生理、PMS、更年期障害・・・女性特有の健康問題を我慢することなく解決へ導くツールとして関心が高まっているフェムテック。そんな“フェムテックを学ぶ日”に登録されている2月19日に加えて2月27日の2日間に渡って『ジャパン フェムテック サミット 2024』が開催。昨年の好評の声を受けて開催2回目となる今回は【フェムテックの力でウェルビーイングな社会を創る〜 社会、国、企業、個人のフェムテックギャップを埋める!〜】をテーマに、女性だけでなくリアルオンライン合わせ1,000名近くの参加者が、女性の心と身体の健康、フェムケア、テクノロジー、組織における取り組みなど、多様な視点で展開されるセッションに耳を傾けました。

2月27日のトークショーでは、10〜60代までの女性誌・男性誌11誌連合のフェムテック・フェムケア啓発プロジェクト「もっと話そう!Hello Femtech」に取り組む宝島社から『大人のおしゃれ手帖』の編集長、橘 真子がモデレーターとして登壇。「フェムテック医療と健康法で更年期以降のQOLを上げよう」をトピックに、本イベントを主催するフェムテック協会の代表理事を務める関口由紀先生、更年期女性を対象にしたサービス開発を行うHert Life Lab代表エリセーバ・オリガさんと共にトークセッションを行いました。この記事では、気軽に試せるフェムテック医療やサービス、先生方が実践している健康法など大盛況だったトークの一部をご紹介します!


フェムテック医療と健康法で

更年期以降の生活の質を上げよう!

日本フェムテック協会 代表理事/女性医療クリニックLUNAグループ理事長/女性泌尿器科医師  関口由紀さん 著書に「トイレが近い」人のお助けBOOK(主婦の友社)、女性のからだの不調の治し方(徳間書店)、セックスにさよならは言わないで、悩みをなくす膣ケアの手引き(径書房)ほか多数。

今回のイベントを主催する日本フェムテック協会の代表理事長、関口由紀先生は2人のお子さんを出産後すぐに42歳で乳がん、57歳で劇症肝炎を患うも克服。現在は18年間もの間主宰している横浜元町女性医療クリニック・LUNAの理事長を務めています。
関口先生のクリニックは、診療科別の医療ではなく女性のライフステージ別に医療を提供しているという点が魅力。2階には主に生殖年齢にある忙しい女性の健康管理をスピーディに行う〈女性医療クリニックLUNA横浜元町〉、同ビルの3階には生理が終わった更年期以後の女性の健康管理と抗う加齢医療を行う〈女性医療クリニックLUNAネクストステージ〉と2つのクリニックでの構成。女性泌尿器科、女性内科、美容皮膚科、骨盤安定リハビリテーションを専門にする部門やヘルススタジオなども併設され、ライフステージによって変化する女性の悩みに細やかに寄り添った診療が特徴です。
2022年には、更なる情報拡散のためにWEBサイト『フェムゾーンラボ』をローンチしています。「クリニックでは、女性がいつまでも元気できれいであることを全力でサポートすることを目指しています。ですが実際にクリニックで救えるのは毎日200人程度、それも素晴らしいことですが、もっと情報の拡散をしたいとWebサイトを立ち上げました」(関口先生)


「横浜元町女性医療クリニック・LUNA」

『フェムゾーンラボ』Webサイト

自身の辛い経験から

更年期オンライン診察サービスを立ち上げ

HerLifeLab代表/更年期オンライン診療サービス「ビバエル」代表/医学博士 エリセーバ オリガさん

オリガ先生は、講演やカウンセリングを通じて更年期ケアの重要性を多くの人に伝えています。長年、沖縄で免疫学者として従事していたオリガ先生が、なぜ女性医療の世界へ足を踏み入れたか? それは自身の更年期症状がきっかけだったとのこと。
「43歳、44歳の頃にきつい更年期症状を経験しました。当時はなかなか助けてくれる従事者も見つからず、自身も医療知識があるのにも関わらず自分を助けることが難しかったんですね。これは大きな課題じゃないかと感じました」オリガ先生は同じように苦しむ女性を医療と研究の力で支援したいとの思いから、2022年にフェムサイエンス・カンパニー、HerLifeLab株式会社を設立。2023年12月からは更年期オンライン診察サービス『女性のためのマイドクタービバエル』を立ち上げ。
「女性たちが年齢に関わらず、チャレンジを続けられる社会を作りたいという思いで活動しています。多くの女性は悩んでいるけど、自分のプライベートに関して話すことに強い抵抗感があるので、まずは気軽にカウンセリングを受けられるように、更年期症状や治療法の選択肢を医療従事者と相談できる“看護カウンセリング”から始めるという形をとっています」(オリガ先生)


『女性のためのマイドクタービバエル』

誰かと笑って共有する
きっかけになる
“更年期川柳”

宝島社『大人のおしゃれ手帖』編集長 橘 真子

橘 真子編集長が率いる『大人のおしゃれ手帖』は更年期世代ドンピシャの女性がメインの読者層。いかに心身ともに健やかに過ごすか? といったヘルスケアの特集に力を入れて読者へ発信をする一方で「雑誌づくりを通して悩みや不安を誰かに話したり、伝えたり、相談することはまだまだハードルが高いと感じている」と橘編集長。
そんなコミュニケーションへの課題を解決すべく、昨年末に実施した企画が第1回“更年期川柳”。誰かと更年期症状について話すきっかけになる取り組みになれば、という意図で発足したこの企画は、男性からの応募も多く編集部の想定を上回る1454作品が集まりました。そして、近藤サトさんを審査員に迎えた中で優秀賞に選ばれた作品がこちら。

「大丈夫。心配不要。家事やって」

大丈夫? と振り向いて心配をしてくれてはいるもののアクションが見られない様子の旦那さん。 更年期に対する知識が広まってきたとはいえ、 さらにその先のアクションがまだまだ浸透していない、サポートが足りてない、という状況を広く知ってもらうきっかけになれば、と選出された作品です。他にもユーモアたっぷりの川柳が『大人のおしゃれ手帖』WEBに掲載されています。ぜひご覧ください!

『大人のおしゃれ手帖』が実施した
“更年期白書”アンケート調査で実態が明らかに

更年期世代の読者が多い『大人のおしゃれ手帖』では、定点観測的に更年期にまつわる事象をアンケート調査しています。今回は2023年9/7〜10/6に行ったWEBアンケートの結果を一部ご紹介。

約半数以上の読者が更年期の不調アリ

始まりは平均50歳

まずは“更年期と思われる不調はありますか?”の問いに、半数以上の読者が“不調がある”と回答。また“更年期が原因と思われる不調は何歳ごろから感じ始めましたか?”という問いには、最も多かったのが閉経の平均年齢といわれる50歳。次いで45歳、48歳と更年期は若年化しているのかもしれません。40代で更年期と感じる人が増えているよう。

だるさ、のぼせ、不眠、薄毛、イライラ、 落ち込み・・
更年期症状は複雑に重なりあう

“どんな症状を感じていますか?”という問いには、だるさ、のぼせ、肩こり、不眠、薄毛、イライラ、 疲れ目、落ち込み・・・いろいろありますが、6項目以上にチェックされた方が非常に多く、多くの方が複数の症状を同時に抱えているという状況が明らかに。そして“複数の症状が複雑に重なり合った辛さというのはまだ分かってもらえない”という悩みも非常によく聞かれる声だとか。

“更年期症状に対する対策はしていますか?”という問いには、ランニング、サプリメント、食事など、インナーケアを実施されている人が多数。「一方で、通院や治療している人はまだ少ないので、もっと普及していけば」と橘編集長。


“人に相談しづらい”という多くの声は

我慢が得意な日本人に多い

“更年期症状について誰かに相談しているか?”の問いには、“していない”が6割。まだ一人で抱え込んでいる方が多い傾向。“誰に相談していますか?”という問いには、やはりお友達が多く、一番近いはずのパートナーは12%、医者が24%。
“しんどいけれど、泣き事みたいで人に相談しづらい” 、“プチ不調は多発しているけども、病気ではないから病院に行っていいのかしら” という、不調を我慢し過ぎる日本女性ならではの声も目立つ。

「我慢やしのぐというような感覚が非常に強いのは、日本女性の特徴なのでしょうか?」と橘編集長の問いに、「アジア人女性にはよくありますが、日本人女性は特に我慢するのが得意な人種だといえるかもしれません。“自然なことだから”、“みんな通る道だから”と我慢してしまう」と世界中の女性にインタビューをされてきたオリガ先生が回答。我慢や謙虚さが美徳とされてきたこれまでの日本の文化の根深い風潮が、更年期世代の女性を苦しませているのかもしれません。

関口先生は「でも来院される時は、覚悟が決まっているので、すっと来て全てやるって人がほとんど。だから病院に来るまでの道のりが長くなるほどきっと辛いのだと思います。つい最近ですよね、病気になったら休むというのが当たり前の世の中になってきたのも。生理休暇などのお休み制度も普及しているようで、利用する人が最近やっと出てきました」と、心身の不調が辛いときには無理や我慢をせずに自分の身体を優先させる、“ご自愛”することの大切さを語りました。

スキューバにゴルフ、スイミングに鍼灸!?
アクティブなおふたりの健康法とは?

トークは健康法の話題に。いつもニコニコと快活な印象の関口先生とオリガ先生が普段の生活に取り入れている健康法とは?

35年ぶりにスキューバをしてみたり、パラグライダー、ゴルフにも挑戦するなどアクティブな関口先生「できることはなんでもやる! 限界まで身体を動かそうと思っています。実はスポーツは嫌いなんですが、意外とやり始めると楽しいんです」
現在、沖縄住まいのオリガ先生も「更年期症状が辛い時は猫みたいにソファで丸まりたい症状にもなりますが、そういう時こそ海で泳いだり歩いたり身体を動かすと、不思議とその症状もおさまって元気に活動できるようになるんです」と、おふたりとも運動が欠かせない様子。

さらにインナーケアについて関口先生は、やり過ぎるところがあるので、サプリの摂り過ぎ、食べ過ぎ、飲み過ぎに注意しているとのこと。
オリガ先生も、ホルモン補充療法、漢方にも頼っていますが、一番自分を救われるのは鍼灸だとプライベートを語りました。

また“日本人女性は我慢している人が多い”と語ったオリガ先生ですが、振り返ってみると自分はいつも後回しだったと言います。「家族、子ども、仕事優先で、自分のことは最後。でも今は皆さんにアドバイスをしている立場なので、できるだけ自分が好きなことやろう! 自分は何が好き? と自身に問いながら楽しいことをやっています」と意識改革していると言います。


もう我慢しなくていい

不調を感じたらまずはSOSを!

最後は橘編集長が「不調を感じたらまずは身近な方にsos出していただけたら。更年期は10年という長い期間。医療の力を借りたり、更年期を症状を和らげる商品の力も借りつつ、ご自身が健やかに過ごせるような時間を第一に考えて過ごしてください」と、締め括りました。


女性だけでなく、全ての人のウェルビーイングに繋がった本イベント。今の時代を健やかに自分らしく生きていくヒントが、このフェムテックサミットにはたくさん詰まっていました。これまで謙虚さがひとつの美徳として語られてきた日本では、我慢する、諦める風潮はまだまだ強くは残っているのかもしれませんが、まずは自分の心と身体に目を向けること、そしてひとりで抱え込まず、婦人科医や身近な人に話してみることが第一歩なんだと気づかされました。



構成・文/根本美緒