新入幕のちょんまげ頭の尊富士が優勝し、ザンバラ髪の大の里も、最後まで優勝争いに残った大阪場所だった。いいか悪いかは別にして、大関とか三役の上位陣がダメなの。昨日今日入った新弟子が優勝するってことは、大関も何も番付は関係なく、レベルが一緒ってことだよな。

 尊富士は歴史的な優勝、おめでとう! 一生懸命に自分の相撲取ってるよね。新入幕11連勝で大鵬さんと並んだとか、110年ぶりの新入幕優勝だとか、昔のことはいいんだ。今現在の相撲界で、そんなことは意識しないで若い子らがただ頑張っているんだから、周りのメディアが騒ぎすぎでもあるんだよな。いつの時代も同じで、同じように頑張ってる相撲取りなんだからさ。

 尊富士の相撲は迷いがないよね。スパッと前に速攻で出る押し相撲で、まわしを取ろうとしないんだ。まわしを取ったらダメで、やはり押し相撲が彼にはベスト。14日目の朝乃山戦は、まわしを取っちゃったからよくなかったんだよな。15日間戦うのは長いんだ。尊富士はそれほど大きくない体だし、短時間の早い相撲を取ったほうが体にいい――健康にいいしな(笑)。

 14日目にまさかのケガで車椅子に乗って退場していたけれど、土俵上で足首の靭帯を損傷したとのことだった。外に膝が向かないように、基本のすり足の形、足の運びが大事なんだよ。それと、下半身が細いわりに上半身がデカすぎる。筋トレのやり過ぎで、ほどほどにしたほうがいい。リハビリとか、維持するための筋トレはいいけど、軽くね。なんでもやり過ぎはよくない。やはり相撲の基本動作が大事なんだよ。

「もうちょっと体を丸めて行け!」

 大の里は、下がって引く相撲が何番かあったよね。11勝4敗で、そのうち2番くらいは勝てたはずの、もったいない相撲もあったんだ。

 今はまだ負けてもいいんだ。せっかくの恵まれた体なんだから、思い切りぶつけて行って欲しいよね。まだ若いし、体に覚えさせればいい。それと、腰が高いから、もうちょっと体を丸めて行け! 的がデカいと相手からすれば当たりやすいからね。相撲はまだまだ粗っぽいけど、自分の形になるように、まずは当たって。小細工はせずに体を生かせばいいだけ。余計なことをやらなければいいだけで勝てるんだから。当たって押して、そこから掴まえてもいいんだけど、それだけの力と体を、すでに持っているんだからね。

“大関4人”への苦言

 新大関の琴ノ若。先場所と較べると、どこか「やりたいことができてない」ように見えたな。まわしを取れてないし、どこか迷いがあるような感じだったね。当たりもちょっと弱かったなぁ。来場所からおじいさんの名前の「琴櫻」を襲名するのが決まっているとのことだけど、もうちょっと今の名前で、大関としてアピールしてから変えてもよかったんじゃないかな。二度と「琴ノ若」という名前は名乗れないんだから。おっと、大きなお世話か(笑)。

 大関豊昇龍は4敗。相撲を相手に研究されてるんだ。当たってからの流れがなくて、流れを作ったほうがいいんだ。当たって前みつを取るとかね。だんだんと相撲を覚えられていて、逃げ道がなくて、今のままでは限界があるぞ? 完全に読まれちゃってるのね。立ち合いで当たって、体がなくても当たってから中に入っていかないと、今の相撲はちょっと大き過ぎるんだ。安易に投げにいったりすると、14日目の琴ノ若戦みたいに大きな人が上から落ちてくると怖いよ? 体の動きも、もうちょっとスピードが欲しいところだな。でも、尊富士を投げて連勝をストップさせたのは、さすが大関だったよ。

「地元ファンがガッカリしてたぞ!」

 大関霧島は初日から4連敗し、最後は5勝10敗。大関の成績じゃないよな。少なくとも5敗した時点で休場したほうがいい。定年を迎える師匠の最後の場所だったし、「最後までやり切ればいい」って、大関という地位は、けしてそうじゃないんだよな。どんどん気持ちが暗くなっちゃうでしょ。自信もなくしちゃう。ひとつ思うのは、今の霧島は肥り過ぎなんだ。先場所から体がデカくなっていて、持ち前の動きがなくなった感じ。まわしを取って動いたりする相撲がなくて、霧馬山時代の相撲に戻ってほしいよ。元横綱鶴竜の音羽山部屋に移籍するとのことだけど、新しい師匠のもとで心機一転、頑張ってほしいところだな。

 大関貴景勝は、カド番で勝ち越しを決めた翌日、14日目から休場した。

 首のケガがよくないのはわかるんだけど、ここまで来たら大関として最後まで出てほしいよな。最後の最後で割(取組)が狂っちゃったし、勝ち越しのために出てるだけなのか? それも大阪場所は地元でしょ。休場のアナウンスで、ファンのみんながため息ついてガッカリしてたぞ。大関としての根性を見せてほしかったよね。

「遠藤、いつでも友達になろうな(笑)」

 前頭16枚目の遠藤は、今場所は5勝10敗か。十両に落ちるだろうけれど、自分の相撲を取り続けての結果だからね。ペラペラしゃべらないし、ケガしているとかなんとか、余計なことも言わないでしょ。(注*今まで取材構成するなかで感じていましたが、遠藤関のことを結構、お好きなんじゃないですか?)……うん、そうなんだよ。バレてた? 日本語でいうと、モクモクタンタン(注*黙々と淡々と)してるでしょ。彼は相撲界で友達を作らないタイプだと見ていて、僕も相撲界で友達いないしさ。遠藤、いつでも友達になろうな(笑)。

 荒れる春場所と言われるけど、今場所はニューフェイスが活躍してくれて盛り上がったよね。横綱大関も、もっともっと発奮して頑張らないと。   

 とにかくみんな、今場所もお疲れさま。大阪のお客さん、連日の満員御礼、「毎度おおきに!」。

(構成=佐藤祥子)

文=武蔵川光偉

photograph by KYODO