パリ五輪最終予選を兼ねたU23アジアカップで優勝を果たし、U-23サッカー日本代表が8大会連続の五輪出場を決めた。しかし本大会のメンバー登録枠はわずか18人であり、さらにそのうち3人はオーバーエイジ(24歳以上の選手)の招集が見込まれている。苛烈なサバイバルを生き残るのは、いったいどの選手なのか。長く日本代表を追うライターの戸塚啓氏が18人を予想する。(全2回の2回目/「オーバーエイジ予想」編も読む)

CB争いをリードするのは19歳の高井幸大か

 ここから先が、もっとも険しい。

 パリ五輪の代表入りを巡る競争だ。

 五輪の登録メンバーは18人だ。カタールW杯よりも8人少ない。3つのオーバーエイジ枠を使うと、U-23世代から招集されるのはわずか15人となる。

 GK2人を除けば、フィールドプレーヤーは13人だ。アジア最終予選から、実に7人減(!)である。しかも、同予選にはヨーロッパのクラブに所属する複数の選手が招集されていなかった。メンバー入りを巡るサバイバルは、苛烈と言うしかない。

 GKはともに海外でプレーする鈴木彩艶(シント・トロイデン)、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)でいいだろう。海外でプレーする選手の招集はクラブの合意が必須だが、鈴木は1月のアジアカップに、小久保は今回のアジア最終予選に出場している。どちらもFIFAのインターナショナルウィーク外の大会であり、パリ五輪についてもクラブの理解は得られそうだ。

 DFはCBとサイドバックを3人ずつ選ぶ。全体のバランスを考えると、最終ラインは6人が適正なのだ。

 CBは板倉滉をオーバーエイジで選出する。U-23世代からは最終予選5試合に先発した19歳の高井幸大を、そのスケールと将来性も加味してピックアップする。彼ら2人が先発候補だ。

 もう1人のCBは、最終予選に招集された西尾隆矢(セレッソ大阪)、木村誠二(サガン鳥栖)、鈴木海音(ジュビロ磐田)の3人から選ぶ。所属クラブでしっかりとしたパフォーマンスを見せた選手が、パリ行きへ近づくことになる。それについては、高井も例外ではない。

 シュツットガルトのセカンドチームで経験を積むチェイス・アンリも、6月に予定される欧州遠征でテストしたい。ヨーロッパのクラブに所属する彼のような選手については、選考の最終段階がオフシーズンだ。その時々でのコンディションを見極めながら、適性と能力を診断していくべきだ。選考した場合には、五輪へ向けてのコンディション作りへの配慮が必要だ。

最終予選で評価を高めた左右のサイドバック

 サイドバックでは、関根大輝(柏レイソル)が右サイドの序列を書き換えた。昨年のアジア大会に拓殖大学3年生として出場した彼は、大学卒業を待たずに今春に入団内定の柏に加入し、開幕からポジションを獲得した。最終予選では5試合で先発起用され、スケールの大きなサイドバックとして評価を高めた。序列の最上位へ躍り出たのだ。187センチのサイズと攻撃参加が魅力で、柏で実戦経験を積んでいけば右サイドバックは彼に任せられる。

 左サイドバックは大畑歩夢(浦和レッズ)が、最終予選で評価を高めた。バングーナガンデ佳史扶(FC東京)や畑大雅(湘南ベルマーレ)らとの競争となるが、ここでもポイントとなるのは所属クラブでのパフォーマンスだ。Jリーグでパフォーマンスを示していく選手が、パリへの狭き門を通過することになる。

 3人目のサイドバックには、左右両サイドに適応する内野貴史(デュッセルドルフ)を指名する。現時点ではバックアップの位置づけだが、左サイドのスタメンも想定される。

負担の大きい中盤は「5人」を使い分けるイメージ

 中盤は4-3-3のシステムを前提とし、藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)をアンカーに配し、松木玖生(FC東京)と鈴木唯人(ブレンビー)をインサイドハーフに置く。アジア最終予選で攻撃センスを見せつけた荒木遼太郎(FC東京)も招集する。

 さらに、オーバーエイジ枠で守田英正をリストアップする。インサイドハーフをメインにアンカーでの起用も見込める彼を加えることで、中盤の編成は盤石になる。とりわけ、押し込まれた展開での試合運びが安定するはずだ。

 メダル獲得からの逆算で考えると、中盤の選手の負担は大きい。その意味でも、ボランチやインサイドハーフを5人揃えておき、彼らを使い分けながら勝ち上がっていくイメージを描く。複数ポジションをこなせる旗手怜央をオーバーエイジで招集することも視野に入れたい。

何としても招集したい久保建英

 前線も4-3-3で想定すると、右ウイングは山田楓喜(東京ヴェルディ)が、左ウイングでは平河悠(FC町田ゼルビア)と佐藤恵允(ブレーメン)が、最終予選で好印象を残した。とはいえベストメンバーを組むのならば、右ウイングには久保建英(レアル・ソシエダ)を何としても招集したい。

 もっとも、右ウイングなら三戸舜介(スパルタ)、左ウイングなら斉藤光毅(スパルタ)がいる。左ウイングを中心に攻撃的ポジションをカバーする佐野航大(NEC)も、所属クラブでのパフォーマンスを見ればテストしたい選手だ。誰をピックアップするとしても、両ウイングで3人だ。

CFの本命は細谷真大と藤尾翔太だが…

 ここまでで16人である。CFは2人しか選べない。

 今回と同じ18人でチームが構成された12年は大津祐樹、永井謙佑、杉本健勇、16年は興梠慎三、浅野拓磨、鈴木武蔵の3人が選出された。同じように3人を選ぶなら、どこかのポジションで選手を1人削らないといけない。藤田、松木、荒木、鈴木唯人、それに守田を選んだ中盤から1人削るのが現実的だ。

 最後の1人をどのポジションに充てるのかは、ギリギリまで判断を待っていい。CFでの選出が予想される細谷真大(柏レイソル)と藤尾翔太(FC町田ゼルビア)がJリーグで揃って結果を残していけば、CFはこの2人でいいだろう。

 逆に彼らがゴールから遠ざかってしまうと、オーバーエイジの選手やアジア最終予選に出場していない選手がクローズアップされてくる。これまで招集されてきた小田裕太郎(ハーツ)や福田師王(ボルシアMG)、J1で4得点をあげている染野唯月(東京ヴェルディ)、さらには後藤啓介らも候補に加えたい。今冬にジュビロ磐田からベルギー1部のアンデルレヒトへ期限付き移籍した後藤は、セカンドチームでここまで6ゴールを記録している。191センチの高さは、攻撃のオプションとして魅力的だ。

 プランBはもちろんプランC、Dまで想定しながら、柔軟なメンバー編成を可能にする。U-23世代の伸びしろに期待しつつ、招集する側の大岩剛監督とスタッフのマネジメントが問われていく。

<パリ五輪「OA予想」編から続く>

文=戸塚啓

photograph by Kiichi Matsumoto