九州を中心にディスカウントスーパーなどの小売業を営む株式会社トライアルホールディングスが、国立大学法人九州大学が運営する九州大学病院とともに、購買データと医療データを活用する次世代型コンソーシアムである“ライフケアテックコンソーシアム(TM)”を設立。また、設立に伴いアサヒグループジャパン株式会社、旭食品株式会社、加藤産業株式会社、東洋水産株式会社、日本ハム株式会社、ヤマエグループホールディングス株式会社など、計20社が参画することも決定しているという。

“ライフケアテックコンソーシアム(TM)”とは、一体どんな取り組みを行っていくのか。それを深掘りするとともに、トライアルの担当者にも話を聞いた。

■“ライフケアテックコンソーシアム(TM)”とは?
“ライフケアテックコンソーシアム(TM)”は、トライアルが持つ購買データと九州大学病院が持つ医療データの活用基盤を整備し、基礎研究(生活習慣病と購買データの因果関係)を実施。その基盤においてビッグデータが生成されることで、病気になるリスクの解明に貢献し、予防医療への転換を促していくという。また、参画各社へ情報を共有することで、健康に貢献する商品開発に活かすことも視野に入れた取り組みとなっている。

トライアルをはじめ、それぞれが果たす役割をまとめてみた。

<トライアルの役割>
トライアルはe3smart(※1)の基盤技術と購買データの提供を行い、本コンソーシアムが活動できる環境を作る。
※1…トライアルが開発したデータベース基盤

<九州大学の役割>
九州大学は医療データ(カルテデータ)の提供を行い、予防医療への転換の起点を作る。

<メーカー・卸各社の役割>
メーカー・卸各社はコンソーシアムから共有されたデータを活用し、健康維持に貢献する商品やサービスの開発を行う。

■実行はいつから?
今後の流れは、以下のようになるという。

<2024年>
九大病院の持つ医療データ(カルテデータ)とトライアルのID-POSの突き合わせ(※2)を行う。
基礎研究(生活習慣病と購買データの因果関係)を行う。
※2…個人情報保護法および次世代医療基盤法の定める条件を満たしたものに限る

<2025年>
参画メーカー・卸各社との共同研究(データ活用)開始。
(生活習慣病と購買データの因果関係から新しい商品開発やサービス創造に向けて)

<2026年>
医療データの基盤(e3smart基盤の活用)が完成。参画各社がそのデータを活用できる。

■個人情報の取り扱いはどうなるの?
購買データと医療データの統合は、個人情報保護法並びに次世代医療基盤法(※3)に則って実行。また、データの突き合わせは次世代医療基盤法に基づき国が指定した認定事業者にデータを提供し、突き合わせ後、匿名加工される。
※3…参照:内閣府健康・医療戦略推進事務局“「次世代医療基盤法」とは”(2022年10月)

また、メーカー・卸各社は得られたデータを元に商品開発に活用でき、将来的にlearning health systemを本コンソーシアムも活用することを視野に入れているという。

■さらに詳しく担当者に話を聞いてみた
“ライフケアテックコンソーシアム(TM)”について、取り組みのきっかけなどを株式会社トライアルホールディングス 広報部担当者に話を聞いてみた。

――購買データ×医療データを活用する次世代型コンソーシアムは、どういったことがきっかけで設立にいたったのでしょうか?

【担当者】九州大学様との医療DXでの連携は2021年から開始しております。弊社の永田が、2018年より九州大学で講義をさせていただいていることも、今回の取り組みへとつながっています。

――これまで購買データと医療データを照合して活用した例は、日本にはないのでしょうか?

【担当者】九州大学様調べではございますが、日本初の取り組みになります。

――国内20のメーカーや卸会社も参画しているとのことですが、具体的にどういった企業が参画されていますか?

【担当者】公表いただいております企業は、アサヒグループジャパン株式会社、日本ハム株式会社、株式会社日本アクセス、UHA味覚糖株式会社、旭食品株式会社、ヤマエグループホールディングス株式会社、加藤産業株式会社、カルビー株式会社、サントリー株式会社、株式会社伊藤園、株式会社PALTAC、国分グループ本社株式会社の12企業でございます。

――参画した企業が実際にそのデータを商品開発に活かす日はいつごろになる予定でしょうか?

【担当者】2025年より参画メーカー・卸各社との共同研究(データ活用)が始まります。

実際に活用されるまでにはまだまだ時間がかかるのかと思えば、早速2025年からデータ活用が始まるとのこと。これらがうまく活用・運用されていけば、病気になるリスクの解明や予防医療への転換はきっと大きく加速していくことだろう。来年2025年の活用開始に期待の眼差しが集まる。

取材・文=矢野 凪紗