株式会社ビーツが提供する、新たなリテールメディア「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」が、消費者の声を用いた新しいスタイルの店頭販促サービスとして注目を集めている。

「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」とは、グランドデザイン株式会社が運営する「ガッチャ!シェルフ」で集められた「みんなのポップ」を、店頭のサイネージに生成する新しい販促サービスだ。ちなみに、「ガッチャ!シェルフ」とは、消費者の実体験に基づいた「商品POP」を共有し、AIがユーザーの好みや悩みに合わせてスマートフォン上のパーソナルシェルフを生成する新しいショッピングプラットフォームとなっている。

「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」は消費者の「声」で商品をおすすめするリテールメディアとして、小売企業へは新たな収益源に、メーカー企業にとっては、消費者の声を活用した販促策として活用できるという。そんな新たな販促サービスは、どのような成果をあげているのか。また、同サービスについて、担当者に話を聞いてみた。

■販売数が2.2倍!?効果実証実験の結果は?
ビーツは、都内で7店の食品スーパーを展開する株式会社三浦屋にて、日本ルナ株式会社が取り扱うバニラヨーグルトによる販売効果実証実験を実施し、その結果をPOSデータを入手し分析したみた。すると、ヨーグルト売場で「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」を活用した期間は、活用しなかった期間に比べ販売数が約2.2倍になったことがわかったという。

<実施概要>
実施日:2023年12月4日〜10日 計7日間 
実施店舗:三浦屋 コピス吉祥寺店(武蔵野市)、飯田橋ラムラ店(新宿区)
対象商品:日本ルナ「バニラヨーグルト」
使用システム:「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」

<実施内容>
2店舗のヨーグルト売場にサイネージを設置し、「ガッチャ!シェルフ」から抽出されたバニラヨーグルトの「みんなのPOP」(お客様の声)を放映し販売数を計測。放映のなかった期間と比較した。

<実施結果>
2店舗合計のPOSデータでは「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」の放映期間中(2023年12月4日〜12月10日の7日間)は、放映しなかった期間(2023年12月18日〜12月24日の7日間)に比べ約2.2倍に販売数が増加したことがわかった。

■新リテールメディアについて担当者に話を聞いた
興味深い結果を出した「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」について、同社のイノベーション戦略本部 本部長の西村幹太さんに話を聞いた。

――まず、株式会社ビーツさんについて教えてください。どのようなサービスを提供する企業なのでしょうか?

【西村幹太】ビーツは、スペースデザインと店舗デジタルソリューションを最適化するマーケティング企業です。「リテール領域のブランド体験を共創する」をミッションに、店頭販促や店舗施工、イベント、展示会などのオフライン領域のサービス、サイネージシステム・デジタル集客ゲーム・ライブ接客などのOMOソリューションサービスを提供しています。クライアントの商品やサービスをポジティブなブランド体験として生活者に届ける、さまざまなマーケティング支援を行っています。

――「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」について教えてください。実際に購入したお客様の声をサイネージで放映する…とのことですが、1商品あたりどれくらいの人の声が表示されるのでしょうか?

【西村幹太】ビーツはもともと「クラモニ」というクラウドサイネージのサービスを2019年より提供していました。おかげさまで好評いただき、累計5000台以上を導入いただいております。昨年(2023年)グランドデザイン社の「ガッチャ!シェルフ」と出合い、タッグを組んで始まったのが、消費者の「声」で商品をおすすめする「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」です。

【西村幹太】「ガッチャ!シェルフ」は、消費者の実体験に基づいた「商品POP」を共有し、スマートフォン上のパーソナルシェルフを生成する新しいショッピングプラットフォームです。「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」は「ガッチャ!シェルフ」で集められたUGC(ユーザー生成コンテンツ)を店頭のサイネージに放映できます。つまり、消費者のオフラインでの購買行動中に、オンラインで集まった消費者の声をサイネージに放映することで、購入のあと押しとなる情報を発信できる販促サービスなのです。

【西村幹太】バニラヨーグルトの店頭展開では、6種のUGCと商品紹介動画を交互に放映しています。実際に集まるUGCは多数ありますが、お客様がサイネージの前に立ち止まる時間等を考えるとUGCはある程度選定したほうが効果的と判断したため6種に限定しました。もちろんもっと多くのUGCを表示することもできます。

――「OMO クラモニforガッチャ!シェルフ」を活用する小売企業やメーカー企業のメリットを教えてください。

【西村幹太】「消費者の声」は企業が思いもよらなかったお客様視点での商品やサービスの魅力を伝えることができる可能性がある、という点が魅力だと考えています。たとえば、食品の広告メッセージであれば、おいしさや食べたくなるシーンへの共感などを表現して伝えるのが企業のメッセージですが、「消費者の声」は実際に試しておいしかった新しい食べ方の投稿があったりします。それを交互にサイネージに出すことで、メーカーと消費者の声が一体となって説得力のあるコンテンツになることが、この「OMOクラモニforガッチャ!シェルフ」の強みだと考えています。

――実際に「バニラヨーグルト」で実証実験を行ったところ、放映期間は売り上げが2.2倍となったとのこと。現在このリテールメディアは、どのような商品に活用されていますか?

【西村幹太】現在、グランドデザイン社と複数のPoCを進めています。たとえば飲料メーカーと小売店舗のコラボレーション企画として、該当飲料に合うおつまみを投稿いただき実際にそのおつまみを売り場に並べ、お客様の声から制作したランキング動画を放映する試みや、ほかにもPOSシステムの開発会社様と一緒に、該当商品のクーポンを発行し、「OMOクラモニforガッチャ!シェルフ」と連携をさせる仕組みも検討しています。

――このリテールメディアはどのような商品と相性がいいと思われますか?

【西村幹太】「OMOクラモニforガッチャ!シェルフ」は、はじめて買うことに不安のある新製品や、競合商品が多く選択に迷う商品での活用が適していると思います。食品以外なら、お客様が手に取りやすい日用雑貨品、販路で言えばドラッグストアになります。食品でも小売業様のPB商品やメーカーブランドの付かない生鮮食品などは、口コミが重視されるのではないでしょうか。


「『OMOクラモニforガッチャ!シェルフ』はお客様の声にエンターテインメント要素を加え、楽しい発見と買い物ができる売り場づくりに貢献できると考えています」とも語っていた西村さん。確かに売り場にあるとつい楽しそうで見てしまうだろうし、消費者のリアルな声が購入の際に参考となるだろう。新たなリテールメディアを売り場でたくさん見かける日は、そう遠くなさそうだ。

取材=大庭 かおり/矢野 凪紗・文=矢野 凪紗