高校球児の「好きなプロ野球選手」の集計結果を「所属球団別」に分け、ランキング化するとどうなるのか。『センバツ2024 第96回選抜高校野球大会完全ガイド』(週刊ベースボール別冊春季号)を元に作成。見えた12球団「チームの人気No.1選手」とは。※1人が2選手以上挙げた場合、それぞれカウント。パーセンテージは小数点2位以下を四捨五入。敬称略〈全3回の2回目/第1回、第3回も公開中〉

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 まずは18位から11位を見てみよう(※各球団の上位2人を記載。球団名などの横は全獲得票数。順位横の数字は昨年の結果。選手のポジションは今季の予想など。以下同)

「好きな選手の所属球団」総数11〜18位

●18位(↑圏外):イースタン・リーグの球団 1票
1票 陽岱鋼(オイシックス新潟アルビレックス・外野手)

●17位(↓16):メジャーリーグのOB 5票
2票 ヤディアー・モリーナ
1票 アンドレルトン・シモンズ、バリー・ボンズ、カブレラ(※1)

●15位タイ(↑16):メジャーリーグ以外の海外球団、所属なし 6票
2票 T.バウアー
1票 バレンティン、Y.グラシアル、W.ロサリオ、筒香嘉智

●15位タイ(=15):なし 6票

●14位(↓12):日本ハム 10票 
4票 万波中正(6年目・外野手)
2票 伊藤大海(4年目・投手)

●13位(↓8):広島 14票
4票 秋山翔吾(14年目・外野手)
2票 菊池涼介(13年目・二塁手)、小園海斗(6年目・遊撃手)、坂倉将吾(8年目・捕手)、田中広輔(11年目・三塁手)

●12位(↓7):楽天 17票 
11票 浅村栄斗(16年目・三塁手)
3票 辰己涼介(6年目・外野手)

●11位(↑14):DeNA 19票 
8票 牧秀悟(4年目・二塁手)
4票 松尾汐恩(2年目・捕手)

若い選手が人気…際立つDeNA

 DeNAが3ランク上昇。度会隆輝が3票、松本凌人が1票と新人選手も票を取った。一方、楽天と広島は5ランク下降。ともに昨年チーム2位の8票を得た松井裕樹(楽天→パドレス)、チーム1位の13票を得た西川龍馬(広島→オリックス)の移籍が大きく関係している。ただ、それだけではない。

 楽天は9票の田中将大、広島は6票の大瀬良大地がともに0票になった影響も大きい。田中は3年連続、大瀬良は2年連続で1ケタ勝利に終わり、エースと呼べる働きをできていないからだろう。今春の球児は2006年4月〜2008年3月生まれで、物心ついた頃に24勝0敗1セーブで楽天を日本一に導き、名門・ヤンキースで活躍した田中の姿を知っている。広島3連覇の立役者の一人である大瀬良の力投も目に焼き付いているはずだ。今年、2人が復活すれば、来年は票数も上がるだろう。次に10位から6位を見てみよう。

「好きな選手の所属球団」総数6〜10位

●10位(↑12):中日 20票 
9票 中田翔(17年目・一塁手)
3票 根尾昂(6年目・投手)

●9位(↑10):ロッテ 21票
8票 藤原恭大(6年目・外野手)
5票 佐々木朗希(5年目・投手)

●8位(↑9):西武 26票
19票 源田壮亮(8年目・遊撃手)
2票 外崎修汰(10年目・二塁手)、中村剛也(23年目・指名打者)

●7位(↓6):ヤクルト 39票
17票 山田哲人(14年目・二塁手)
7票 村上宗隆(7年目・三塁手)

●6位(↑11):阪神 50票
8票 近本光司(6年目・外野手)
5票 中野拓夢(4年目・二塁手)、坂本誠志郎(9年目・捕手)、梅野隆太郎(11年目・捕手)

票が割れた阪神、甲子園スターは「人気」

 昨年、38年ぶりの日本一に輝いた阪神が5ランク上昇で6位に。チーム2位タイはセ・リーグ最多安打の中野に加え、2人の捕手が分け合う珍しい形に。昨年24本塁打、92打点でチーム2冠の佐藤輝明は1票に留まった。体格の大きい選手は球児がマネできないと考えるのか、成績と票が比例しない傾向を持つ。阪神は2年目の森下翔太(3票)、愛されキャラのミエセス(1票)などにも票が入っており、球児が挙げた「好きな選手」の総数は21人に上り、12球団最多となった。

 一方、「好きな選手」の数自体のワースト1位は楽天(5人)、2位は西武(6人)。楽天は17票中11票(64.7%)が浅村、西武は26票中19票(73.1%)が源田に集まった。1選手への依存度は、西武が12球団トップだった。また、浅村を挙げた中で「好きな球団」を楽天と書いたのは11人中1人。源田を挙げた中で「好きな球団」を西武と書いたのは0人だった。WBCでの活躍を見て源田のファンになったが、Bクラスと振るわなかった西武を好きになるまでは至らなかったか。

「センバツ球児の好きな選手」という特性に目を向けると、藤原恭大や根尾昂、奥川恭伸(ヤクルト・4票)、内山壮真(ヤクルト・5票)、松尾汐恩など甲子園のスターは票数を獲得している。彼らの聖地での活躍を見て、甲子園を目指した球児が多かった証だろう。知名度の割に票の伸びていない佐々木朗希は192センチ、92キロという規格外の体格に加え、甲子園不出場の影響もありそうだ。

 いよいよ、ベスト5を発表しよう(以下、各チームの5位以内、もしくは5票以上の選手を記載。球団名横は全獲得票数)

「好きな選手の所属球団」総数1〜5位

●5位(=5):オリックス 54票
12票 森友哉(11年目・捕手)
8票 西川龍馬(9年目・外野手)
5票 宮城大弥(5年目・投手)
4票 山岡泰輔(8年目・投手)
3票 安達了一(13年目・二塁手)、宗佑磨(10年目・三塁手)、山下舜平大(4年目・投手)、来田涼斗(4年目・外野手)

●4位(=4):巨人 58票
18票 坂本勇人(18年目・三塁手)
13票 吉川尚輝(8年目・二塁手)
9票 岡本和真(10年目・一塁手)
4票 門脇誠(2年目・遊撃手)、小林誠司(11年目・捕手)

●3位(↓2):NPBのOB 76票 ※カッコ内はNPB、MLBでの通算実働年数、現役時代の主なポジション、所属先。NPBを経験した外国人OBは「NPBのOB」に含める
10票 鳥谷敬(18年・遊撃手/元阪神、ロッテ)
7票 糸井嘉男(16年・外野手/元日本ハム、オリックス、阪神)
6票 イチロー(28年・外野手/元オリックス、マリナーズなど)
4票 古田敦也(18年・捕手/元ヤクルト)
3票 阿部慎之助(19年・捕手/元巨人)、藤川球児(20年・投手/元阪神、カブスなど)

●2位(↑3):ソフトバンク 102票
33票 柳田悠岐(14年目・外野手)
23票 今宮健太(15年目・遊撃手)
14票 近藤健介(13年目・外野手)
10票 甲斐拓也(14年目・捕手)
6票 周東佑京(7年目・外野手)
5票 前田悠伍(新人・投手)

●1位(=1):メジャー球団 124票
33票 大谷翔平(ドジャース・指名打者)
21票 山本由伸(ドジャース・投手)、吉田正尚(レッドソックス・外野手)
13票 鈴木誠也(カブス・外野手)
9票 今永昇太(カブス・投手)
5票 千賀滉大(メッツ・投手)

※現在メッツの3Aながら、メジャー40人枠に入っている藤浪晋太郎への1票含む

巨人No.1は坂本勇人だった

 パ・リーグ3連覇中のオリックスは昨年の60票から54票に落ちたものの、5位に入った。昨年19票獲得の山本由伸の穴を、広島からFA移籍の西川龍馬が8票で補い、多くの選手で残りをカバーした。その証拠に「好きな選手」の数は昨年の13人から19人と上昇。12球団2位だった。日本ハムから移籍の吉田輝星は昨年の4票から1票に。金足農業で甲子園を沸かせたスターもプロではまだ芽を出せておらず、正念場に立たされている。

 4位は巨人。昨年9票の中田翔が移籍、4票の松田宣浩が引退したものの、順位は変わらず。吉川が6票から13票、岡本が6票から9票と主軸の得票数が伸び、新星・門脇も4票を獲得。昨年、21試合出場で1安打に終わった小林も票を集めた。昨年WBCに出場し、シーズンでは2年連続12勝を挙げた戸郷翔征は意外にも2年連続0票。菅野智之は2年連続1票だったが、今年0票になった。

 3位はNPBのOBだった。鳥谷敬、糸井嘉男、イチローと三拍子揃った選手が好まれている。これはOBに限らず、「好きな選手」ベスト10も同じ傾向である。少数票ではバース、クロマティという80年代の外国人選手、落合博満や松井秀喜、黒田博樹などのレジェンドもいた。西武やロッテで活躍したG.G.佐藤も1票を獲得している。今春の球児は現役時代をよく知らないはずだが、北京五輪での落球を叩かれても前向きに生きる姿勢が共感を呼んだのかもしれない。

 2位はソフトバンク。球児の「好きな選手」ランキングでは柳田、今宮、近藤と12球団で唯一、ベスト10に3人を送り込んだ。ちなみに、西武からFA移籍の山川穂高は0票。不祥事発覚前の昨年は1票だった。ソフトバンクは12球団1位と立派な成績だが、102票中88票(86.3%)を10年目以上の選手が占めている。昨年の同比率を見ると、優勝の阪神は31.6%、オリックスは31.7%、2位の広島は41.7%、ロッテは33.3%だった。ホークスには新たなスターの出現も望まれる。

ドジャース人気が急上昇していた

 1位はメジャー球団。全体を一括りにしたが、ドジャースだけで56票となり、単独球団としてもオリックスを超えて巨人に迫る票数だった。大谷は1人で33票を集めて西武、ロッテ、中日、DeNA、楽天、広島、日本ハムの7球団を上回った。山本も1人でロッテと並んでいる。ダルビッシュ有、松井裕樹のパドレス勢は各3票。日本人以外のメジャーリーガーでは金河成、トレイ・ターナー、ムーキー・ベッツの各2票が最高だった。

【2024年 好きなプロ野球選手の「所属球団」ランキング】

1位:124票 メジャー球団
2位:102票 ソフトバンク
3位:76票 NPBのOB
4位:58票 巨人
5位:54票 オリックス
6位:50票 阪神
7位:39票 ヤクルト
8位:26票 西武
9位:21票 ロッテ
10位:20票 中日
11位:19票 DeNA
12位:17票 楽天
13位:14票 広島
14位:10票 日本ハム
15位タイ:6票 メジャーリーグ以外の海外球団、所属なし
15位タイ:6票 なし
17位:5票 メジャーリーグのOB
18位:1票 イースタン・リーグの球団

「好きなプロ野球選手の所属球団」ではメジャー球団が1位、ソフトバンクが2位となった。それでは「好きな球団」のランキングはどうなったのか――。〈つづく〉

※1 「カブレラ」は西武やオリックス、ソフトバンクで活躍したアレックス・カブレラの可能性もあるが、最後のNPB所属は2012年で8試合の出場に終わっている。今春の球児の生年月日を考え、2023年まで現役を続けてメジャー通算511本塁打のミゲル・カブレラと判断した。

文=岡野誠

photograph by L)Kiichi Matsumoto、R)Hideki Sugiyama