発売から半世紀以上、人々に愛されてきた亀田製菓株式会社の「亀田の柿の種」が、2024年2月上旬より8年ぶりとなるパッケージデザインのリニューアルを実施。その背景には、新たな市場を取り込みたいという狙いがあった!これまでの“お父さんの定番菓子”というイメージがあった亀田の柿の種だが、どのような層を意識しているのか、亀田製菓の担当者に話を聞いた。

■パッケージリニューアルの理由は?
パッケージリニューアルの背景について、亀田製菓株式会社マーケティング戦略部の亀田の柿の種担当者は以下のようにコメントしている。

「『亀田の柿の種』のおいしさの一番のポイントは、カリッとした軽快な食感です。それは発売当初から守りつづけている、こだわり抜いた製法で生み出されています。ただ、そのおいしさについてお客様から寄せられるご意見は、柿の種とピーナッツの比率に関するものが多く、“カリッと食感”については、まだまだ知られていないことに気づきました。今回のリニューアルでは、いかにこの食感のよさをお客様に伝えられるかを軸にデザイン変更を行いました」

「表面での表現はもちろん、裏面で“カリッと食感”についての秘密や、その秘密が詰まった製造過程の動画のQRコードを記載し、よりお客様に興味を持って知っていただける内容にしました。“亀田の柿の種のおいしさといえば、あのカリッとした食感だよね!”と言ってもらえるようになればうれしいです」

ちなみに、こだわりの「カリッと食感」のヒミツは、その形状にあるという。2020年にX線CT解析を用いた調査では「亀田の柿の種」は生地の中に大きな空洞があることが明らかに。徹底して薄さにこだわった生地を高温で一気に焼き上げることで中がぷくっと膨らみ空洞を生み出すのだが、この空洞構造が「亀田の柿の種」ならではのカリっとした軽快な食感の秘訣となっている。

■「亀田の柿の種」パッケージリニューアルのポイント
今回のパッケージリニューアルについては、以下の点が主なポイントだという。

1.「カリッと食感」をストレートに表現!
カリッ、カリッという楽しいリズム感は「亀田の柿の種」の大きな特徴。新パッケージでは、その“カリッと”という表現を大きく記載している。

2.カラーユニバーサルデザイン(CUD)認証を取得!(※1)
今回のリニューアルでは、色覚の個人差を問わず多くの人により安心して楽しんでもらえるよう、「180g亀田の柿の種6袋詰」(※2)のパッケージの配色にユニバーサルデザインを採用。NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構より「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の認証を取得している。
※1)CUDマークとは、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構により認証された印刷物、製品等に表示できるマークのこと
※2)カラーユニバーサルデザインの取得は「180g亀田の柿の種6袋詰」のみ

■愛されて半世紀以上!長い歴史を持つ「亀田の柿の種」
1966年に発売開始した「亀田の柿の種」。そこから58年間に渡って、時代の変化とともにパッケージはもちろん、実は“柿の種とピーナッツの比率”も変化してきた。発売当初は7:3だったが、その後6:4となり、現在の7:3に落ち着いたという。

■「新パッケージの反響は?」「取り込みたい新市場は?」担当者に話を聞いてみた
新パッケージの反響や、リニューアルによって意識している市場について、亀田製菓 マーケティング戦略部 亀田の柿の種担当の橘田奈津美さんに話を聞いた。

――新パッケージについて、反響はいかがでしょうか。

【橘田奈津美】パッケージ変更に伴うお客様からの反響については現在とりまとめしている最中ではありますが、店頭で目立つようになったというお声を聞くことも多くあります。今回の新パッケージでは「カリッと食感」をより訴求しておりまして、裏面にカリッとの秘密がつまった製造工程を見ていただけるようなQRコードを記載しておりますが、その閲覧数は伸びておりまして現時点(2024年4月取材時)で前年比で1.4倍程度と、興味をもって見ていただけるようになりうれしく思っております。

――新パッケージへの変更は新市場を意識してとのこと。どのような市場を狙っていらっしゃるのでしょうか?

【橘田奈津美】従来、おやつやおつまみと、生活のさまざまなシーンで親しんでいただいている商品ではあるものの、イメージとしては“お酒のおつまみ”が強くあることから、そのイメージがゆえに購入される方の使用用途を限定してしまっているような印象もありました。今後は、そういったイメージから脱却し、子どもから大人まで幅広い年代の方がさまざまなシーンで食べれるようなイメージに変えていきたいと思っております。特に直近では、ファミリー層を中心に食べていただきたいと思っており、3月に発売した新商品「亀田の柿の種うましお」は、ご家族みんなで楽しんでもらえる商品になっております。

――「亀田の柿の種」は海外でも人気なんですよね。現在、何カ国で販売されていますか?また今後の拡大予定などについても教えてください。

【橘田奈津美】現在は、およそ35カ国で販売しています。今後もさらなる拡大に向けて、取り組みを進めています。

――空洞構造がおいしさの秘訣とのことですが、この空洞構造は2020年にX線CT解析を用いた調査で明らかになったとのこと。空洞は意図して作ったものなのでしょうか?

【橘田奈津美】スナックのような軽い食感を目指して作っていたと言われておりまして、あえてこのカリッとした軽快な食感になるように、中の空洞がある生地もこだわって作っております。

――お菓子をX線CT解析するとはすごいですね。しようと思ったきっかけについて教えてください。

【橘田奈津美】米菓は食感が非常に重要なことから従来の分析手法として、硬さや密度の分析などを行ってきました。しかし「亀田の柿の種」の特徴でもある“カリッとした食感”を表現するのに、従来の分析手法だけでは説明しきれないことが多くあり、あらためて新たな解析手法としてX線CT解析により構造を把握しようというのがきっかけです。

亀田製菓株式会社の「亀田の柿の種」は、発売から半世紀以上経った今も、“カリッとした食感”にあくなきこだわりと追求心を持ち、研究に励んでいる。時代のニーズに合わせて変化してきたからこそ、ロングセラー商品として生き残り、愛されてきたといえるだろう。これまで“カリッとした食感”をあまり意識してなかったという人は、あらためて味わって体感してみてはどうだろうか?

取材=大庭 かおり/矢野 凪紗・文=矢野 凪紗