2024年のプロ野球開幕が目前に迫ってきた。「オープン戦の成績」と「身長・体重・年俸」など各種データから今季のNPBを様々な形で楽しもう。(全2回の第1回/第2回も配信中)

 オープン戦の全日程が終了した。ペナントレースの開幕は3月29日だ。

〈今季オープン戦の最終順位〉
 中日 20試10勝5敗5分 率.667
 ソフトバンク 17試10勝5敗2分 率.667
 ヤクルト 17試10勝6敗1分 率.625
 楽天 17試9勝6敗2分 率.600
 オリックス 15試8勝6敗1分 率.571
 DeNA 18試7勝6敗5分 率.538
 日本ハム 18試7勝6敗5分 率.538
 西武 13試6勝6敗1分 率.500
 巨人 16試7勝8敗1分 率.467
 広島 19試6勝8敗5分 率.429
 ロッテ 14試2勝9敗3分 率.182
 阪神 18試3勝14敗1分 率.176

過去10年のセパ・ペナント順位とオープン戦は?

 昨年日本一の阪神が最下位になったことが話題になっているが、ペナントレースとオープン戦の成績には相関関係があるのだろうか?

 過去10年のペナントレースの順位とともに、カッコ内でオープン戦の順位をつけてみた。オープン戦は両リーグ通して順位をつけるが、これをセ・パ両リーグごとの順位にした。

〈セ・リーグ〉
 
2014年=1位:巨(1)、2位:神(5)、3位:広(2)、4位:中(4)、5位:De(3)、6位:ヤ(6)
 2015年=1位:ヤ(3)、2位:巨(5)、3位:神(2)、4位:広(6)、5位:中(4)、6位:De(1)
 2016年=1位:広(2)、2位:巨(3)、3位:De(5)、4位:神(1)、5位:ヤ(4)、6位:中(5)
 2017年=1位:広(5)、2位:神(1)、3位:De(3)、4位:巨(6)、5位:中(3)、6位:ヤ(2)
 2018年=1位:広(5)、2位:ヤ(3)、3位:巨(1)、4位:De(2)、5位:中(4)、6位:神(6)
 2019年=1位:巨(2)、2位:De(3)、3位:神(6)、4位:広(1)、5位:中(4)、6位:ヤ(4)
 2020年=1位:巨(6)、2位:神(1)、3位:中(4)、4位:De(2)、5位:広(3)、6位:ヤ(5)
 2021年=1位:ヤ(6)、2位:神(1)、3位:巨(2)、4位:広(3)、5位:中(4)、6位:De(5)
 2022年=1位:ヤ(5)、2位:De(2)、3位:神(1)、4位:巨(5)、5位:広(4)、6位:中(3)
 2023年=1位:神(4)、2位:広(6)、3位:De(5)、4位:巨(1)、5位:ヤ(3)、6位:中(2)

〈パ・リーグ〉
 2014年=1位:ソ(1)、2位:オ(6)、3位:日(3)、4位:ロ(4)、5位:西(5)、6位:楽(2)
 2015年=1位:ソ(1)、2位:日(6)、3位:ロ(2)、4位:西(5)、5位:オ(3)、6位:楽(4)
 2016年=1位:日(5)、2位:ソ(2)、3位:ロ(1)、4位:西(4)、5位:楽(3)、6位:オ(6)
 2017年=1位:ソ(2)、2位:西(4)、3位:楽(6)、4位:オ(3)、5位:日(5)、6位:ロ(1)
 2018年=1位:西(5)、2位:ソ(6)、3位:日(3)、4位:オ(3)、5位:ロ(1)、6位:楽(2)
 2019年=1位:西(5)、2位:ソ(1)、3位:楽(2)、4位:ロ(4)、5位:日(6)、6位:オ(3)
 2020年=1位:ソ(2)、2位:ロ(5)、3位:西(1)、4位:楽(3)、5位:日(4)、6位:オ(6)
 2021年=1位:オ(4)、2位:ロ(3)、3位:楽(4)、4位:ソ(1)、5位:日(6)、6位:西(2)
 2022年=1位:オ(4)、2位:ソ(2)、3位:西(5)、4位:楽(1)、5位:ロ(6)、6位:日(3)
 2023年=1位:オ(1)、2位:ロ(4)、3位:ソ(6)、4位:楽(5)、5位:西(3)、6位:日(2)

阪神のオープン戦最下位は気にしなくていい?

 結論から言えば「オープン戦の成績はペナントレースとはほとんど関係がない」ということになる。ここ10年の各順位に、オープン戦の平均順位を紐づけするとこうなる。

〈セ・リーグ〉
 1位=(3.9)、2位=(3.0)、3位=(3.1)、4位=(3.1)、5位=(3.6)、6位=(3.9)
〈パ・リーグ〉
 1位=(3.0)、2位=(3.9)、3位=(3.3)、4位=(3.3)、5位=(4.2)、6位=(3.1)

 過去10年で言えば、オープン戦リーグ最下位から優勝したのは、セは2020年巨人、2021年ヤクルト、パはなかった。逆にオープン戦リーグ1位でペナントレース最下位になったのはセだと2015年DeNA、パは2017年ロッテだった。

 そういう意味では、阪神がオープン戦最下位になったことは、それほど心配する必要はないかもしれない。

オープン戦勝率1割台の3チームは“両極端”

 筆者は今季、オープン戦を10試合観戦した。各球団ともに中盤以降、試合が接戦になっても、代打の切り札やセットアッパーを投入することはほとんどなかった。指揮官が「勝利」にこだわっていると思えたシーンは、ペナントレースに比べればかなり少なかった。オープン戦は勝敗にこだわるものではないと、断言してよいのではないか。

 ただし過去10年、オープン戦において勝率1割台で終わったチームは3つあったが、ペナントレースの成績はこうなっている。

 2014年:ヤクルト13試1勝11敗1分 率.083→6位
 2018年:阪神16試2勝12敗2分 率.143→6位
 2020年:巨人16試2勝10敗4分 率.167→1位

 なお今季はロッテ、阪神と2チームが勝率1割台になった。

 ロッテ 14試2勝9敗3分 率.182
 阪神 18試3勝14敗1分 率.176

 その成績が「実勢戦力」によるものなのか「戦力調整中」によるものなのか、さらに分析する必要がある。

明らかにパの方がオープン戦勝率が高い

 また、近年のオープン戦の成績で、はっきりわかるのは「パ・リーグ」の強さだ。

〈2014年から24年のオープン戦のチーム別勝敗〉
 ソフトバンク 177試100勝57敗20分 率.637
 楽天 174試91勝61敗22分 率.599
 ロッテ 161試76勝64敗21分 率.543
 西武 152試74勝63敗15分 率.540
 日本ハム 173試78勝71敗24分 率.523
 オリックス 173試78勝74敗21分 率.513
 巨人 185試81勝92敗12分 率.468
 阪神 173試70勝80敗23分 率.467
 DeNA 171試70勝80敗21分 率.467
 中日 183試68勝91敗24分 率.428
 広島 161試57勝78敗26分 率.422
 ヤクルト 177試62勝94敗21分 率.397
 セ・リーグ 1050試408勝515敗127分 率.442
 パ・リーグ 1010試497勝390敗123分 率.560

 なんと、パ・リーグ6球団すべてが勝ち越し、最下位のオリックスでも.513。セは最上位の巨人でも.468。セ・リーグはここ11年で勝率.442、パ・リーグは.560となっている。交流戦でもパ・リーグが強い傾向が続いているが、ここまでの大差はついていない。

 両リーグの実力というより「調整に徹するセ・リーグ」に対して「オープン戦でも勝敗にこだわるパ・リーグ」という文化の違いなのかもしれない。

オープン戦「個人成績トップ」はシーズンでどんな感じ?

 個人成績を見ていこう。オープン戦では先発投手が5回まで投げることは少ないので「勝利数」は度外視した。

 ・首位打者 度会隆輝(De) .434(53打数23安打)
 ・本塁打王 ウォーカー(SB)5本
 ・最優秀防御率 吉村貢司郎(ヤ)1.35
 ・最多セーブ 則本昂大(楽)5

 DeNAの新人・度会は昨年のドラ1、リードオフマンとして抜群の存在感を示した。足も速く、大いに期待できる。巨人からソフトバンクに移籍したウォーカーは守備の重圧がなくなったからか、長打を連発。巻き返しを図るソフトバンクには心強い助っ人だ。ヤクルトの吉村は5試合20イニングを投げてこの防御率。ローテ定着が見えてきた。

 そして楽天のエース則本は、松井裕樹がパドレスに移籍し、今季からクローザーに。さっそく結果を出している。

 では――オープン戦の個人成績は、どれだけ信頼度があるのか? 過去3年のオープン戦の首位打者、本塁打王、最優秀防御率、最多セーブの選手と、それぞれのペナントレースの成績を見ていこう。

〈2021年〉
 ・首位打者 島内宏明(楽) .400(30打数12安打)→.257(486打数125安打)※18位、96打点で打点王
 ・本塁打王 佐藤輝明(神)6本→24本
 ・最優秀防御率 大瀬良大地(広)0.00→3.07 ※5位、二木康太(ロ)0.00→4.38
 ・最多セーブ 森唯斗(SB)4→15

〈2022年〉
 ・首位打者 髙部瑛斗(ロ) .393(56打数22安打)→.274 ※7位、44盗塁で盗塁王
 ・本塁打王 岡本和真(巨)7本→30本
 ・最優秀防御率 柳裕也(中)1.06→3.64 ※10位
 ・最多セーブ 齋藤友貴哉(神)2→0、三嶋一輝(De)2→1、松井裕樹(楽)2→32 ※最多セーブ、北山亘基(日)2→9

〈2023年〉
 ・首位打者 栗原陵矢(SB) .415(53打数22安打)→.239(352打数84安打)
 ・本塁打王 清宮幸太郎(日)5本→10本
 ・最優秀防御率 平良海馬(西)0.00→2.40 ※4位
 ・最多セーブ 石川直也(日)4→1

 これも一概には言えないが、実績のある選手にとってオープン戦で数字を残すことは「今季も順調」であることの証明にはなる。2021年の楽天の島内、広島の大瀬良、2022年の巨人・岡本、楽天の松井などがその例だ。

DeNA度会はロッテ高部パターンになるか?

 また2022年のロッテ、高部は3年目でリードオフマンに抜擢され、見事盗塁王。オープン戦の首位打者は、当時の井口資仁監督が彼を抜擢する決め手になったのではないか。今季のDeNA度会も、同じような立ち位置にいるといえよう。三浦大輔監督は、開幕戦でも度会をリードオフマンで起用するはずだ。

 また昨年の西武・平良は自ら申し出て救援から先発に転向したが、オープン戦を無失点で乗り越えたことで、彼も信頼を得たといえる。

 オープン戦のチーム成績は、指揮官が必ずしも「勝利」を目指していないこともあり、ペナントレースを占うには根拠薄弱ではある。ただし個人成績は見方によっては、今季を占う指標になるといえよう。今週金曜日の開幕が待ち遠しい。つづいては、各選手の身長・体重・年齢・推定年俸など各種基礎データを見て2024年の球界模様を知っていこう。

<つづきは第2回>

文=広尾晃

photograph by Kiichi Matsumoto