水原一平通訳の解雇という驚きのニュースもあったが、熱狂のうちに幕を閉じたロサンゼルス・ドジャースの韓国シリーズ。日本だけでなく、現地韓国も大谷翔平フィーバーに沸いていた。現地で取材を行った斎藤庸裕氏がレポートする。

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 ドジャース大谷翔平投手(29)は、韓国でも大人気だった。米アリゾナ州でのキャンプを終え、チャーター機で3月15日にソウル・仁川国際空港に到着すると、メディアとファンを含めて約500〜600人が出迎えた。現地韓国のファンクラブは横断幕を掲げ、「Welcome」と歓迎。到着前から「レッツゴー、ショウヘイ! レッツゴー、ドジャース!」と何度も大きなかけ声が響いた。

 大谷は岩手・花巻東で3年生だった12年9月、U18世界選手権の日本代表として韓国でプレー経験があり、試合は12年ぶり。一方で、現地の韓国にとっては開幕戦が行われるのは初の歴史的なイベントだった。野球界トップの韓国入りを、現地のファンは待ち切れない様子で歓迎した。

大谷結婚に「韓国の女性はみんな悲しんでいます(笑)」

 ドジャース選手団の空港到着後、感激した様子で余韻に浸っていた韓国人ファンがいた。空港近くの仁川市在住で英語教師のジン・サン・リーさん(27)は「生で大谷選手を見られてうれしい」と喜びを口にした。昨年のWBCで心を奪われたそうで、「マイク・トラウトとの対決は漫画のようだった。ハッスルプレーもすごくて、投手のユニホームが土で汚れるなんて、誰も想像できない。とてもドラマチック。彼のニックネームがユニコーンと呼ばれるように、とてもレアな存在」と魅力を語った。

 空港で待ち構えていた韓国ファンクラブの会員で日本語も堪能なパク・ヘスさんは、大谷の愛犬デコピンの写真とともに韓国語で書かれたボードを持参。文字の意味は「野球天才大谷」、「顔天才大谷」と書き記した。韓国での人気についてヘスさんも「私は日本ハム時代から好きですけど、去年のWBCで一気にファンが増えたと思う」と証言。

 2月29日には結婚を発表し、チーム便に搭乗する際には妻・真美子さんとの写真も大谷本人から投稿された。ヘスさんは「韓国の女性はみんな悲しんでいると思います(笑)。でも、応援し続けます」と、女性ファンの気持ちを代弁するように言った。

 大歓迎に大谷は手を振り、笑顔で応えた。翌日、開幕戦の会場となる高尺(コチョク)スカイドームでの記者会見で、現地の熱狂ぶりについて素直な気持ちを語った。

「日本と韓国は昔から国際大会で白熱した試合が多くて、子どものころから見ていましたし、韓国も素晴らしいチーム。今回韓国でプレーできるのは楽しみですし、空港でああやって迎えていただけるのはありがたい」

「圧倒的な能力がある」韓国でも熱狂の理由

 期待通りに、開幕戦で大谷は初安打をマークし、2安打1打点1盗塁を決めた。2戦目も安打を放ち、連日スタジアムに集まった1万5000人超の観客を魅了した。過去6年間、二人三脚で戦ってきた水原一平通訳が違法賭博の疑いで解雇されるという衝撃的なニュースが話題をさらったが、ファンはやはり、大谷の野球に心を動かされる。

 英語教師のリーさんは大谷に熱狂する理由をシンプルに語っていた。

「彼はすごくパワフルで、とても野球がうまい。それに投打で圧倒的な能力がある」

 今季は打者専念だが、大谷が二刀流で全力プレーに徹する姿を韓国のファンも待ち望んでいる。

文=斎藤庸裕

photograph by JIJI PRESS