交流戦突入時は首位だった阪神タイガース。『野球短歌』(ナナロク社)の著者で作家・野球歌人の池松舞氏が鬼門の交流戦に突入した「5月後半」を詠んだ。<「5月前半」編はこちら>
打線テコ入れが見事的中
5月16日 中日―阪神 ○ 4-9
4番に起用した原口文仁が3ラン本塁打を放つなど大幅に入れ替えた打線が機能した。西勇輝は先発5試合目にして今季初勝利。
もうずっと西に勝ちをと願ってたイメージだけなら四勝してる
大山の代わりに入った原口の打球の行方を夢といいます
見たことのないスタメンでざわついて勝ったあとでもざわついている
岡田にしか組めない打線だこんなのは大地に種をまくようにして
待っている大山をずっと待っているいつまでだって待っているんだ
青柳が6回4失点
5月17日 阪神―ヤクルト ● 2-4
先発・青柳晃洋が村上宗隆に3ラン本塁打を浴びるなど6回4失点。打線も1〜3番がノーヒットとつながりを欠いた。
二年まえ青柳は輝いていただれよりすごい球を投げてた
外国の団体客がヤクルトのビニール傘で踊るスタンド
ビーズリーが今季初勝利
5月18日 阪神―ヤクルト ○ 1-0
4番・大山悠輔のタイムリーで4回に先制。今季初先発のビーズリーが5回無失点、石井大智ら救援陣の好投も光った。再び単独首位に浮上。
スタメンを外れたあの日をきっかけに虎の四番に目覚めの兆し
ワンバンを止めてなおかつランナーを梅野はアウトにしてみせる!
まっすぐで勝負したがる中継ぎの石井の背中が西陽で光る
ウイニングボールを受け取りビーズリーだいじにだいじにポッケにしまう
日曜に才木がまた勝利
5月19日 阪神―ヤクルト ○ 7-2
先発・才木浩人は6回2失点で今季5勝目。8番・木浪聖也が3打点の大暴れなど打線が奮起した。
また雨で才木の投げる日は雨でそれは日曜が雨ということ
ランナーを二人背負ってサンタナを三振させる才木のスライダー
ノイジーがスライディングして素手で捕り監督が手を叩いて喜ぶ
久々に強い試合で少年が「やればできる」と誇らしい顔
村上がまさかの5失点
5月21日 広島―阪神 ● 6-2
先発・村上が3回までに5失点で4敗目。8回に2得点を挙げるのが精一杯。広島が4連勝で0.5ゲーム差の2位に詰め寄る。
村上を攻略されて五失点 空なんてまだ明るいうちから
広島の空がこんなに赤いのはカープの色を映しているのか
打てる気がまったくしないまま時がただ過ぎていきただ過ぎていく
村上が茫然として中空をベンチの隅で見つめていたな
意地を見せた4番・大山
5月22日 広島―阪神 ○ 1-2
先発・大竹が7回無失点の好投。1回と3回の攻撃で大山が2打点と打線がつながり、2位・広島の連勝を止めた。
大竹がピンチを脱したときにするガッツポーズを銅像にしたい
大山が打つとみんなで遠足に行こうよみたいな気持ちになれる
チカナカがうまくハマるとなんでかな仕事のいやなこととか忘れる
大竹のちょっと変わった投球にずっと光を当ててる坂本
2位・広島になんとか勝ち越す
5月23日 広島―阪神 ○ 1-2
前日に続き、初回の大山の先制打が決勝点に。先発・西が6回無失点で2勝目。首位攻防の3連戦をなんとか勝ち越した。
何回もチャンスを作るが点数にならずに完全な夜になる
残塁の数なら俺たち負けないぜ いいや俺らも負けはしないぜ
両チーム合わせて十九の残塁で疲れる試合をなんとか制した
ピッチャーに苦労をかけてすみません私が代わりに謝ってくる
戸郷のノーヒットノーラン
5月24日 阪神―巨人 ● 0-1
巨人・戸郷翔征がノーヒットノーラン。今季初先発の及川雅貴ら投手陣の好投は実らず、9回に四球から二塁に到達するのが精一杯だった。
一点を取られただけだが一本も打てないチームが負けということ
阪神の投手もみんなよかったが戸郷の前にかすんでもうた
手も足も出ずに終わった夜のなか悔しい気持ちすら逃げていく
及川の笑顔がよかった糸原のサードもよかったあとなんだっけ?
ビーズリーの奪三振ショー
5月25日 阪神―巨人 ○ 3-0
ビーズリーが6回無失点7奪三振で2勝目。打線も渡邉諒のソロ本塁打など5回までに3得点と立ち直り、投打が噛み合った。
ビーズリーの低めに決まるスライダーで巨人のバットが空を切る切る
チビっ子が最前列で菓子を食う土曜のデイゲームのいいところ
渡邉が青春みたいな音を立てホームランまさにかっ飛ばした
9回からまさかの逆転負け
5月26日 阪神―巨人 ● 1-2
才木浩人が7回1/3無失点の好投。救援陣が9回に巨人・岡本和真の同点ソロ本塁打で追いつかれ、10回に丸佳浩の犠牲フライで力尽きる。2位・広島と0.5差の首位で交流戦に突入することになった。
岡本が九回に打った瞬間は時がとまったよう、しんとした
一瞬で才木の勝ちが消えていく打てない打線をひっぱたきたい
投げ抜いた才木と石井が抱き合ったときの笑顔が忘れられない
新庄劇場、開幕
5月29日 阪神―日本ハム ● 2-8
試合前のメンバー表交換で日本ハム・新庄剛志監督が古巣・阪神のユニフォームで登場し話題に。試合はいいところなく、交流戦黒星スタート。
打ち取った当たりをエラーで二失点 悲しい野球はもうやめてくれ
満塁でクリーンアップが返せない寂しい野球ももうやめてくれ
観客がぽつぽつ席を立ち始め寂しい気持ちに拍車がかかる
阪神の今の野球にゃ気配がない打てる気配も勝てる気配も
新庄を見て思いだせることすべて確かに夢がつまっていたな
「6番・投手」からタイムリーを打たれる
5月30日 阪神―日本ハム ● 0-6
日本ハム打線の6番に起用された投手の山崎福也に先制タイムリーを打たれ、投げても7回無失点3安打に抑えられ、完封負け。
はっきりと言うよ今は阪神の打線に夢を未来を見れない
中継ぎがいくらゲームを作っても誰も打たないから負けていく
よし行けと思う場面がゼロだったそんな野球を最後まで見た
野球って楽しんだやつが勝つんだとハムのチームは教えてくれる
前川が3打点も…
5月31日 ロッテ―阪神 ● 5-4
前川右京の同点2ラン、勝ち越しタイムリーで1点リードするも9回にゲラが追いつかれ、10回に漆原大晟が打たれ逆転負け。前川のプロ初本塁打は空砲となった。
ついに出た前川右京の一発を負けてもずっと覚えていたい
サヨナラを食らったあとに前川を静かにそっと映すカメラマン
2試合連続、悪夢のサヨナラ負け
6月1日 ロッテ―阪神 ● 3-2
2試合続けて9回裏に追いつかれ、逆転サヨナラ負け。近本光司を4番に起用するオーダーを組んだが、勝利にはつながらなかった。 ※筆者はこの日、現地観戦
球場のマリンの風を浴びながら四番は近本と告げられる
九回にまた追いつかれ夕暮れに飲んだビールがやけに甘くて
手と声の響きでその場を支配するロッテの応援は強くって
サヨナラで負けたあとにはグランドに入れてもらって空とか見てた
薄氷のスミ1勝利
6月2日 ロッテ―阪神 ○ 0-1
森下翔太の先頭打者本塁打による1点を守りきり、才木浩人が無四球完封勝利。9回ノーアウトから2連打を食らうもなんとかしのぎ切った。
森下の先頭打者のホームランだけを才木が守り抜いた日
燃えているガラスみたいな眼で投げる才木のボールを彼ら打てない
投げきった才木と梅野が抱き合ってみんなもマウンドに駆け寄って
いてくれてよかった才木が阪神にどうかこのままずっとこのまま
<4月編からあわせてお読みください>
文=池松舞
photograph by Kiichi Matsumoto