほど難しいのだから、ひとつも当たらなくても仕方がないのだ。と、優しい目で見てほしい。

 3歳牝馬では、アルテミスステークスを勝ったチェルヴィニアや、朝日杯で3着だったタガノエルピーダもクラシックの有力候補だろう。牡馬では、きさらぎ賞を勝ったビザンチンドリーム、アイビーステークスを勝ったダノンエアズロック、ミッキークイーンの半弟で新馬戦を圧勝したニュージーズなどにも可能性がある。

 古馬では、海外GIとの兼ね合いもあり、ドウデュース、ジャスティンパレス、シャフリヤール、ダノンベルーガ、プログノーシス、ウシュバテソーロ、レモンポップ、クラウンプライドといった馬たちが、ここでの予想からは抜けている。ぜひ、海の向こうで大きなタイトルを手にしてほしい。

 ボウズ(的中ゼロ)だったら、来年以降は中止にする――という覚悟で、もう一度予想を見直してみた。よし、これでいい。

 まずは、今週のフェブラリーステークスで、ウィルソンテソーロに頑張ってもらわねば。管理する小手川調教師は、今年度限りで解散する小桧山悟厩舎の調教助手時代からよく知っている人だ。ここでGI初制覇を遂げて、引退する師匠のコビさん(小桧山調教師)と一緒に泣いてほしい。

 さあ、最高峰のGIを楽しもう。

文=島田明宏

photograph by JIJI PRESS