セ・リーグから公示された中日ドラゴンズの開幕ロースターを見て、驚いた中日ファンもいたことだろう。6年目の根尾昂、5年目の石川昂弥、岡林勇希、4年目の高橋宏斗がそろって外れていたからだ。全員が高卒入団で、岡林を除く3人はドラフト1位。また高橋宏は昨年のWBC、岡林は昨秋のアジアプロ野球チャンピオンシップ、そして石川は今春の欧州選抜との強化試合で、それぞれ侍ジャパンに選ばれている。

 トッププロスペクトであり、ドラゴンズの未来を照らす希望の灯でもある。ところがそろって開幕二軍とは……。それぞれの状況を書くと、先発ローテーション入りが目標だった根尾は、オープン戦では3試合に登板し、計14イニングを投げて被安打12、奪三振13で防御率は3.86。しかし、与四球7と制球力の改善という課題は解消できなかった。

ドラゴンズの希望の灯が…

 キャンプは二軍スタートながら2月末には一軍合流。オープン戦では13試合、43打席とチャンスは与えられたのが石川だが、打率.175、1本塁打と結果を残すことができなかった。

 岡林は2月23日の広島とのオープン戦(北谷)で、送球した際に右肩を痛め、一軍から離脱した。その後、二軍では実戦に復帰し、守備にもついている。しかし打率.120と状態は上向いていない。昨シーズンに続いてフルイニング出場が目標だったが、いきなり頓挫してしまった。

 自身初となる開幕投手を狙うと公言してキャンプインした高橋宏は、ドジャース・山本由伸のように左足をあまり上げず、スライドするように踏み出す新フォームがなじまず、キャンプ中に修正。オープン戦で3度登板したが、計9イニングを投げ被安打12、7四死球で防御率は5.00。最後の登板翌日の3月17日から二軍に合流している。

立浪監督の真意とは…

 以上のように故障といえるのは岡林だけだが、その岡林も出場は可能なコンディションである。要するに一軍ロースターに期待を込めて入れようと思えばできたのに、立浪和義監督はあえてそうしなかったのだ。そこにあるのはこの4人を含む若手への大きな期待と、チームを統率する指揮官としての冷静な判断。例えば根尾や高橋宏が脱落した開幕ローテーションは、柳裕也を筆頭に小笠原慎之介、梅津晃大、涌井秀章、大野雄大、ウンベルト・メヒアで十分にまかなえる。

 石川が争った三塁手はオープン戦で打率.391と結果を残した高橋周平に託す。石川を代打で待機させたり、左投手が先発の時に起用する手もあっただろうが、それでは中途半端になってしまう。岡林にしても不在のセンターは売り出し中の三好大倫でカバーできる。以下、それぞれの決断について、報道各社に説明した立浪監督の言葉から振り返る。

「(根尾はこのまま)先発させても、チームにとっても本人にとってもためにならない。二軍でしっかりフォーム固めをさせるという考えにいたりました」

未来のエース・高橋宏斗への期待

 高橋宏に関しては2年前の投球フォームと球威を取り戻すよう、指示を出した。三塁手については「見事に自分の形をつくって、結果を出してくれた」と高橋周をたたえ、石川のことを「まだまだこれからレギュラーを取らないといけない選手。でも今は迷いがあるから」と尻を叩いた。岡林にも言及し「肩なので。(二軍戦には出たが)どうもよくない。状態がよくなってからということです」と数試合のために無理をさせたくないという判断を強調した。

 期待の若手カルテットがそろって二軍スタートというのは、本来なら痛い誤算である。しかし、今シーズンのドラゴンズはひと味違う。オープン戦は10勝5敗5分けの首位タイでフィニッシュ。新戦力もキューバから来日したばかりの育成選手、クリスチャン・ロドリゲスと育成ドラフト3位指名のルーキー・尾田剛樹を開幕直前に支配下登録した。

オープン戦Vは珍事じゃない

 2人は開幕ロースターにも入っており、ロドリゲスは遊撃手として先発出場が濃厚である。さらには三好、昨シーズンは右肩手術で出場がなかった田中幹也に新外国人のアレックス・ディカーソンも開幕スタメンと見られている。ここに先の4人が状態を上げて合流してくれば、さらに戦力層は厚くなるだろう。

 昨シーズンまではポジションを与えて成長を促すやり方しかできなかったが、今シーズンは競わせて選ぶことが可能になった。本当の意味での競争原理を導入できるだけのチームになってきたからだ。それによって4人は外れたが、それでも穴を感じさせない戦いぶりを見せた。そんな3月の快進撃を珍事では終わらせてはいけない。就任3年目こそ、立浪ドラゴンズが熱い戦いを見せてくれる。

文=小西斗真

photograph by JIJI PRESS